最近は血圧の異常に高い人が多く、とくに若い世代の若年性高血圧が激増しており、その原因のひとつとして有力視されているのが血圧上昇物質(ワゾプレッシン)。
また、低血圧症は、自律神経機能のバランスが崩れることで起こりやすく、この自律神経のアンバランスは、あらゆる組織の弛緩や機能減退といった退行的現象を起こし、血圧低下の原因になります。
しかし、両者の最大の原因は動蛋食品、精白食品の多食にあります。
早急に白米・肉食をやめ、玄米・菜食に切りかえて体質改善を計ることが正常な血圧にもどすための、最良の方法なのです。
<高血圧は心臓病の前段階>
血圧の正常値は年齢+……というようにいわれている。しかし、それはあくまでも一般的な傾向であって、理想血圧ではない。
理想血圧は、年齢に関わりなく120~130mm(最高血圧)である。
その証拠の1つとして、各国の長寿者たちの血圧を調べてみると、ほとんどがその範囲内におさまっている。
血圧は、いろいろな条件によって変化する。
運動をすれば上昇するし、心配ごとをかかえていても高めになる。また便意をこらえただけでも血圧は上がる……といった具合だ。
そこで理想血圧にある程度の幅をもたせて、100~140mmの範囲にあるものを正常血圧と考えてよい。
ところで、心臓は収縮と弛緩を繰り返すことによって、血液を全体に回らせているが、収縮すると心臓(左心室)内の血液は一氣に大動脈に押し出され、血管壁に圧力をかける。
その時の血圧が最高血圧だ。
それに対して、心臓が弛緩したときにも血管にはある程度の圧力がかかっている。
心臓から血液は押し出されてはこないが、休まず流れている血液によって、血管は常に押されているからで、その最も弱まった状態が最低血圧なのだ。
それで、最高血圧が150mm以上か、最低血圧が100mm以上であれば、高血圧ということになる。こんな状態が持続する高血圧症になると、いろいろなデメリットが生じる。
まず、第1に、高血圧は動脈硬化を招きやすいこと。
動脈硬化は周知のとおり、脳の血管障害や心臓疾患につながりやすい障害だ。
最近は、血圧の異常に高い人がたいへん多く、とくに若い世代に高血圧者が激増している。いわゆる若年性高血圧である。その最大の原因は肉食過剰だから食生活を改変しないと、脳溢血とか心臓麻痺で早死にする危険性が高いのである。
また、血圧が高いということは、たいへんな心理的圧迫になる。というのも一般には、他にどこにも欠陥がなくても、血圧が一氣に上がって脳の細い血管が切れたりすれば、一巻の終わり……と受け取られている。
その突然死に見舞われるのではないかという恐怖感が、常に心を圧迫するわけだ。
高血圧によって脳の血管障害症状も現れる。
頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれ感などが起こりやすくなり、酷くなれば脳出血を起こす。
高血圧になると、心臓衰弱が起きやすい。
高血圧状態が持続すると、末梢血管の動脈硬化が起こる。
その為、心臓は、その抵抗に打ち勝って血液を循環させなければならないので、オーバーワークから過労に陥り、ついには機能不全になってしまう。
同様に、腎臓も障害されやすい。腎臓にも毛細血管が密集しているので、高血圧の影響を受けやすい。
高血圧に抵抗しているうちに血管壁は肥厚し、内径が狭くなると、組織の血液供給が不十分となる、腎硬化症となって機能は極度に落ちてくる。
瞼底の動脈にも、血圧の変化がそのまま現れやすい。
動脈が細くなり、網膜出血が起き、ついに乳頭浮腫が起こるようになる。
<高血圧症の背景>
さて、高血圧が起こる直接的な原因の1つとして有力視されているのは、ワゾプレッシンなどの血圧上昇物質が血液中に生じる、ということである。
血圧が高くなるのは、高圧で血液を循環させなければならない必然性が生じているため、その要求に応じて、身体は血圧上昇物質を働かせることになったわけだ。
そこで問題となるのは、なぜ血圧を高めなければならなくなるのか、ということ。
それは、血液の粘稠性が異常に高まっていることだ。
粘稠性の高い血液を一定の内径である血管の中を流そうとすれば、普通よりも大きな力がいるはずであろう。
さまざまな塩類や、窒素化合物を含んだ血液の粘稠性は高くなるのである。
