ウイルスや細菌等の病原体が外から体内に入って引き起こす病気の場合、治療は単純です。
人体にとっては異物なので、異物を完全に排除できれば、病気の原因は消滅したことになります。
たとえば、抗生物質を服用すれば、抗生物質は体内で病気を引き起こしている細菌やウイルスを殺します。
それによって病気を治療したことになります。
ところが、がん細胞は外からの異物ではなく、自分が作り出したものです。
正常な細胞の遺伝子がわずかに変わったものです。
1個の細胞の大きさは10ミクロン以下ですから、正常な細胞とがん細胞の違いは、専門家が顕微鏡で観察してもわかりにくいと言われています。
そんながん細胞を殺そうとして、抗がん剤を投与したり、放射線を照射すれば、がん細胞と共に正常細胞も損傷し、あるいは殺してしまいます。これががん治療を困難にしている理由の一つです。
有効な治療法は、無数の正常細胞の中から、がん細胞だけを正確に選んで殺すものでなければなりません。現段階では困難とされています。
遺伝子の変異は食生活や生活習慣によって起こるだけではありません。
細胞分裂という新陳代謝の過程でも、コピーミスとして、一定の確率で起こります。。
つまり、長生きすればするほど遺伝子の変異が起こり、がんになる確率が上がります。
日々恒常的に発生するがん細胞を根絶することはできません。
存在するものには意味がある。
自ら生み出しているがん細胞にも、きっと何か意味があるのだろう。
そうであれば、がん細胞の根絶に腐心するより、共生・共存の道を探すという選択肢もあるのではないか。そんな考え方が少しずつ浸透しています。