糖質制限の最大の盲点は、糖質を悪者にすることによって、耐糖能の改善という本質的な問題を無視してしまったことにあります。
確かにかなりの肥満状態ではそれ自体がインスリン抵抗性の原因になりますから、脂質代謝優位にして体重を減らすことは、インスリン抵抗性に対してそれなりに効果があります。
しかし同時に、脂質が耐糖能を悪化させるデメリットに相殺される部分もかなりあり、治療法としては矛盾しています。
さほど肥満でないレベルにおいてはデメリットの方がおおくなり、糖質制限で耐糖能は悪化しますから(生理的にも本質的にも)、糖質を悪者にしてケトン体に依存するしか説明できなくなります。
耐糖能の改善策として、高糖質、高植物繊維、低脂質がポイントになります。
これにより耐糖能が改善し高インスリン状態による様々な病理状態が改善するという臨床報告がすでに多数あるにも関わらず、それを無視している点は海外のケトジェニックの研究者も同じです。
耐糖能が改善しさえすれば、食後の高血糖もなくなり、空腹時インスリンレベルや食後のインスリンの分泌も少なくて済みますので、脂質代謝にもスムーズに切り替わるようになりいいことずくめです。
糖質を悪者にする理由はありません。
ケトン体が心筋を保護するという説には疑問を持っています。
節約モードにおいて心筋はケトンを利用するでしょうが、糖を利用する場合に比べ収縮力は落ちるはずです。
癌にならなかった長寿者の場合、最後はどの段階で心不全になるかで寿命が決まることが多いのではないかと思われ、そのとき決め手となるのは糖をどこまで有効に使えるか、つまり耐糖能ではないでしょうか。(ここの部分は単なる仮説ですが)
糖という(素晴らしい)エネルギー源を使うエンジンを、まだ十分使えるうちに放棄してしまうのはあまりにもったいないことだと思います。