インスリン抵抗性の改善にはミネラル摂取が重要となります。インスリンを正常に働かせるミネラルは、主に亜鉛、マグネシウム、鉄といえます。
逆に言えば、これらが欠乏しているとインスリン抵抗性を招く可能性が高いのです。
・鉄
インスリン分泌に鉄が絡んでいることは、実はあまり知られていません。
REV-ERB-αという細胞核内の受容体が、すい臓のβ細胞によるインスリン分泌に関わっており、ヘム(=鉄タンパク)がこのREV-ERB-αに結合した時にインスリン分泌が促進されます。
実際に、ヘム欠乏により糖代謝異常をもたらす報告がいくつかあります。
・亜鉛
亜鉛はすい臓に豊富に存在します。
インスリンはすい臓のβ細胞でつくられますが、亜鉛はすい臓のβ細胞のインスリン分泌顆粒内に濃縮されています。
亜鉛はインスリンの結晶構造の形成に必須であり、動物実験において亜鉛欠乏では血糖値コントロールができなくなり、糖尿病と同じ症状になります。
臨床でも亜鉛の投与によるインスリン改善は多々報告されています。
・マグネシウム
インスリン感受性細胞の細胞膜の表面にはインスリン受容体があります。
基本的にインスリンがインスリン受容体に結び付くことで正常なブドウ糖代謝(細胞への取り込み)ができます。
血液中のインスリンがインスリン感受性細胞の細胞膜にある受容体のα-サブユニット部に結合します。
この結合の時にはマグネシウム(Mg2+)が必要となります。
α-サブユニットにインスリンが結合できた場合、次はβ-サブユニットのタンパク質がリン酸化され、受容体が活性化されます。
このリン酸化にはマグネシウムが必要となります。
インスリン受容体の活性化に成功した場合、次は細胞内でインスリンの情報伝達が行われ、GLUT4という糖輸送体が細胞膜の表面に移動します。
この糖輸送体の移動にもやはりマグネシウムが必要となります。
糖輸送体が細胞膜表面に移動することができた場合、いよいよ血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込みます。
そして、取り込まれたブドウ糖は解糖系とTCA回路で代謝されていきますが、解糖系でグルコース6リン酸に変化しATPが合成されるには必ずマグネシウムが必要です。
最終的にピルビン酸までに代謝されるにはやはりマグネシウムが必須です。
ピルビン酸がミトコンドリアのマトリックス内に移動しTCA回路をまわしてATPを産生させるのにもやはりマグネシウムがないとできません。
臨床でもマグネシウムの投与によるインスリン改善は多々報告されています。
・クロム
クロムはインスリンが正常に作用するのを助けますが、実は裸のクロムでは効果がないという報告があります。
発揮するのは、GTF(耐糖因子)と呼ばれる、クロムがいくつかのアミノ酸やナイアシンに結合した分子構造のときです。
裸のクロムでは吸収率が低すぎるため効果がありません。
ただし、クロムの体内量が低いのはどちらかというと欧米人であり、日本人のクロム欠乏によるインスリン抵抗性は珍しいといえるでしょう。
以上のように、インスリンミネラルといえば、主に亜鉛、マグネシウム、鉄になります。
これらがきちんと細胞内にあることでインスリンは正常に分泌され作用するのです。
(ただし、インスリン抵抗性の原因としてはこれ以外にも当然あります。)