シベリア、満州(中国東北部)、北ヨーロッパなどには、野生のごぼうがあるそうだが、栽培はされておらず、食べる習慣はまったくない。
中国では昔は食べたこともあるらしいが、現在では食べていない。
というわけで、世界広しといえども、ごぼうを食するのは日本だけなのだ。
それも、かなりの執着を持って食べられている。
蛋白偏重の現代栄養学の尺度によって、多くの食品がハネられ冷遇されている今日だが、「主成分のイヌリンは栄養価値がない。ミネラル、ビタミンにも見るべきものはない」などといわれながらも、ごぼうは健全なのである。
香りと歯ごたえが日本人好みであること以上に、生理的に不可欠の要素を持っているせいであろう。
ごぼうの繊維は腸壁を刺激して、消化物の移動をスムーズにする。
穀物中心食であるわれわれ日本人の体には栄養成分の吸収効率を高める上でも、老廃物の排泄を促すためにも繊維分を十分にとらなければならないのだ。
とくに便秘気味の人にとっては、ごぼうの価値は大きい。
ごぼうには鉄分が多いから、貧血の防止に役立つ。
もっとも、最近めだって増えている貧血症は、ほとんどが高蛋白性の貧血である。
だから鉄分の補給だけではダメで、体蛋白から赤血球をつくる機能を改善しなければならない。
ごぼうの持つ酵素成分はすぐれて整腸作用を持っていて、造血力の回復にも威力をあらわすから、その点でも好都合である。
この酵素成分による整腸作用は、カゼにも卓効をあらわす。
ごぼうをすりおろして熱湯を加え、はちみつで適当に甘味をつけたものを飲むのである。
すりおろし汁のカスを除いてストレートで飲めば、酵素が腸内の異常発酵を抑え、腸壁細胞を鎮静させるので、ひどい腹痛もケロリと治ってしまう。
また、すぐれた保温作用を持っているのも、ごぼうの特性の一つ。
ごぼうは土の中で育つ根菜である上に、寒地原産の植物であるため、耐寒作用が強く、体を温める効果を表す。
このため、ごぼうの常食は冷え性、神経症、肩こり、低血圧などにすばらしい効果を発揮する。
生理不順の人は、ごぼうを細かく刻んでガーゼの袋にいれ、それを1週間ほど浸した日本酒を、毎日盃一杯ずつ飲むとよい。
ごぼうは皮後と用いることが薬効の決め手だ。
最近は、きれいに洗ってほとんど皮がなくなってしまっているものや、キンピラ用にきざんで水にさらしたものが売られているけれど、これでは本当においしいごぼうは食べられない。味はともかくとして、薬効はほとんど期待できない。
なるべく泥つきのものを買って、表皮をいためないようにタワシで泥を落として使うようにしたい。
■きんぴら
材料(4人分)
・ごぼう・・・70g
・れんこん・・・40g
・にんじん・・・40g
・ごま油・・・大さじ2
・しょう油・・・大さじ2
・だし汁・・・大さじ3
・白炒りごま・・・少々
<作り方>
①ごぼう、にんじんは細切り、れんこんは薄いいちょう切りにします。
②鍋をよく熱し、ごま油を入れ、ごぼうを炒めてから、れんこん、にんじんと順次炒めます。
③だし汁を加えてフタをし、しばらく煮て火が通ったらしょう油で調味します。
汁気がなくなるまで炒めつけ、器に盛ってからごまをふりかけます。
■ごぼうの丸煮
(材料)
・ごぼう・・・1本
・ごま油・・・大さじ2杯
・しょう油・・・大さじ4杯
・だし汁・・・1カップ
・白ごま・・・少々
・こんぶ
<作り方>
①ごぼうを洗い、長さ10cmに切ります。
②油で1を炒め、昆布を敷いてだし汁を入れ、よく煮てしょう油で調味し、汁気がなくなるまで煮ます。
③長さを揃えて4つぐらいに切り、切り口にごまをふります。
若返り効果にがん予防にも
「ごぼうの2大成分はサポニンとイヌリンです。
サポニンとは、皮に含まれているアンチエイジングの特効薬で、ポリフェノールの一種。アクと思われているものこそが、サポニンの正体なのです。またイヌリンは水溶性の食物繊維。
整腸作用があり、体内の余分な水分を吸収し、排出する作用があります」
そう熱くごぼうの効用を語るのは、乳がん専門医でありながら若返り健康法でも有名な南雲吉則先生(61)。
秋の食卓に欠かせない、名脇役のごぼう。だが、その効用は超主役クラスだという。特にサポニンの効用は、列挙しきれないほど素晴らしい。
「サポニンには強力な抗酸化作用があるので、老化の原因である活性酸素を除去してくれます。
衰えた肌の修復力を高めて肌を若返らせ、肌荒れやシミの改善、皮脂の過剰分泌抑制、毛穴の縮小など、その美肌効果は絶大です」(南雲先生)
血管の健康にも一役買う。
毛管の酸化を防止して血管内のコレステロールを分解除去したり、創傷治癒効果で傷を改善したりするため、脳卒中や心臓病の予防効果もある。
「サポニンのもっともうれしい効能の1つに、がん予防があります。
がんの原因は粘膜にできた慢性の傷や炎症なので、がんになる前にサポニンを継続的に取り、傷を修復することが予防につながります。
ほかにも、アトピーやじんましん、花粉症などのアレルギーの改善も期待でき、防菌防虫作用が免疫力アップを促し、風邪予防にもつながる。
本当にすぐれた成分なんです」
ごぼうは古来、漢方薬として使われており、朝鮮人参に並ぶ万能薬ともいわれるほど栄養価が高い。
ほかにもサポニンの効用を上げると……創傷治癒作用による動脈硬化の改善、高血圧の改善。血小板の働きが抑えられて血のめぐりがよくなるため、冷え性改善、血液サラサラ効果、滋養強壮作用。
さらに、体臭、口臭の抑制作用もある。