人間の体は、およそ10万種類の「タンパク質」からできています。「タンパク質」は、私たちの体の中で日々、いろんな働きを営んでくれています。
血液が酸素を運んでくれるのも、病原菌と戦って風邪を直してくれるのも、また、食べたご飯を栄養にかえてくれるのも、みんな、みんな「タンパク質」のおかげなのです。
その「タンパク質」が「糖化」してできた最終生成物が「AGE」です。イメージとしては、砂糖まみれのお菓子を想像していただければいいかと思います。
正常な「タンパク質」の表面にベタベタと「糖」がごびりついて、本来の「タンパク質」とは似ても似つかない、働きの劣化した「タンパク質」の成れの果てが「AGE」というわけです。
「タンパク質」は、血管にも、脳にも、筋肉にも、皮膚にも、髪の毛にも、骨にも、その他、いろいろな臓器に存在しています。
それらがいっせいに「糖化」すると……体の至るところで「AGE」ができてきて、いろいろな臓器障害がおこってきます。
たとえば、皮膚を例にとってみましょう。そもそも皮膚は、コラーゲンや肌にプリプリ感を与える弾性繊維などの「タンパク質」からできています。
そして、これらの「タンパク質」によって、弾力性やハリが生み出されています。
しかし、これらが「糖化」を受け、「AGE」化してしまうと、その影響により、しなやかさがなくなり、硬くなってきてしまいます。
結果として、肌のハリや弾力性が失われ、シワやたるみがでてくるのです。
また、「タンパク質」が「糖化」すると、色はどう変わるでしょう。
ホットケーキを思い出してみてください。そう、肌は「糖化」によって、黄、茶色化しますよね。そのため、「黄ぐすみ」という老化現象もおこってきてしまいます。
髪の毛でも、似たようなことが起こりえます。髪の毛は、ほとんどがケラチンという「タンパク質」でできています。
これが「糖化」し、「AGE」化すると、強度が低下し、髪のコシが失われ、もろく傷みやすい髪質になってしまいます。また、キューティクルを含む「タンパク質」の透明度も低下するため、ツヤも失われてしまいます。
体内の老化は、健康寿命や病気による死亡リスクにも影響
さらに、体に張り巡らされている血管も「タンパク質」で作られています。
血管の「タンパク質」が「AGE」化すると、どうなってしまうのでしょうか。 血管が厚く硬くなり、「動脈硬化」がおきてきます。
「動脈硬化」が進み、血液の流れが悪くなり、脳の血管が詰まってしまうと「脳梗塞」、心臓の血管が詰まってしまうと「心筋梗塞」がおきてきます。
つまり、「AGE」は、体の内外の老化をひきおこす原因物質の一つなのです。
では、高血糖状態が続く糖尿病では、「AGE」はどうなるのでしょうか。
そうです!糖尿病の人では、「AGE」が大量に作られ、蓄積されてしまうのです。
糖尿病は、血糖値を下げる作用のあるインスリンの働きが悪くなり、高血糖になる病気です。
糖尿病では、食べた物を糖として体の中に取り込むことができなくなりますから、結果として、エネルギーとして使われずに余った糖が全身の「タンパク質」にベタベタとくっついていって、「AGE」が大量に作りだされてしまいます。
実際、糖尿病の人は、そうではない人に比べて、見た目だけでなく、体内の老化も早く進んでしまうようです。
平均すると、寿命は、男性で10年、女性で15年短く、自立して過ごせる健康寿命は男女とも15年短いとされ、死亡リスクは糖尿病でない方の約2倍です。
白内障や歯周病、アルツハイマー病にかかる危険性が高く、血管がもろいので、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクも3倍と高くなります。
さらに、最近、血糖値が高い状態が長く続いた糖尿病患者さんほど、がんにかかりやすく、がんで死亡する危険性も高いというショッキングなデータも報告されました。
また、糖尿病が原因で失明したり、透析になったり、足を切断しなければならなかったりする血管の合併症も全て「AGE」の仕業だとされています。
「AGE」が大量に蓄積されてくる血糖コントロールの悪い糖尿病では、老化のスピードが早まっていることがお分かり頂けたと思います。
昔は「風邪は万病のもと」とも言われましたが、今では「糖尿病は万病のもと」と言ったほうが良さそうにも思えますね。
だったら、糖尿病じゃない人は「AGE」を気にしなくても大丈夫なのでしょうか。当然、違います!
