《ポリフェノール》
○カテキンは、アルツハイマー病の原因物質と考えられている「アミロイドβたんぱくやタウたんぱく」の凝集を抑制し、その毒性を弱めることが報告されています。
さらに、レビー小体型認知症の原因物質とされる「αシヌクレイン」というたんぱくの凝集を防ぐことも報告されています。
※カテキンは、私たち日本人にはおなじみの、緑茶に含まれるポリフェノールです。
抗酸化作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用の他、抗菌作用、血圧上昇抑制作用、脂質代謝改善作用、血糖値調節作用、抗アレルギー作用など多彩な作用が報告されています。
*豆知識!*
カテキンのような抗酸化力のある成分は、酸素に触れたり加熱されたりするとすぐに変質してしまいます。
週に何度かはペットボトルのお茶ではなく急酢を使ってお茶を入れてみてはいかがでしょうか。
○クルクミンにもアミロイドβたんぱくの蓄積を予防する効果があり、さらに神経をアミロイドβたんぱくの毒性から保護してくれる働きがあります。
※クルクミンはみなさんご存知のウコンに含まれる黄色い色素です。カレーのスパイス「クミン」としても使われており、日本人にも馴染みが深いポリフェノールです。
*豆知識!*
ご飯や麺類のような炭水化物は血糖値の急激な上昇につながります。 高血糖は認知症のみならず、老化を促進する因子です。カレーの前にサラダなどを食べて血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維を摂り、ゆっくり良く噛んで食べましょう。
○フェルラ酸も抗酸化作用、抗炎症作用を持ち、アミロイドβたんぱくの産生や神経毒性を抑制します。
一般的に、フェルラ酸はガーデンアンゼリカというハーブのエキスなどと合わせて販売されています。
ガーデンアンゼリカは記憶力に関連するアセチルコリンという神経伝達物質の分解酵素を阻害する働きをもち、脳内のアセチルコリンの量を増やします。
※フェルラ酸は植物に広く含まれているポリフェノールです。サプリメントとして販売されているものは、米ぬかから抽出されているものがほとんどです。
*豆知識!*
フェルラ酸を食品から十分な量を摂取することはなかなか難しいので、物忘れが気になってきたらサプリメントを利用するのが良いでしょう。
《ココナッツオイル》
○ココナッツオイルがアルツハイマー病に対して効果を表すのは、中鎖脂肪酸という成分によるものと考えられています。
中鎖脂肪酸は分解されると“一部が”「ケトン体」という物質に変化します。
通常、脳はブドウ糖をエネルギー源として活動しています。
しかし、アルツハイマー病になるとブドウ糖をうまく使うことができなくなってしまいます。
脳はブドウ糖だけではなくケトン体を使って活動することができます。
アルツハイマー病ではブドウ糖は使えませんがケトン体を使うことはできるので、中鎖脂肪酸の摂取により体内でケトン体が作られれば、脳のエネルギー不足が解消され、認知機能が改善するというわけです。
※どの程度中鎖脂肪酸を摂取すれば良いのかというと、「ケトン体を作りたいなら大さじ2杯を1度に摂る」を覚えておきましょう。
ココナッツオイルは油なので、太ることを気にされる方もいるでしょう。
基本的に中鎖脂肪酸のみであれば、摂取することによってむしろエネルギー消費が上がる、体重が減る、内臓脂肪が減るといった報告がありますので基本的には安心して良いと考えています。
*豆知識!*
認知症に対するココナッツオイルの効果が広まるきっかけになったのは、米国の小児科医、メアリー・T・ニューポート医師が著した「アルツハイマー病が劇的に改善した! 米国医師が見つけたココナツオイル驚異の効能(SBクリエイティブ)」という本でした。
著者のニューポート医師のご主人は若年性アルツハイマー病にかかってしまい、その中でなんとか症状の進行を食い止めようとして見つけたのが中鎖脂肪酸という成分で、調べてみるとそれはココナッツオイルの約60%を占める主成分。
著者がさっそくココナッツオイルを入手し、ご主人に飲んでもらったところ、驚くような変化が現れたというのがこの本の要旨です。
《緑茶に含まれるテアニンの効果》
○2016年に発表された試験管内の実験では、神経幹細胞をテアニンと一緒に培養すると、神経細胞が増殖しやすいことがわかりました。
そして、入れるテアニンの量が多いほど神経細胞の量が増えたそうです。このテアニンの研究成果によって、「神経細胞を増やす」という新たな観点から認知症予防ができる可能性が出てきました。
※テアニンはアミノ酸の一種で、緑茶に含まれるうま味成分の一つです。テアニンは緑茶の原料となるチャノキの根で作られ、幹を通って葉に運ばれていきます。
テアニンは、摂取することにより、小腸で吸収されて血中に入り、脳まで運ばれることが動物実験によってわかっています。
緑茶には神経を興奮させるカフェインも入っているのですが、その働きをテアニンが抑えているのではないかと考えられています。
テアニン200mgを溶かした水と普通の水を被験者に服用してもらい、脳波を測定した実験では、テアニンを含んだ水の方がα波という脳波が多く出現しました。
テアニンを摂取することはリラックスしながらも頭は冴えているという理想的な精神状態を保つのにも役立ちそうです。
*豆知識!*
テアニンをたくさん摂ろうと思ったら、日の光を浴び始めたばかりの新芽を摘んで作られる新茶がベスト。
二番茶、三番茶と後になるにつれて減っていきます。テアニンはカテキンよりも低い温度で抽出されるので、テアニンのうま味を楽しみたい時は60度くらいの低い温度でお茶を淹れると良いです。
●今野裕之先生からのメッセージ!●
○カテキン、クルクミン、フェルラ酸、テアニンについて解説しましたが、認知症予防に効果が期待されているポリフェノールはこれだけではありません。
最近では、レモンバームに含まれているロスマリン酸による認知症予防の臨床試験が始まるというニュースがありました。
植物にはポリフェノール以外にもさまざまな健康に有益な成分が含まれています。一つの食品にこだわらずにできるだけ新鮮なものをおいしく食べて認知症を予防しましょう!