そのような血液が循環していれば、組織細胞の新陳代謝は混乱して、変性が起こったり、老廃物が沈着する。
そうなれば、血液は正常な活動をしている組織細胞に届きにくくなるから、いよいよ血圧を高めなければならなくなる。
また、動脈が高血圧にさらされ続けていると、動脈硬化が起こる。
そうなると、血管の弾力性がなくなり、内径もいっそう狭くなるから、身体のすみずみまで血液を送り込むためには、さらに血圧を上げる必要が生じる、という訳だ。
このような悪循環を繰り返していると、内臓機能に変調が起こってくる。
とくに犠牲になりやすいのは腎臓である。また逆に、腎臓機能低下があると高血圧が起きやすい。
それはなぜかと言えば、腎臓機能が低下すると、腎臓はある物質を生成し副腎皮質ホルモンを刺激してナトリウムやカリウムなどの電解質の代謝に関係あるホルモンの分泌を促す。
その特質が同時に欠陥収縮作用を現わすため、結果として高血圧を招くことになるらしい。
若い人では、尿蛋白や血尿が出たりしているうちに、高血圧が起きるし、中年以降では腎盂腎炎や前立腺肥大のため尿路が詰まり、たまった尿で腎臓が圧迫されると急に血圧が高くなる、というケースが多い。
<高血圧症の原因と治療>
高血圧症が、中年以後の病氣といわれたのは一昔前の話で、現在は中学生や高校生にも高血圧患者はザラである。
高血圧を招く最大の原因は、動蛋食品、精白食品(とくに白米・白砂糖)の多食である。
肉、卵、牛乳は、もともと穀菜食性であるわれわれの身体には不適当なものであり、白米、白砂糖などの精白された不自然な食品は、身体の自然性(生理)とは相容れないものである。
これらはいずれも、血液を酸毒化させ、粘稠性を高めるものだ。また、腸内細菌のバランスを崩し、その結果、病的な細菌が繁殖し、大量の毒素を生み出し、それがどんどん血液中に吸収されてしまうのである。
同様に、いずれも動脈硬化を促進させて、血圧上昇を促す。
動蛋食品が血液のコレステロールを過剰にし、それが血管の内壁に沈着して、動脈硬化を引き起こすことは周知の通りで、精白食品もそれに負けず劣らずの動脈硬化要因となる。
精白食品が動脈硬化を起こすカラクリを簡単に言うと、次のようなものだ。
精白すると、共存しているミネラル、ビタミン酵素成分などが失われる。
そういう片鱗の状態となった炭水化物は、腸壁から異常な速さで吸収されてしまう。消化が良くなり過ぎるのである。
その結果、血糖値を急上昇させる。
そうすると血糖値を平常にもどすために、動脈壁中にあるインシュリンが動員され、血管壁に脂肪変性が起こる。その結果、血管は弾力性を失い、硬くなってしまう。
このように、動蛋食品とは別のやり方で、深刻な動脈硬化を引き起こすのである。
一般に、高血圧の治療には、いろいろな血圧降下剤が使われている。
高血圧が起こるのは、血圧上昇物質が血液中に生じるためという認識程度で治療にとりかかるから、そのような間違いが起こる。
すなわち、それら血圧上昇物質の生成を抑制したり作用を中和するものを与えれば良い、ということになってしまうのだ。
だが、化学薬剤はせいぜい一時的に症状を軽くするだけだ。
しかも薬物(化学薬剤)は、消化器管を障害し、血管を痛めつける。
結局、血液性状を混乱させ血管の老化を早め、かえって高血圧症を治りにくくする可能性が大きい。
問題は血圧上昇物質を生み出した背景にあるのだから、その背景に働きかけそれを改善する能力を持たない降圧剤で、高血圧症が根治できるはずはない。
では、どうすればいいか。
それには生活を改善することによって、血液の性状とくに粘稠性を正常化し、心臓・血管への無用な負担を取り除くこと。それが最も確実な高血圧症の根本療法である。
具体的にいうと、白米・肉食をやめ、玄米・菜食中心食に切りかえることだ。
特に副食に、コンブをはじめワカメ、ノリなどの海藻を積極的に摂ることが大切。
海藻は浄血力が大きく、降圧作用が著しいからである。
体質にかかわりなく著効を現わすのは、それに加えて、浄血・体質改善効果の大きい胚芽、葉緑素、酵素の三大健康強化食品をしっかり補給することも忘れてはならない。
<低血圧者は生理機能が低レベル>
一般に、最高血圧100mm未満を低血圧という。
特別どこといって悪いところはないのに、不快感や倦怠感に常に悩まされるのが、低血圧の人の大きな特徴。