「AGE」の量は、血糖値×時間で決まるのでしたよね。
そして、ヒトは、生きていくために糖をエネルギーとして使っています。つまり、もともと我々人間は、「AGE」の蓄積を0にはできない生き物なのです。
さらに、日々の食事の度ごとに、血糖値はわずかながら上がります。
血糖値が上がっている時間帯はそれほど長くはないでしょうが、1日3度、1年365日これが繰り返されることで、「AGE」の蓄積が進みます。
さらに、「AGE」は、体内で毎日、少しずつ作られているだけではなく、「AGE」を含む食品を摂取することで、口から体内に取り込まれてしまいます。
ですから、万人にとって「AGE」対策が必要なわけです。
老いを緩やかにしていく上で、「AGE」を意識しながら日々の生活を送っていくことが肝心なのです。
アメリカの国立老化研究所では、多数のボランティアの身体機能や各種マーカーを長年に渡って計測、解析することで、人間の加齢による変化や老化に関わる因子を研究しています。これら一連の研究は、研究所の所在地にちなんでボルチモア加齢縦断研究と呼ばれています。
これまでに行われたいくつかのボルチモア加齢縦断研究の結果から、「AGE」が老化現象と関連しうることが示めされています。
約450〜750名を対象としたボルチモア加齢縦断研究では、血液検査時の「AGE」の値が高いヒトほど、貧血があり、腎臓の働きが悪く、動脈硬化が進んでいることが報告されています。
また、イタリアトスカーナ地区の住民約1000名を対象に行われた研究報告では、「AGE」が溜まっているヒトほど、歩くスピードが遅く、6年後の死亡率がと高くなることが明らかにされていています。
さらにボルチモア居住の高齢女性を対象にした研究によれば、「AGE」の値が高いヒトほど、握力が低下しており、将来心臓病で死亡しやすいことも示されています。
さらに最近になり、母体の「AGE」が胎児に移行することが明らかになりました。
胎児は、胎盤を通して母体から栄養を受け取っています。実は、この胎盤を通じて母体の「AGE」も胎児へ移行してしまうのです!
つまり、「AGE」値が高いお母さんから生まれてきた赤ちゃんほど、生後0日目にして「AGE」値が高いと言う事実が示されました。
さらに、そういう赤ちゃんほど、生後一年でメタボの徴候を示唆する検査値異常が認められるようです。
一歳の赤ちゃんだというのに、なんということでしょうか!
妊娠されているお母さん方はご自身の体のことだけではなく、生まれてくる赤ちゃんの健康のためにも是非、「AGE」に気を配って頂きたいものだと思います。
また、人工的に加熱して作られている粉ミルクのほうが「AGE」を多く含んでいますので、できれば母乳で育てたいものです。
以上、「AGE」は、あらゆるところに影響を与えうると言っても過言ではありません。
「AGE」をためない生活習慣を確立することの大切さがおわかりいただけたでしょうか。
「AGE」の恐さを知らない娘さんに対して、おばあちゃん、おじいちゃんの立場からアドバイスして頂くのもいいかもしれません。そのことが、生まれてくるお孫さんのためにもなるわけですから。
*久留米大学 医学部 糖尿病性血管合併症病態・治療学講座 教授
「糖化」は「酸化」よりも老化を促進させる、と言われていますが、それを予防するために「抗糖化作用」が高い食品を紹介します。
「糖化」は「酸化」ほど有名ではありませんが、酸化と同じ、いやそれ以上に老化を進めるものだと思ってください。
糖化は、実は酸化どころじゃない怖さがあります。糖化が進んでいくと、AGEs (終末糖化産物)という、いわゆる体の老廃物が生まれます。
それが肌に溜まると、しみ・しわ・たるみに、毛髪に溜まると白髪やうす毛、関節にたまると関節痛、目にくると白内障、骨にくると骨粗しょう症、脳にくるとアルツハイマー認知症など、体のあちこちに老化を促進していきます。
糖化とは、「体内にあるたんぱく質と、食事で摂取した糖が結びつくことで、糖化したたんぱく質が作られて体内に蓄積されること」です。
糖化が進むと、肌の老化なども怖いですが、糖尿病などの病気にまで繋がるとされてます。体の内と外、どちらも老化させるのですね。
このことから、医療界では「酸化」よりも「糖化」のほうが美容と健康に大敵と言われてます。
以下の項目にどれだけ当てはまるかチェックしていって下さい。
・甘いものを間食としてよく食べる
・加工食品をよく食べる
・味付けの濃い料理が好き
・お菓子を常に側においている
・ペットボトルの清涼飲料水をよく飲む
・丼物がすき
・ご飯や麺類などの炭水化物が好き
・野菜や豆類はあまり食べない
・ついつい夜食を食べてしまう
・運動不足
・早食い傾向にある
・喫煙習慣がある
チェックが入る項目が多ければ多いほど、糖化が進んでいる可能性大です。
抗糖化ナンバー1食品とは ・・ ずばり「しょうが」でした! その糖化阻止率は、なんと93%!!