○認知症に良いとされる油はココナッツオイル以外にもオメガ3脂肪酸、オリーブオイルなどがあります。
出典:ブレインケアクリニック院長 今野先生コラム
アメリカ人の医学博士メアリー・ニューポートは、ココナッツオイルの脳への効果を信じている学者の一人です。
ニューポート医師によれば、スーパーフードとして近年注目を集めているココナッツオイルには、「不治の病」といわれる認知症を予防・改善する効果があるというのです。
彼女は2008年に「アルツハイマー病の治療法があるのに、誰もそれを知らないとしたら」と題したレポートを公開、後に本を執筆しています。
ニューポート医師が認知症に関する調査と研究を始めたのは、愛する夫のスティーブが若年性アルツハイマーと診断されたことがきっかけでした。
日を追うごとにスティーブの症状はひどくなり、やがて自分で生活する能力を失うところまで症状は進行していました。
「ナイフやフォークを見つけられず、冷蔵庫の開け方も忘れていました。
電話がかかってきても、彼は誰もかけなかったと言ったり、2日後に突然思い出したりするのです」
意思決定の力が失われていく夫の姿を見るのは、もどかしく、大変辛いことだったといいます。
スティーブは病気の進行を抑える薬を摂っていましたが、鬱状態に陥り、体重が激減するなど、その副作用は重いものでした。庭仕事をしながら、突然の悲しみに襲われている夫の姿をニューポート医師は辛抱強く介護しながら、夫のためにあらゆる治療法を模索していました。
やがてスティーブは単純な計算が出来なくなり、日常の簡単な作業も非常に困難に感じるようになります。
新薬の治験に夫を参加させようとしたこともありましたが、病状が進行しすぎているスティーブは参加資格を得ることができませんでした。
しかし、短期記憶がどんどん悪く中でも、メアリーは夫の脳が情報をしっかりと記憶していることを認識していました。
スティーブは時々数日前に起こったことについて、まるで今起こったかのように話すことがあったからです。
そんな中、ニューポート医師は、中鎖脂肪酸「AC-1202」がアルツハイマー病の進行を抑える可能性があることを示唆する医療食品のプレスリリースに出会います。
そこには、「ケトン体」を増やす食事が、アルツハイマー病や脳血管障害やパーキンソン病やハンチントン病など神経変性疾患の改善に有効であることが書かれていました。
ケトン体とは、体内のブドウ糖が足りなくなると、脂肪が燃焼される過程で肝臓で作られるアセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸という、3つの物質の総称で、ブドウ糖の代わりに脳のエネルギー源となると言われています。
病気です。
低炭水化物の食事と肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸の摂取によってケトン体を大量に産生することで、アルツハイマー病など体から炭水化物(ブドウ糖)を使う能力を奪う脳神経系の病気の進行を抑えることができると紹介されていたのです。
ニューポート医師は、スティーブで早速試してみることにしました。
ニューポート医師はスティーブに、中鎖脂肪酸を含む油であるココナッツオイルを、毎日少なくとも大さじ2杯半食べさせることにしました。
すると目に見える変化がすぐに表れてきたのです。
数日のうちに体の震えが収まり、顔に生気が表れたといいます。
そして60日後には、思考力が飛躍的に向上し、ジョークを言ったり、会話が弾むようになったといいます。
たまに言葉を忘れることはありますが、昔忘れていた人の顔も思い出せるようになり、自分のやっている作業にも集中できるようになり、食事療法を初めてから1年後、スティーブに別人のようになっていたといいます。
もちろんスティーブは発症前の脳は取り戻していません。
しかし、中鎖脂肪酸を含む食品を習慣的に日頃の食生活に取り入れたことによってアルツハイマー病の進行を劇的に遅らせることができたのです。
この経験を踏まえ、ニューポート医師は次のように語っています。
「脳での生理学的変化や機能低下は、アルツハイマー病の症状が現れる10~20年前から始まっています。
ですから、できるだけ早い段階から中鎖脂肪酸の摂取をスタートし、できれば毎日食べ続けることが重要だと考えます」
2008年にニューポート医師が公開したレポートは、インターネットを通して広まり、中性脂肪酸の認知症への効果についての研究は現在いろいろなかたちで進行中ですが、多くの人々が食事に中鎖脂肪酸を取り入れてるようになっているそうです。
ニューポート医師の書籍は、現在日本語にも訳されています。
この発見が多くの認知症患者たちそして家族の希望の光となることを願うと同時に、そう遠くない将来、有効な治療法が見つかることを祈るばかりです。