人類の食生活と血糖値                      池澤 孝夫


人類の食生活は、血糖値をキーワードに考えてみると(1)農耕の始まる前(2)農耕開始以後(3)精製炭水化物の普及以後−−の3段階にはっきり分けることができます。

 

この三つの変化が根源的に重要な意味をもっているので、それ以外のことは全て枝葉末節と言ってもよいくらいです。

すなわち、食前と食後の血糖値の変動幅が、この3段階で明確に区別できるのです。

 

農耕開始前は「人類みな糖質制限食」

諸説ありますが人類の歴史は約700万年前に始まり、農耕が始まったのは約1万年前です。

農耕が始まる前は、「狩猟」「採集」「漁労」で食べ物を手に入れました。

穀物はなかったのですから、人類みな糖質制限食と言えます。

 

どんなものが日常的な食料だったかというと、大型動物や小動物の肉、内臓、骨髄▽昆虫▽魚介類▽野草▽果物▽ナッツ類▽自然薯(じねんじょ)などの根茎類−−でした。

これらの中で比較的糖質が多いのは、果物、ナッツ類、根茎類です。

 

果物と言われると、思わず現代のリンゴやイチゴ、それも「ふじ」や「あまおう」を想像してしまうかもしれませんが、当時の果物はあくまでも野生種です。

例えばリンゴならせいぜい直径3cmくらいでしょうし、野イチゴなら直径1cmくらいでしょうか。 

糖度(甘さ)も全然違います。

クリやクルミ、トチ、ドングリなどのナッツ類も同様で、現在より小さかったと思います。

日本の縄文時代、食べられていたと推測されている根茎類の自然薯や百合根(ゆりね)ですが、これらは今と大きさは変わらないと思われます。

 

このような農耕が始まる前の人類の食生活なら、血糖値の上下動はほとんどありません。

果物や根茎類なども、時々手に入る「ラッキー食材」という位置づけだったでしょう。

日本の旧石器時代は大変寒く、針葉樹林に覆われた地域が多かったので、採集できる植物資源は乏しかったと考えられています。

ナッツ類に関しては、日本の縄文時代には比較的多く食べられていました。

しかし全体的に見れば、農耕開始前の人類は、日常的に糖質の多い食事をしていなかったと言えます。

 

血糖値上昇はわずか

このような農耕開始前の食事を取った場合の、血糖値の変化を推測してみましょう。

参考に、血糖コントロールが正常な人であれば空腹時血糖値は110mg/dL未満、食後1時間の血糖値は180mg/dL未満、食後2時間の血糖値は140mg/dL未満です。

農耕開始前の人の空腹時血糖値を、例えば100mg/dL程度と仮定すると、食後の血糖値はせいぜい110〜120mg/dLくらいでしょうか。

血糖値上昇の幅は10〜20mg程度の少なさです。

これなら血糖値を下げるホルモンであるインスリン(*)の追加分泌はほとんど必要ありません。

 

農耕が開始された後は、穀物を日常的に摂取します。食後血糖値は30〜40mgほどの幅で上昇したと考えられます。

精製した穀物が普及するようになってからは、食後血糖値の上昇幅はさらに増えて60mgくらいになりました。

 

 

農耕開始が人類の血糖値に与えた変化などについて考察します。

インスリン:人体で唯一血糖値を下げるホルモン。

膵臓(すいぞう)のβ細胞でつくられ分泌される。

24時間、持続的に少量出ている基礎分泌と、血糖値が上昇した時にその10〜20倍の量がでる追加分泌がある。

インスリンが追加分泌されると、筋肉細胞が血糖を取り込むが、余った血糖が中性脂肪に変わるので、インスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれる。

 

これまでの定説では、約1万年前ごろ、中東で麦を栽培する原初の農耕が始まったとされてきました。

しかし現在では、世界のいくつかの地域に農耕の発祥地を想定するのが一般的になってきています。

例えば、穀物は麦だけではありません。

中国・長江中流域では近年、約1万年以上前に稲が栽培されていた可能性が高いことを示す証拠が相次いで発見されています。

また、茎や根から増やす根栽農耕は、1万年以上前には東南アジアで始まっていたとする説もあります。

考古学の発展や遺伝子解析によって、新たな研究成果が発表され続けています。

 