しょうがは、美肌を損なう三大要因である「酸化」・「糖化」・「炎症」のすべてを抑える作用を持ってるんです。
その上、糖尿病の合併症の予防や進展を食い止めるのに役立つと考えられています。 アンチエイジングと健康、どちらにも効果があるんですよ。
しょうがの他にも、抗酸化作用が高い、と言われる食品は、香辛料とかスパイスみたいなのが多いんですよ。
2位: シナモン (糖化阻止率 88%)砂糖依存も抑える作用あり
3位: クミン (同 86%)
4位: 緑茶 (86%) ただし自分で入れたものに限る
5位: 黒こしょう (50%) 刺激物なので、胃腸の弱い方は注意
6位: バジル (45%)
7位: リンゴ (45%) 一応糖質なので食べすぎ注意
8位: レモン (37%)
9位: ニンニク (31%)
10位:オレンジ (29%) これも食べすぎ注意
(これらのランキングとその糖化阻止率は、インド(ハイデラバード)の国立栄養研究所、Saraswat氏等による研究結果を元に紹介しています)
これらはいずれも、「AGEsが作られるのを阻止する栄養素」を含んでいます。 1度AGEsが作られてしまうと、体内に何年も残り、さらに排出が難しいので老化が進む一方になります。
これらの食品は、全体的に体を温めてくれる食品だったり、ビタミンCが豊富なものが組み合わさってる印象ですね。
それにしても、シナモンですら、野菜の中で1番抗糖化作用があるほうれん草の100倍の抗糖化作用があると言われてるのに、しょうがはそれ以上の抗糖化作用があるのですね! 生姜パワー、恐るべし・・!
日常的にできるだけAGEsを作り出さないように、甘いものや穀類を控えて、以上のような食べ物や、また「AGEsの吸収を抑える栄養素を含む」野菜などの食品を積極的に摂取しましょう☆
同窓会で数年ぶり、または数十年ぶりに再会した友人を見て、「あぁ、〇〇君も老けたなあ~昔の面影ないなあ~」と感じたり、「△△さんは、若々しくて、すてきだなあ。なんでだろう」と思ったりしたことありませんか。
または、テレビでタレントさんの年齢をテロップで見たときに「え! 同じ年?」とか、「ウソッ、年上だったんだ!信じられない!何で私と違うのだろう」と驚いた経験、ありませんか。 この違い、一体、どこからくるのでしょうか。
それには、「体を構成するタンパク質の糖化反応」、つまり、老化を促進させる悪玉物質「AGE」(エージーイー)の蓄積が深くかかわっているのです。
例えば、正常な皮膚に「AGE」がたまってくると、コラーゲンや弾性繊維が変形してハリを失い、お肌のプリプリ感がそこなわれてしまいます。
また、「AGE」は、くすみやシミの原因ともなります。つまり、「AGE」が皮膚にたまってくることで、シワやシミができたり、たるみができたりしてくるのです。
そうです!実は、この「AGE」が、老け顔の原因の一つなのです。ようするに、実年齢より「AGE」のたまりが進んでくると、老けて見えるようになるのです。
この皮膚にたまってくる「AGE」の量は、一つには、どれだけ血糖値が高い状況が長く続いたかで決まってきます。
早食い、どか食いはダメですよね。また、どれだけ「AGE」を含んだ食べ物を頻繁に口にしたか、紫外線対策をどの程度しっかりと行ってきたかでもたまってくる「AGE」の量に違いがでてきます。
揚げ物やファーストフードの類い、甘い炭酸飲料には「AGE」がたっぷりと含まれていますし、紫外線を浴びることにより皮膚で「AGE」がどんどんできてくることも報告されています。いずれも注意したいですよね。
ようは、食生活を含めたちょっとした日常での生活習慣の違いが、将来の「AGE」の蓄積量に大きな影響を及ぼし、見た目にわかるような違いとなって現れてくるわけです。
何事も日頃からの対策が、大切なわけです。転ばぬ先の杖ですね。見た目は、常に若々しくありたいし、頑張りましょう。
よくよく考えてみると、「AGE」の影響は、皮膚だけですむものなのでしょうか。
見た目がちょっとくらい老けてみられるだけなら、それは、それで十分に嫌ですけど、我慢できなくもありません。
タレントさんみたいに顔を売りにしているわけでもないですし、まあ、いいかぁ、と諦めもつきます。しかし、現実は、そんなになまやさしくありません。
「AGE」は、皮膚だけにたまってくるわけではないのです。全身にたまり、いろんな臓器の障害、老化現象に関わってくるのです。
「AGE」が血管にたまってくると、動脈が固くなり血液の流れが悪くなります。動脈硬化ですね。
