間欠的ファスティング(Intermittent Fasting : 断続的断食)はダイエットの方法論として強調されがちですが、実際には体重減少以外にも健康において様々な利点があることが知られています。
1.間欠的ファスティングは細胞・遺伝子・ホルモンの機能を正常化する
ファスティングを行うと身体の中では様々ンなホルモンレベルが変化して、体脂肪が燃焼しやすい状態になります。
断食中に起こるホルモンの主な変化は以下のとおりです。
インスリン: インスリンの血中濃度が低下し脂肪燃焼が促進される
成長ホルモン: 成長ホルモンの血中濃度は、約5倍に増加する、 このホルモンにより脂肪燃焼や筋肉増強が促進される
グレリン: グレリンが正常化することにより異常な食欲が消失する
細胞修復: 細胞に蓄積した廃棄物質の除去(デトックス)などの細胞修復プロセスが促進される
遺伝子発現: 長寿や疾患の予防に関連する遺伝子が発現する
断続的な断食の恩恵の多くは、これらのホルモンの変化、細胞の遺伝子発現および細胞の機能によってもたらされます。
2.間欠的ファスティングは体重と腹部の脂肪を減少させる
間欠的ファスティングの最も大きな目的とされるのはダイエット(体重減少)です。
一般的に断食を行うと、摂取カロリーは少なくなります。
しかし、カテコールアミンのホルモンが増加することによって代謝機能が促進されます。
インスリンレベルの低下、成長ホルモンレベルおよびノルアドレナリンの増加により、体脂肪の分解を促進させエネルギー代謝が進行します。
実際に断食中の代謝率は3.6%から14%にまで増大するという報告もあります)。
また、成長ホルモンの機能により、カロリー制限よりも筋肉損失が少ないことが示されています。
2014年のある報告によれば、3〜24週間の間欠的ファスティングは3〜8%の体重を減少させる可能性があると報告しています。
別の研究では、間欠的ファスティングは腹囲を4-7%減少させ、様々な疾患の原因となる内臓脂肪の低下にもつながることが報告されています。
以上のことから、間欠的ファスティングはダイエットの最も効果的な手法の一つであると言われています。
3.間欠的ファスティングはインスリン抵抗性を改善し2型糖尿病リスクを低下させる
日本人の2型糖尿病予備軍は1000万人とも言われていますが、糖尿病は近年世界中で最も大きな問題の一つとなっています。
その主な原因は、インスリン抵抗性です。
逆にインスリン抵抗性を低下させ空腹時の血糖値を下げることができれば、2型糖尿病を予防することにつながります。
断続的な断食は、インスリン抵抗性を低下させ血糖値が顕著に低下することが示されています。
この研究では、空腹時血糖は3〜6%低下し、空腹時インスリンは20‐31%減少したことが示されています。
糖尿病のラットを用いた研究では、糖尿病の最も重篤な合併症の一つである腎障害に対して間欠的な断食が効果があることが示されています。
これらの結果から、断続的な断食は2型糖尿病の予防効果が非常に高いと考えられています。
しかし、一方で男女差があることも示唆されています。
ある女性を対象とした研究では、22日間の間欠的断食プロトコル後に血糖コントロールが悪化したことも報告されています。
4.間欠的ファスティングは体内の酸化ストレスと炎症を軽減する
酸化ストレスは、老化および多くの慢性疾患に関連すると言われています。
フリーラジカルとよばれる不安定な酸素分子は、タンパク質やDNAのような他の重要な分子と反応しそれらを損傷させます。
いくつかの研究では、断続的な断食は酸化ストレスの耐性を向上させることができることを示しています。
また別の研究では、断続的な断食は炎症反応を抑制することも明らかになっています。
5.間欠的ファスティングは心臓疾患を予防する
心臓病はガンと並び常に現代人の死因の上位にランクされます。
間欠的ファスティングは、血圧、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、炎症および血糖値など心臓疾患に関わるリスク要因を改善することが示されています。
しかし、これらの多くは動物の研究に基づいているため、今後はヒトを対象にした研究が進むと考えられます。
6.間欠的ファスティングによりオートファジーが活性化する
ファスティングを開始すると、オートファジーと呼ばれる体内の細胞の廃棄物の除去プロセスが活性化します。
これは、細胞内に蓄積した機能不全タンパク質を分解し、再利用するメカニズムです。
オートファジーが活性化されると、がんやアルツハイマーなどの疾患に対して予防効果があると示されています。
7.間欠的ファスティングはがん予防に効果がある可能性がある
ある動物実験では、断続的な断食はがん予防に役立つ可能性があることを示されています。
人のがん患者においてもいくつかの証拠があり、ファスティングが化学療法の様々な副作用を減少させることも示されています。
また乳がん患者の追跡調査では、間欠的ファスティングは乳がんの再発抑制に効果があることが示唆されています。
生きるために食べる
夜間13時間以上のファスティングが乳がんの再発リスクを低下させる
http://saitokarami.com/nightly-13hrs-fasting-lowers-risk-for-breast-cancer-return/
JAMA Onclogyの2017年3月31日に発表された研究によると、夜間の13時間以上のファスティングを行う女性は乳がんの再発リスク低下に関連している可能性があることを明らかにしています。
8.間欠的ファスティングは脳を活性化させる
断続的な断食は、酸化ストレスの減少、炎症の減少、血糖値の低下およびインスリン抵抗性の改善などの効果がありますが、これらは脳にとっても良い効果をもたらします。
動物実験のいくつかの報告では、断続的な断食は新たな神経細胞の成長を促進させることが示されており、脳機能の向上に役立つと考えられています。
また、脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる脳内物質を増加させると言われています。
これらの欠乏は、うつ病および種々の他の脳に関連する疾患の原因となっていると考えられています。
動物研究では、断続的な断食は脳梗塞による脳の損傷を防ぐことも示されています。
9.間欠的ファスティングはアルツハイマーの予防に役立つ可能性がある
アルツハイマーは世界で最もよく知られた神経変性疾患の一つです。
実際のところアルツハイマーの治療法は確立していないので、アルツハイマーにならない様にすることが重要であると言えます。
ラットの研究では、間欠的な断食がアルツハイマーの発症を遅らせる、またはその重症度を低下させる可能性があることを示しています。
一連の症例報告では、間欠的ファスティングを取り入れることにより、患者10人のうち9人においてアルツハイマー病を有意に改善することができたとしています。
また、動物研究では、空腹時にはパーキンソン病およびハンチントン病などを含む他の神経変性疾患を予防する可能性があることも示唆されています。
今後より多くの研究により間欠的ファスティングと神経変性疾患の関連が明らかにされることが期待されています。
10.間欠的ファスティングは寿命を延ばす可能性がある
断続的な断食の最も関心の高い効果の1つは、寿命を延ばすことかもしれません。
ラットでの研究は、間欠的ファスティングは連続カロリー制限と同様に寿命を延ばすことが示されています。
このような研究のいくつかは、その効果は絶大であったと報告しています。
ある論文では、一日おきに断食したラットは、断食していないラットよりも83%長く生存していたと報告しています。
これらの結果はまだ人間では証明されていませんが、断続的な断食はアンチエイジングを目的とする人たちの間ではもはや一般的にもなっており、これから様々な報告がされることが期待されています。
断続的なファスティングはより長く健康的な生活を送るのに有益である可能性が非常に高いと考えられています。