人の一生は、人格の形成と資産の形成をしていくプロセスであるとも言える。
簡単な代数式でこの人間力と資産の関係について考えてみたい。
yは人生の財産で、金銭的な財産だけではなく心の豊かさという精神的な財産も含むものとする。
aは、人事でいうところのコンピテンシーで、その人の持つ能力とし、 xを自己の確立とすると、
axはフローの資産であり、 bはストックの資産である。
会社で仕事の実績を上げるためには、
自分のコンピテンシーを認識し、
責任持って仕事を遂行するための自己を確立することが不可決である。
その両方を掛け合わせて、しっかりと仕事の成果を出していけば昇進、昇格、昇給してフローの財産を形成することができるだろう。
しかし、退職後の平均20年以上の長寿の人生を、精神的且つ物質的に豊かに生きていくためには、(ax)というフローの資産に加えて、ストックの資産(b)を形成することが大変重要になってくる。
先輩から「若いうちから金をためるようなことを考えていてはダメだ、
40歳くらいまでは、金のことなど忘れて仕事に打ちこめ」といわれたものだ。
仕事の基礎を作るという意味においては、確かにそのとおりであるが、
年功序列から成果主義に変貌している今日の賃金体系においては、従来のように40歳前後で管理職になるころから年功に応じて急速に賃金が上昇するということは最早起こらないし、
退職金も年数よりは仕事の成果にリンクしたものになってきている。
したがって、
30数年勤務したからといって数千万円の退職金が保証されているわけではなくなってきている。
その間、フローの資産からの余剰金を銀行の0.2%の普通預金に預けるだけでは、
80年以上の人生を豊かに過ごすためのストック資産を形成することは、現実にはきわめて困難である。
すなわち、
フローの資産をストックの資産形成につなげるためには、「投資」という積極的な行動が必要だということである。
しかしながら、
会社の仕事に夢中になっているビジネスマンも、こと自分の資産形成や投資ということになるとまったく無頓着であったり、
投資に関しての知識がほとんどないに等しい、あるいはどうせ安月給だから投資など考えても意味がないと、決めつけている人が多いのではないだろうか。
短期のマネーゲームや株式投資でストックの資産を形成することは難しいし、なによりも会社の忙しい仕事をしながらそんなことをしている暇はない。
やはり若い人は、なによりも豊かに持っている“時間というファクター”を利用して、着実な長期投資を考えるべきであろう。
何がベストの長期投資であるかは、専門家から学ぶことが重要である。
知識なく投資すれば火傷をするが、投資は怖いといってひたすら銀行の普通預金に預けるのでは、年寄りの箪笥預金を笑えない。
ビジネスマンなのだから、
自分の一生の資産形成をするうえで、フローの損益計算書とストックのバランスシートの両方の観点から考えることが必要だ。
「月10万円で暮らせる田舎へのIターン」や、「生活コストの安い海外への移住」などフローのコスト削減のため、老後にライフスタイルを変えるのはひとつの方法ではある。
すなわち、y(財産)が少なくても、x(人間力)を大きくして、心豊かに生きていくのも賢明な選択肢かもしれない。
しかし、
「恒産なければ恒心なし」ということも人生の真実であることを考えると、
デイトレーダーのような超短期の一儲けを夢見るのではなく、
賢明な投資に関する知識を身につけて、会社におけるフローの資産(ax)に加えて、
若い頃からの長期の投資行動によるストック資産(b)を、バランスよく増やしていく努力をするべきであろう。
y=ax+bは、
人生のいろんな局面で両立させることの難しい連立方程式で、その解もひとつではありえないが、
自分の生き様をあらわす指標になるので無関心ではいられない。
特に、
歴史上最速のスピードで少子高齢化が進行しつある日本にあっては、今後ますます重要な課題になっていくであろう。
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