戦後から日本人の食生活は急速に変化しました。
いわゆる和食中心だった食事から、動物性タンパク質、油、小麦粉、乳製品、砂糖、生サラダ系野菜などの食材が一挙に増加しました。
俗に「食の西欧化 (西洋化、欧米化)」と言われるものです。
この結果、今まで日本人に見られなかった、西洋人特有のがん、糖尿病、動脈硬化、アレルギーなどをはじめとした慢性疾患が年々急増したわけです。
ところが、突き詰めていくと、このような「明暗」の「暗」の部分だけでなく、戦後に比べればむしろ栄養状態が格段に良くなった「明」の部分も多かったことは否定できませんでした。
また、そもそも「伝統的な和食」の確固たる定義がありません。
いつの時代の日本食を和食というべきか、です。
和食と言えば、お米、味噌汁、漬物、海苔などの海藻類、魚、豆腐、納豆、おひたし、梅干しを想像すると思いますが、実際に戦前には白米の大食が中心であったこと、魚の流通インフラが整って各家庭に普及してきたのは1960年代以降です。
つまり、私たちが想像するバランスの良い和食が確立したのは、1970年代の和食がコンセンサスになっています。
これは皮肉なことに飽食時代に突入した結果、確立したものとなっているのです。
さて、話を戻しますが、これらの慢性疾患が増えた原因をすべて食の西欧化のせいにするのは少し早合点と言えます。
私が考えるのは、西欧食の食材には健康に良いものと悪いものが混在しているということです。
必須の栄養やカロリー源になるものでありながらも過剰摂取はかえって悪化させてしまうもの、精製度や加工度が上がってしまったものも含んでいます。
さらに、発がん性が認められている発色剤や着色剤などを頻繁に使用した加工食品も西欧食の特徴かもしれません。
たとえば、油で言えば、各家庭で使用されている食用油やドレッシングの油はリノール酸が多く使われています。
リノール酸摂取過多はその生理活性によって炎症を起こしやすい体質へと変化させてしまいます。
さらに加工過程で出来るトランス脂肪酸の残留も考えなければなりません。
しかし、α-リノレン酸、EPA・DHAなどのオメガ3系の油は有益な脂質といえますし、飽和脂肪酸やオレイン酸も摂り過ぎなければ栄養源となります。
つまり、一緒くたにして「油」が良くないというのは至ってナンセンスです。
動物性タンパク質についても同様です。
現在流通されている家畜肉や乳製品は、本来の自然に近い製法で生産された伝統的なものとは程遠いものとなっています。
GMO穀物のエサ、ホルモン残留、過剰な抗生物質など摂取した人体にも影響を及ぼしかねません。
また、未消化タンパクは大腸において腐敗物質の原因になってしまうため、同時に食物繊維を摂取することも心がける必要があります。
また小麦においても精製度が高く、品種も昔のものとは異なり、アレルギーの原因となるグリアジンの量が増えています。
除草剤の残留も指摘されています。
野菜に関しては、食物繊維源という重要な温床になる一方で、土壌の疲弊による栄養価の低下、農薬や除草剤の残留などの面もあります。
以上のように、「食の西欧化」は栄養状態を良好にした面もありながら、長期的に見ると悪化させた部分もあるのです。
よって、今こそ、健康を維持するうえで積極的に摂取するべき栄養素、摂り過ぎてはいけない栄養素、避けるべき食材、質の良い食材選び、食べ過ぎない食事、などの見極めを考慮したうえで、評価するべきだと私は思っています。
私は基本的に和食中心ですが、質を考慮しつつ西欧食も上手に摂っています。
西欧化の食事にも、質さえこだわれば、功罪の「功」の部分も大きいことは否定できません。