ミネラルの吸収効率を上げるには、体温を37℃~36.5℃に維持する必要があります。
体温が下がると、ミネラルの吸収率が大幅に低下します。
体温によってミネラルの吸収効率が劇的に変化する背景には、ミネラルの吸収プロセスがタンパク質や酵素活性に依存しているからです。
体内酵素の多くが実に体温37℃前後で活性化されます。
そのため、正常な酵素活性下では、ミネラルの吸収効率があがるのです。
また、体温はエネルギー(ATP)活性の指標でもあり、ミネラルの取り込みはATPにも依存するため、正常な体温を維持することはこうした栄養素の吸収に大きく貢献するのです。
例えば鉄ですが、鉄は栄養素としてはヘム鉄と非ヘム鉄に分かれます。
ヘム鉄の吸収率が非ヘム鉄に比べて高いことはご存じかもしれませんが、そのためどうしてもヘム鉄摂取のほうに注目されてしまいます。
しかし、生体の状況によって、それぞれがそれぞれの特有のプロセスの中で鉄の働きを行うので、どちらも重要なのです。
ヘムの取り込みは、体温に依存しています。
体温37℃時に、細胞がエンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を細胞膜取り込む作用)によって積極的に取り込むことがわかっています。
また、最近ではこのエンドサイトーシス経路とは別に、PCFT/HCP1という輸送体によっもヘムを取り込むことが報告されていますが、この輸送体による吸収率もやはり温度依存性であることがわかっています(World J Gastroenterol. 2008 Jul 14; 14(26): 4101?4110.) 。
ちなみにこのPCFT/HCP1は、「葉酸」の輸送体でもあります。
非ヘム鉄の取り込みは、三価鉄(Ⅲ)の場合、アスコルビン酸(ビタミンC)の還元作用に依存しますが、これも温度依存性です(J Nutr.1995 May;125(5):1291-9.)。
こうしたミネラル取り込みの温度依存は動物細胞に限らず、植物細胞においても見られています。
しかし、そもそも体温の低い人は、ミネラル欠乏に起因していることが多いのも事実です。
こうなると負の連鎖に陥る感じがしますが、低体温であっても吸収率がゼロということではありませんので、食事療法を取り入れて正常になるまでには時間がかかるということを理解しておけばよいと思います。
体温は正常なATPが産生しているかの指標であり、酵素活性の指標であり、ミネラル吸収の指標にもなるのです。