世界最古の農耕作物は麦ではなかった

中国・長江中流域では、最古の土器を作った人々が住んだとされる江西省・仙人洞遺跡などの洞穴遺跡から、1万5000〜1万4000年前までさかのぼる稲の痕跡が発見されています。

また、湖南省・玉蟾岩(ぎょくせんがん)遺跡では、約1万2000年前の稲もみが出土。

分析の結果、世界最古の栽培稲と推定されています。

稲作の起源が麦作と同じか、さらに古い時代にまでさかのぼる可能性が出てきたのです。

 

また今年7月には、農業生物資源研究所(茨城県)や岡山大学のチームが、人類最古の麦の栽培は、約1万年前の中東で、実が落ちない突然変異のオオムギが現れて始まったとする遺伝子解析の結果を米科学誌セルに発表しました。

野生種は実が成熟すると落ちてしまいますが、栽培用のオオムギは実が落ちずに収穫できます。

中東の遺跡には約2万3000年以上前に野生種を集めて食べた跡があり、約1万年前の遺跡からは炭化した栽培種の種子が見つかっています。

 

このように、農耕がいつどのように始まったかには諸説ありますが、世界的に広がり定着し始めたのは、四大文明の登場から推察すると、5000年前くらいなのではないかと思います。

 

700万年間で形成された遺伝子

チンパンジーとの共通の祖先から分かれ、二本足で立ったのが700万年前ごろと考えられているということです。

その後、アウストラロピテクスなどの猿人、ジャワ原人や北京原人などの原人などが栄枯盛衰を繰り返し、結局約20万年前に東アフリカで誕生したといわれる現生人類のホモ・サピエンスだけが現存しているわけです。

 

ここで大切なこと、そして本質的なことは、人類は進化に要した700万年という長大な時間の大部分では、「狩猟」「採集」「漁労」の三つのなりわいで食べ物を手に入れていたということです。

つまり、700万年間のうち農耕が始まった約1万年前より以前は、前回も述べたように“人類みな糖質制限食”でした。

 

従って、現生人類の行動や生理、代謝を決める遺伝子は、「狩猟」「採集」「漁労」の生活条件に適応するようにプログラムされていると考えるのが自然です。

「狩猟・採集・漁労 対 農耕」=「700万年間 対 1万年間」ですから、どちらの影響が大きいかは勝負にならないでしょう。

人体は、本来穀物に依存して生きるような遺伝的システムは、持っていないと言えます。

このことは、糖質制限食の理論的根拠として、大きなアドバンテージですね。

 

農耕開始で毎日数倍〜10倍以上働かせるようになったもの

さて農耕が定着し、小麦や米の糖質を取るようになると、血糖値が急激に上昇するようになりました。

繰り返し述べてきたように、3大栄養素の炭水化物(糖質+食物繊維)・脂質・たんぱく質の中で、直接血糖値を上昇させるのは糖質だけです。

人類は、狩猟民から農耕民になったとき、単位面積あたりで養える人口が数十倍にも飛躍的に増加したと言われています。

しかし、農耕を開始して日常的に穀物(糖質)を摂取するようになると、食後血糖値の上昇幅は、それまでの10〜20mg /dLから、30〜40mg /dLほどの幅で上昇するようになったと推測されます。

 

それまで、インスリンは基礎分泌は常に必要ですが、追加分泌は時々少量で足りていました。

しかし農耕開始以後は、かなり量のインスリンの追加分泌が必要となり、基礎分泌の数倍〜10倍以上の量となりました。

つまり、人類は農耕開始以後の約1万年間、血糖値を下げるインスリンをつくる膵臓(すいぞう)のβ細胞を、それ以前に比べて毎日数倍〜10倍以上働かせ続けなくてはならなくなり、これは、まるで原罪を背負ったようなものなのです。

 

精製炭水化物の登場で起きた大変化

原初の組織的農耕が始まったのは約1万年前とお伝えしました。

それは人類の食生活において大きな変化だったわけですが、その後、もう一度大変化が起こります。

18世紀にイギリスで産業革命が起こり、蒸気機関が発明されると、大規模な製粉工場が登場しました。

19世紀には、現在使われているロール製粉機も生まれ、ますます穀物の精製技術は進化しました。

日本の場合はというと、江戸時代中期ごろから、庶民にも白米の習慣が定着していきました。

 

