時折、「がんは治る」というような文言を目にしますが、(私にとって)とても疑問に残る言葉です。
がん大国となってしまった現代の日本に対して、とても心強い言葉かもしれません。藁をもすがる人に対しては本当に希望の光となる言葉でしょう。
しかし、実際には、がんを患ってしまった多くの人が、どれほど苦しみ、どれほど完治できていないのかを無視した、残酷的な言葉にさえにも見えるときが私にはあります。
たとえどんな先進医療であっても、どんなもっともらしい理論の代替医療であっても、がんはそんなに簡単には治りません。
仮に完治した人がいてもそれはまだまだわずかであり、多くの人が苦しめられている現状です。
がんの発生やがんの進行の仕組みはとても複雑で、決してシンプルではなく、一筋縄で語れるほどのものではありません。
ところが、無責任にも「がんは治る」という言葉がある以上、私たちは根本原因を追究せずに、「治る可能性があるのなら、がんになったときに考えればよい」という思考に誘導しかねません。
一方で、がんは予防できる(可能性の高い)もの、だと私は思っています。
そこには、食事内容、栄養、生活習慣、ストレス、運動、汚染曝露の回避など、これらを正すことで、がんの発症確率が大きく低下することは、いろいろな研究や報告でわかっていることです。
仮にそれでもがん発症や慢性疾患を患ったとしても、若年性や中年期発症でなく、死期間近の超老年期であれば、それは人生を健全に全うしたといえるのではないでしょうか。
もちろん、誤解のないように言いますが、生活習慣を振り返っても理由の全く分からない、先天性で難治性のがんの人も多くいます。
そういう方にとっては、当然「がんは治る」という言葉を信じていくことは大事です。
そして、栄養改善や治療食をやっていきながら、できるだけ安全で副作用の少ない治療を長い目で続けていくことがポイントになるでしょう(一概には言えません、時には大胆な治療も必要でしょう)。
ここで私が言いたかったことは、個人の不摂生やストレスによる生活習慣に寄与するものです。
つまり、明らかに原因とされることが思い当たるパターンを言っています。
にもかかわらず、予防は検診から、早期発見・早期治療が大切、がんは治るもの、など、現代の日本は見事に本質からずれた方向にむかっているようで思えて仕方がないのです。
もちろん、検診や早期発見早期治療を完全に否定しているわけではありません。
それよりも、日頃からの予防を重視し、国の指導に頼らず各個人や各家族が勉強して実践していくことの方が圧倒的に重要です。
一人でも多くの人が予防を続けながら、健全に最後まで生きていくことを切に願います。
それだけ、身近なところで悲劇が繰り返されてることはみなさんも肌で感じているのではないかと思います。
長年の不摂生はやがて大きな病に繋がります。
検診で見つかった時は、たいてい治療困難の状態です。
例えそれが完治しても、そのあとも同じ生活を継続していては、今度は違う病気になるだけの話です。
そうなると、誰も救えませんし、先進医療や代替医療を施しても、すんなりとはいかないはずです。
検診や早期発見は予防ではないのです。
がんは治すものではなく、予防するものです。