母乳は乳児にとって唯一の大事な栄養源になります。
乳児は消化吸収の機能や生理機能が未熟であるため、乳汁だけの栄養摂取からスタートします。
母乳に含まれる栄養価は、糖質が約7%、タンパクが質1%、脂質が4.4%となり、いちばん多い成分は糖質になります。
(※初乳、成乳によって、栄養成分の構成比は異なります。)
私たちの成人の体は、水66%、タンパク質16%、脂質13.5%、糖質0.5%からおおよそ成り立っているのにもかかわらず、なぜ乳児の体を形成していく母乳にはなぜ糖質がいちばん多いのでしょうか。
母乳に含まれる糖質のうち95%は乳糖であり、残り5%はオリゴ糖になります。
オリゴ糖は、基本的に人間の体内では、消化も吸収できず、栄養にも全くなりません。
では、なぜ含まれているのでしょうか。
子宮に無菌状態でいた赤ちゃんが、はじめて腸内細菌と出会うのは、出産後ではなく出産中です。
母親の産道を通り、妊娠期に母親が形成していった(膣内にいる)ビフィズス菌や乳酸菌などを中心とした微生物群に出会います。
さらに、大腸菌をはじめとする好気性代謝を行う細菌が主体の細菌叢も徐々に出来始めます。
ここで、オリゴ糖は、ビフィズス菌が定着・増殖するのを助ける役割を果たします。
そして、この細菌叢は今度は徐々にビフィズス菌が主体のものへと変化するわけです。
乳糖はその名の通り乳汁以外には自然界に存在しません。
乳糖は小腸の酵素でブドウ糖とガラクトースになり、このガラクトースが脳の中枢神経系(神経細胞のたまり場)の完成に一躍担います。
また、乳酸菌の増加を促進し、カルシウムやマグネシウムの吸収を助ける作用もあります。
乳糖を分解する酵素は、成長とともに次第に活性が落ち、成人では乳児期の10%にまで低下し、以後低い活性のまま経過します。
乳児以外では、必要なガラクトースは、肝臓においてブドウ糖から作られますので乳糖を必要としません。
ここでポイントになるのは、母乳に、脳の発達に必要なエネルギーといわれているブドウ糖が含まれていないことです。
実は、赤ちゃんにとって主要なエネルギー源は母乳中の脂肪であり、次に乳糖です。脂肪の濃度はお母さんの食事に影響されます。
よって、お母さんの食事内容と授乳のたびに変化しますので、注意が必要です。
さらに、1回の授乳において、授乳はじめが脂肪濃度はまだ低く、後半になるほど脂肪がたっぷり含まれているようです。
脳の成長に欠かせないDHA(ドコサヘキサエン酸)やアラキドン酸などの長鎖脂肪酸も含まれています。
なお、母乳中には、脂肪分解酵素のリパーゼも含まれているため、脂肪は効率良く消化されて赤ちゃんの栄養となることができます。
さらに母乳は赤ちゃんを下痢、呼吸器感染症、アレルギー疾患、ぜんそくなどのさまざまな疾患などから守る働きがあります。
しかし、最近のお母さんの母乳にはさまざまな不純物が含まれていたり、栄養価が少ないこともあります。
本来の母乳は赤ちゃんにとって完璧な栄養素の集まりです。つまり、お母さんの食事内容が母乳を作るとても大事な要因になってきます。