小腸の上皮細胞はだいたい60~120日ぐらいで入れ替わりますね。
もちろん個体差がありますので目安です。
さらに、吸収上皮の表面にある、極小の突起、「微絨毛」になると、わずか1~数日で入れ替わっています。
で、一般的に小腸の環境が悪い人(消化吸収能が弱い人)で、小腸の上皮細胞のこの微絨毛の突起があまり出ていないような人には、ビタミンA,B群、ミネラルでは亜鉛・マグネシウム、そしてタンパク質食品などの積極的な摂取が勧められます。
タンパク質におけるアミノ酸を見ていくと、小腸の主なエネルギー源となるグルタミンも推奨されます。
しかし、この研究者によると、グルタミンは確かに小腸のエネルギー源としては重要なのですが、小腸の上皮細胞の形成という意味で、もっとも大切なアミノ酸は「ヒスチジン」なのだそうです。
ヒスチジンというアミノ酸は、大人は体内で合成することができますが、子どもでは合成できないため、条件付きの必須アミノ酸といえます。
このヒスチジン欠乏は、グルタミン欠乏よりもタチが悪く、小腸の上皮細胞の形成阻害というよりは、上皮細胞のアポトーシス(自殺死)を起こしてしまうというのです。
(そのデータもじっくり見ましたが、他のアミノ酸の欠乏よりも圧倒的にヒスチジンの欠乏によるアポトーシスが目立っていました。
しかも、少量のヒスチジンを摂取すれば、すぐにアポトーシスを抑制でき、上皮細胞の形成の回復に至ります。)
機序としては、ヒスチジンが欠乏するとミトコンドリアの膜電位が低下してしまい、そこで機能障害がおき、カスペース9という酵素が発現され、アポトーシスに至るというものです。
臨床においても、血中ヒスチジン濃度低下と小腸障害の相関データがありますので、ここは意外と見落としてしまうかもしれません。
先述もしましたが、特に子どもはヒスチジンを合成する能力がほぼありませんので、意識した食事が必要かもしれません。
ただし、ヒスチジンのサプリメント摂取などはおすすめできません。
あくまで、食事からの摂取が良いでしょう。
なぜなら、高用量のヒスチジン摂取は、体内でヒスタミンというアレルギー症状を引きおこす生理活性物質に代謝されてしまうからです。
ヒスチジンを多く含む食材はかつお節をはじめ、魚類に多いです。
小魚などのダシから摂ったりして、試し試し、あくまで低用量で習慣的に摂取するのがいいのではないでしょうか。
ちなみに、ヒスチジンはカルノシンというミトコンドリア活性に必要なペプチドにも代謝されますので、上手に摂ることをおすすめします。
どれだけ小腸にグルタミンを与えても、ヒスチジンが欠乏していたのでは、上皮細胞は作られません。
ヒスチジンは低用量で食事から摂取していきましょう。
銅:亜鉛バランスにおいてもヒスチジンは効果があります。
ヒスチジンは、銅吸収に対する亜鉛の阻害効果を増強し、さらに銅取り込みを減少させます。