すなわち、世界で精製された炭水化物が取られるようになったのは、ここ200〜300年のことです。

現代では、世界中の多くの国で、主食は白いパンか白米などの精製された穀物です。

精製された炭水化物は、未精製のものに比べて、さらに急激に血糖値を上昇させます。精製された炭水化物を食べると、空腹時血糖値が100mg/dLとして、食後血糖値は160〜170mg/dLまで上昇します。

血糖値上昇の幅は60〜70mg/dLもあります。これほど急激に血糖値を上昇させる食品は、700万年の人類史上、類をみないものでした。

 

ジャンクフードの普及が拍車をかけた

精製された炭水化物を取った場合、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの追加分泌は、基礎分泌の10〜30倍となり、前回説明した未精製の炭水化物を取った時の数倍〜10倍と比べて、もう一段階増えることになりました。

また、近年のジャンクフードの普及で、さらにインスリンの過剰分泌が生じているのが現状です。

 

ジャンクフードとは、エネルギー(カロリー)は高いが、他の栄養素であるビタミンやミネラルや食物繊維があまり含まれない食品のことです。

ハンバーガーやドーナツなどのファストフード、ポテトチップスなどのスナック菓子の多くがこれに該当します。

砂糖が大量に添加された清涼飲料水も、典型的なジャンクフードです。

 

とうとう糖尿病やメタボを発症

こうしてインスリンを大量に分泌し続けて40〜50年たつと、膵臓(すいぞう)が疲弊して分泌が不足するようになります。

これが糖尿病です。

一方、インスリン分泌能力が高い人は、インスリンを出し続けたせいで、メタボリックシンドロームになる人もいます。

インスリンが追加分泌されると、筋肉細胞が血糖を取り込みますが、余った血糖が中性脂肪に変わるので、インスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれていることは連載の第6回でお伝えしました。

 

人体にはホメオスタシス(恒常性)というものがあり、できるだけ変化が少なく体内を一定の状態に保とうとします。

食後血糖値の変化をみたとき、「人類みな糖質制限食」だった農耕が始まる前であれば恒常性が保たれ、玄米や全粒粉のパンだとボチボチで、白米や白パンだとかなり乱れることがわかります。

 

人類の食前食後の血糖値の恒常性は農耕が始まるまで、700万年間保たれていました。しかしその変動幅は、農耕開始後1万年間で2倍ほどに、精製炭水化物の摂取が始まったここ200〜300年間で3倍ほどとなり、インスリンを大量、頻回に分泌せざるを得なくなったのです。

 

「ブドウ糖ミニスパイク」が生活習慣病のもと

糖尿病の人が糖質を取ると、未精製の炭水化物でさえも、食後血糖値は軽く200mg/dLを超えてきます。

この急激な食後高血糖のことを「ブドウ糖スパイク」とよび、糖尿病の人に動脈硬化や合併症が生じる元凶となります。

また、精製炭水化物を摂取した時に、血糖コントロールが正常な人でも生じる食後血糖値が160〜170mg/dLという高い状態を、私は「ブドウ糖ミニスパイク」と名付けました。

このブドウ糖ミニスパイクが、生体の恒常性をかく乱して、将来の生活習慣病のもとになると考えています。

 

血糖コントロールが正常な人でも「ブドウ糖ミニスパイク」が起きる

過去世界中にいろいろな食事療法がありましたが、経験的に有効とされているものは、玄米菜食など基本的にブドウ糖ミニスパイクが少ないという一点で一致しています。

私は現在、世界中にあふれる生活習慣病の元凶は、精製炭水化物やジャンクフードによるブドウ糖ミニスパイクと、インスリン過剰分泌と考えています。

 








          たきがみ博士の想い

 

誰でも、自分の中に伝統がある。自分が経験したすべての過去の累積、それが”いま”のわたし。

過去とは思いだすこと、現在(いま)は過去の必然、そして、未来は想い、選択すること。

いまは、変えられない。

しかし、人には明日があり、未来がある。明日は、こうありたいと想いを持つことができる。

 

すてきな明日に向かって、”これからへの想い”を具体化するJourney、しっかり楽しみたいと思います。

そして、”いま、ここ”を丁寧に活きる。

みずからの人生の軌跡を、すてきな笑顔でみつめるために。

 

旬(ときめき)亭 亭主 たきがみ博士
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