ビタミンDは「乳がん」と「大腸(結腸)がん」に対して特に薬効性があります。
近年、日本人に乳がんや大腸がんが増え続けている中、ビタミンDは予防の観点においても治療としても必須となるでしょう。
ビタミンDは抗腫瘍効果、がん細胞へのアポトーシス(=自殺死)効果、がん転移や増殖への阻害効果があります。
一般的な栄養学の教科書に記述されているビタミンDの内容を見ると、その働きや効能の内容はまさに薄っぺらといえます。
例えばその働きとしてカルシウム吸収や免疫機構ばかり書かれていますが、抗がん・抗腫瘍作用についてはほとんど書かれていません。
また、その代謝については、腎臓で活性型ビタミンDへの代謝が行われているという古い情報のままで、腎臓以外の各組織(たとえば前立腺、乳房、結腸、表皮のケラチノサイト、マクロファージなど)でも代謝されることなど全く記述されていません。
国民のさらなる意識や臨床現場への応用を考えれば、さらなる修正や追記を早急にすべきであると私は思っています。
ビタミンD(以下、VD)が充足しているかを評価するには、日々の摂取量よりも、一般に血清濃度をみます。
血中のカルシジオール25(OH)D濃度は、「日光浴で合成したVD量」と「食事から摂取したVD」の合計量と考えてよいです。
ただし、血清カルシジオール濃度は、あくまで血中の濃度であり、それ以外に蓄えられたVDの総量を示しているわけではありません。
しかし、くどいようですが、指標にはなります。
ロンドン大学・セントジョージ医学校の研究では、白人女性34~84歳の患者群179人と対照群179人の調査において、血清VD濃度と乳がんの発生率を調べたところ、VD濃度が低い群(20ng/ml以下)は高い群(60ng/ml以上)に比べて、乳がん発症のリスクが5倍以上も高かったことが報告されています。
マサチューセッツ大学公衆衛生局による大規模調査では、43歳から69歳までの女性32,826人を7年間追跡調査し、血清カルシジオール濃度(以下、VD濃度)と乳がんの関係を調べたところ、VD濃度が高い群は低い群に比べ、乳がんのリスクが有意に低下していました。
ハーバード大学医学部のコホート研究では、45歳以上の閉経前の女性10,578人において、乳がん発症率とVD摂取量の関係を10年間追跡調査で調べたところ、摂取量が548IU以上の群は、162IU未満の群に比べて乳がんリスクが35%低いことが報告されています。
ただし、閉経後女性20,909人の調査ではこのような差は認めらていません。
この解釈としては、閉経後の女性はエストロゲンやIGF-1の血中濃度が閉経前の女性と比べると圧倒的に低いため、ビタミンDによるこれらのホルモン過剰の抑制効果が得られないからです。
若い女性の方がエストロゲンやIGF-1が高いため、VD摂取(または合成)で抑制効果が顕著にあらわれるからです。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のプールド分析による研究では、血清VD濃度が高い群(平均48ng/ml)は低い群(平均6ng/ml)に比べて、乳がんの発症リスクが50%も低いことが報告されています。
この高い群の血清レベルは、ビタミンD摂取量(または合成量)の4000IU /日に相当するとしています。
ちなみに、血清VD濃度52ng/mlは「2000IU /日の摂取」+「約12分/日の日光浴」で維持されるとし、経口摂取のみであれば3000IUのビタミンDに相当するとしています。
ちなみに、これは、今まで私が何度も参照&引用してきた、ゴーハム博士とガーランド博士による報告です。
そして、これらとは反対に、VD摂取と乳がん発症に相関関係はないとされる報告もいくつかあります。
しかし、このほとんどが、VD摂取量が約400IU/日という低い量によるものです。
たとえサプリメントでもこのような低い量では、仮にカルシウム調整機構や免疫機構が正常になっても、到底、抗がん作用は発揮しないということを覚えておいてほしいと思います。
ビタミンDの日常的な摂取(または合成)は、特に若い女性には必須であり、乳がんや結腸がんに対して特異的に予防効果があります。
たとえ短時間でも日光を浴びることは大事で(窓越しはあまり意味ない)、網膜が光刺激を受けることにより生体時計がリセットし、概日リズムに同調しつつ、松果体は夜間メラトニン合成します。
このメラトニンは睡眠効果だけでなく、最近では抗がん作用があることも指摘されています。
このように松果体は時間情報を液性情報に変換する素晴らしい装置で、メラトニンは奇跡のホルモンと呼ばれるくらい非常に重要です。
自然界に同調した生活はすべてに意味があり、生体の健全化をはかります。
木陰でもビタミンD合成できます
ビタミンDが特に現代人に重要な栄養素(ホルモン)であることは、今まで何度も言い続けました。
ビタミンDは体内のカルシウム調整以外に、免疫の正常化、粘膜接合の正常化、そして抗がん作用などに効果があります。
体内のビタミンDは約1~2割が食事性で、残りの約8~9割が紫外線曝露による合成です。
そのため、私は「短時間でもいいから日光浴しましょう」と書いてきました。
しかし、一つ疑問がありました。
それは、現代でも昔ながらの伝統社会を続けている、いわゆる先住民族8民族(ハッザ族、マサイ族、ダドガ族、モンゴル遊牧民、ダニ族、モニ族、ヤリ族、センタニ族)を私は見て回りましたが、彼らは共通して、積極的に陽ざしを浴びることはしていなかったことです。
日中は、むしろ、木陰のようなところに入り、陽ざしはできるだけ避けていました。
とはいえ、彼らは生活や家事の中で、どうしても外に出ることがあるので、現代人よりは日光浴をしていることにはなるのですが、実は最近の研究では「木陰」でもビタミンDを合成するのに十分な紫外線が届くことがわかっています。
紫外線はUV-A、UV-B、UV-Cに分かれますが、ビタミンD合成に必要な紫外線はUV-Bになります。
UV-Bのうちドルノ線と呼ばれる波長のものが、私たちの皮膚にある7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD)と反応することでビタミンDを合成します。
しかし、近年のオゾン層破壊は深刻で、地表に届くUV-B量は圧倒的に多くなってしまいました。
よって、まともに長時間浴びてしまうと、しみ、しわの原因になってしまうため、多くの現代人が紫外線を避ける方向に向かってしまったのです。
その結果、極端な紫外線回避が流行し、多くの人がビタミンD欠乏を招いてしまったといえるでしょう。
オーストラリアのサザンクイーンズランド大学の報告では、樹木の陰の紫外線量は、まともに太陽に向かって直射日光を受けた場合の約52%の紫外線量が届くとしています。
このように、直射日光を避けるため木陰にいても、日なたにいた場合に受ける紫外線の約半分は得られるということになりますので、ビタミンDを合成するのに十分な量を受けることができます。
以上をまとめると、ビタミンD合成を意識するのなら、木陰で30分間~2時間ほどくつろぐのがいいのではと思います。
しかし、それでも日光に当たりたくない人は、用量をしっかり守るならばビタミンD3サプリメントを利用するのもいいでしょう。
その場合は、定期的に血中濃度の検査をして、過剰になっていないかも確認してみてください。脂溶性のため十分な注意が必要なのです。
ちなみに、窓越しの日光浴はUV-Bは通り抜けできませんので、ビタミンD合成できません。
ただの日焼けで終わってしまいますので、注意しましょう。