特に起こりやすい不快症状は、頭痛、めまい、肩凝り、耳鳴り、疲れやすい、身体がだるい、集中力散漫、不眠、憂鬱、劣等感、不安感を持つ、手足が冷える、胃が圧迫されるようで食欲がない、むかつき、吐き氣がする、胸痛が起き心臓がドキドキする……など。
低血圧症として問題になるのは、ほかの特別な病氣がなく、ただ血圧の低い状態が続いている場合だ。
病氣の一症状として、低血圧になることも少なくないが、その場合は、その病氣(原疾患)を治せば血圧は自然に正常化するからだ。
たとえば心臓病、肺結核、胃・十二指腸潰瘍などに続発する低血圧がそれである。
単に血圧だけが低い低血圧症は、それが原因とみなされる、はっきりした症状が出ない限りは、病氣としての取り扱いは受けていない。
一般的にいって低血圧者は、高血圧者に比べれば健康状態もよく長生きするようだ。
それには、次のような理由が考えられる。
日本人の食生活は洋風化し血圧もそれだけ高くなりがちだし、さまざまなストレスは、血圧を上昇させる条件になりやすい。また、歳をとるにつれて、血管は次第に硬化し、血圧は上昇傾向になる。
こんなわけで低血圧者は、高血圧者に比べて生命の危険は少ない。
だが、低血圧の身体は、生理機能全般が低レベルになっているので、比較的長生きできたとしても、人生の中身は薄いものになっているはずだ。
それはともかく、生理機能が低レベルになっているという弱点は、夏場にいろいろな障害となって表面化しやすい。
すなわち、夏は高温のため、交感神経の緊張がゆるみがちになり、だれでもだるさを感じやすい時期である。
特に日本の夏は多湿のため、皮膚呼吸を妨げビタミンの消耗も著しくなり、だるさは倍増する。
このように、だれもがしのぎにくい夏だけれど、低血圧者にはそれが特にこたえ、完全に打ちのめされてしまうことになる。
今のうちに治しておかなければならないゆえんである。
<低血圧症の原因と治療>
低血圧症の主要原因は自律神経機能のアンバランスである。
自律神経は血管の緊張性を調整している。交感神経は緊張を高め、副交感神経は緊張性を低めるように作用する。
交感神経の働きが弱まると、血管の緊張性は低下する。
同様に、自律神経系は血管だけでなく、筋肉や腱の緊張性、内臓を構成する細胞の緊密性をも同様に調節している。
低血圧の場合は、この自律神経機能のバランスがくずれて、組織の弛緩や機能減退といった退行的現象が現れる。
だから、血圧が異常に低下するのに加えて胃アトニーを起こして消化力が弱ったり、肝臓や腎臓も下垂し、機能も減退氣味となる。
また、副腎機能の低下もみられる。そのため抗ストレス力も弱まる。
ただその影響は、胃液の分泌を少なくして食欲を無くし、低栄養状態になるというように、「過剰」ではなく「不足」の状態になるので、急激に致命的な障害を起こすことはないわけだ。
現代栄養学では、低血圧の治療には高血圧の原因食を与えればよい、という考え方をしている。
すなわち、動物性蛋白と塩分を大目に食するようすすめている。
しかし、その考え方は完全な誤りで、それでは絶対に治るはずはない。
動物性蛋白質は、ただでさえ消化力の衰えている胃腸を増々痛めつけるし、精製塩や食卓塩を多めに摂れば、ミネラル代謝はいっそう混乱して自律神経機能の異常を増すばかりである。
根治をはかるには、玄米・菜食中心食に切りかえなければならない。
それも量を少なくして徹底的に咀嚼し、まず、胃腸機能回復をはかることが大事だ。
体細胞の弾力性、緊張性を回復するために、副食は根菜類を中心にする。
コンブ、ワカメ、ヒジキ、ノリなどの海藻類をふんだんに摂ってミネラルを補給し、健康食品は胚芽を十分に摂る。これらは、体力を強化し、積極的に生み出すために不可欠な食品だからである。
なお、顔色が悪い、疲れやすい、動悸がするなどの症状は、貧血のそれと大変よく似ているので、低血圧と貧血を間違えやすい。
しかし、低血圧は血液の容器の異常であり、一方、貧血は血液中のヘモグロビンの量が少なくなるもの、すなわち血液そのものの異常であるから、両者は別々のものである。
また、低血圧は、自律神経の異常によって引き起こされるのに対して、貧血は自律神経の異常の原因となるものである。
だから、低血圧が原因で貧血になることはまずないが、貧血から低血圧が引き起こされることは十分にあり得るわけである。