『低炭水化物食と心疾患リスクについて考える』
糖質オフ食や低炭水化物(ローカーボ)食におけるリスクについて考えてみましょう。
ハーバード公衆衛生大学院による低炭水化物ダイエットの長期観察研究(米国約13万人、20年間)では下記のような結論になっています。
・低炭水化物ダイエットは全ての原因における死亡率が23%増加するリスクあり。
・低炭水化物ダイエットは心臓疾患による死亡リスクが14%増加するリスクあり。
・野菜を豊富に食べる低炭水化物食では全ての原因における死亡率が20%減少する。
・野菜を豊富に食べる低炭水化物食では心臓疾患による死亡リスクは23%減少する。
このような興味深い結果を残しました。
(※対象者は調査開始時点では疾患ないことが条件。当然、コホート研究ですので、あくまで相関関係を示すものです。)
さて、これは見方によっては高タンパク質食を続けると、心疾患などが増えるように思います。
しかし、それが因果関係にあると考えるのは短絡かもしれません。
表には出てこない、裏や背景を考えていくことも大事です。
たとえば、マグネシウム不足です。
マグネシウムはどうしても植物性食品や魚介類・海藻類に多く含まれます。
米国ではその食文化から魚介類や海藻類を食べる機会が少なく、また高タンパク質食で野菜摂取量が少なくなると、当然マグネシウム不足が考えられます。
慢性的なマグネシウム不足が続くと、不整脈を起こしてしまい、最終的には心疾患のリスクも考えられます。
こうした背景も原因の一つに考えられます。
また、お肉のタンパク質やビタミンなどの栄養価を考えた場合、どうしても同じタンパク源である豆類を軽視してしまう傾向にあります。
大豆を食べるくらいならお肉を食べましょう的な考えです。
しかし、豆類はとても重要なマグネシウム源になります。
次に、お肉の質です。低炭水化物食を続けると、どうしても食費がかさみます。
そうなると、安価なお肉に走ってしまったり、加工肉を常食しかねません。
このような食生活が続くと、短期的には健康に感じるかもしれませんが、そこに含まれる有害因子が徐々に体内に蓄積されることも十分に考えられ、最終的には発がんや動脈硬化になってしまうかもしれません。
そして、油です。
食事法はどうしても糖やタンパク質に焦点を当ててしまいがちですが、脂質を選ぶことはとても重要です。
脂質の選択(オメガ3を積極的に、オメガ6は控えめに)を誤ってしまってはどんなに肉を食べても疾患リスクは上がる一方かもしれません。
その他、いろいろな要因が考えられます。
まずは、肉食中心=心疾患リスクと安易に考えるのではなく、肉食中心の背景に何が不足し、何を摂りすぎたかを考えることが大切です。
そうしなければ、動物性タンパク質=有害で終わってしまい、これでは重要な栄養源を「完全に」避けてしまうきっかけに陥りかねないです。
完全に避けることは危険です。
良質なものを選んで、その人にとっての適量は食べるべきだと思っています。
そして、適量を無視して摂り過ぎたことが原因なのか、良質な素材でなく加工度の高い素材やホルモン・抗生物質の残留濃度の高いものが原因なのか、などを考えることです。
巷で流行している「○○食」や「○○ダイエット」を鵜呑みにせずに、参考にしても、最終的には「自分に合った食」を探すことこそが答えだと思います。
肉さえ食べれば健康に生きられるという安直な考えにより、食材の質よりも量を優先した食事、そして化学的な添加物漬けの食品を食べて本当に命というものをその食材に感じることができるかということです。
また人によっては、炭水化物を極端に避けたために、あらゆる代謝障害へと結びつくこともあります。
食べると言うことはある意味その食材と同化したり、そのエネルギーを利用することです。
不健康な食材を食べて、果たして本当に健康になるのでしょうか。
理論も時には大切ですが、もっと大切なことは短期と長期のそれぞれの体感が必要なのです。
短期的結果が良好だからといって、これが長期的効果をもたらすとは限りませんし、その逆もしかりです。
また、緊急時は仕方ありませんが、健常者がサプリ常用に走ることもかえって疾患リスクを高めてしまうことさえあります(サプリを摂る人ほど発がんしているという統計がある、まさにサプリメント・パラドックスですね)。
食材の長所・短所を知りつつ、自分の体質に合った食事内容を探す、これこそが私たちの目指すべき方向ではないかと思います。