進行すると心臓や脳への血液の流れがせき止められ、心筋梗塞や脳卒中がおこってきます。脳の中に「AGE」がたまってくると、神経細胞が次から次へと死んでいき、認知症、つまり、アルツハイマー病にかかりやすくなります。
骨にたまった「AGE」は、骨をもろくスカスカにしますし、最近では、「AGE」がガンの増殖や転移をひきおこすことまでわかってきています。
「AGE」、恐るべしですね。
つまり、老け顔の人は、体の中にも「AGE」がかなりたまっている可能性があり、体の中の老化も同時に進んでしまっている可能性があるということになります。
見た目が老けている人は、体内も老化しているし、体内の老化が進んでいる人は、見た目も老けてみえる!ああ、実に、いやな話です。
6人の同じ年の女性に集まってもらい、身体年齢を体の柔軟性と血管のしなやかさの2つの項目で検査しましたが、見た目が老けて見える人ほど、体の柔軟性が低下していて、血管年齢が高く、心筋梗塞などの危険性が高いことがわかりました。
さらに最近、衝撃の事実が明らかにされました。その事実とは、なんと、「老け顔は早死にする!」。
南デンマーク大学のクリステンセン教授らは、2001年1月時点で生存していた1,826人の双子(70歳以上)をサンプルに選び、その写真を20人の看護師、10人の若い男性、11人の中年の女性たちに見せました。そして、写真の人物が何歳に「見える」か、年齢を推測するように依頼しました。
そして、この質問のアンケート結果と、2008年の双子の生存状況との関連性について調べたのです。
双子を取り上げたのは、老化に関わる遺伝子を同様に持っていることから、環境の違いにより生じた見た目の変化が、寿命の違いに結びつくかどうかを知るためでした。
調査の結果、7年後の2008年には、全体の37%に当たる675人が亡くなっていました。
そして、その多くは2001年の年齢推測の際に、実年齢より老けて見られた双子の方だったのです。なんと! 老けてみられた人の7年後の死亡率は、そうではない人の1.9倍も高いことがこの研究で判明しました。
さらに、昨年発表された別の研究では、髪の毛の生え際の後退やザビエル禿など見た目の老化の兆候が沢山ある人ほど、将来、心筋梗塞をおこしやすいこともわかってきています。外見が老けて「見える」人は、中身も老けている。身体の中に老化物質「AGE」がたまると、体の内側も外側も老けてしまうんですね。
「AGE」の摂取量と老化現象や寿命との関連
「AGE」を多く含んだ食べ物を頻繁に摂っていると、「AGE」が体の中に吸収されてたまってくることをお話しいたしました。
では、「AGE」の摂取量と老化現象や寿命との間には関連があるのでしょうか?― どうやら、サルの研究では関連がありそうです!
「腹八分目に医者いらず」ということわざがあります。暴飲暴食を戒めて、満腹になるまで食べずに八分目くらいで抑えておくのが健康にはいいということですが、これを裏付けるような動物実験の結果が2009年米国の医学誌に掲載されました。
7歳から14歳のアカゲザルを、好き勝手に食べ放題にさせるグループと食べる量を制限して摂取カロリーを標準の70%にさせるグループに分け、20年後、老化度にどんな違いがでるかを調べたものです。
その結果、食べ放題だったサルは、歯も体毛も抜け、見た目が老けて見えました。一方、食べる量を制限されたサルは、毛もふさふさで若々しく、加齢に伴って観察されてくる糖尿病やガン、心臓病の発症が低く抑えられ、脳の萎縮も抑制されることがわかりました。また、これらの病気で亡くなる危険性も減り、寿命が延びる可能性が報告されました。
しかし、です。
その3年後の2012年、別の研究者から、アカゲザルに同じようなカロリー制限を行っても、必ずしも老化の兆候が抑えられないことが報告されました。一体全体、どういうことでしょうか。
実は、2つの研究には、決定的な違いがあったのです!
両方とも確かにカロリーを抑えたサルとそうでないサルとを比べた試験でした。問題は、カロリーを制限されていないサルの餌の中身の方にありました。
2009年に報告された研究では、カロリー制限を受けていないサルの餌の中身は、砂糖たっぷりで、いかにも体に悪そうなものでした。
一方、2012年の研究では、カロリー制限を受けていないサルの餌の中身がヘルシーで、砂糖の量は2009年のものに比べて1/7に抑えられ、魚油やフラボノイドなどの抗酸化物質が多く含まれているものだったのです。
ようするに、はじめの研究では、カロリー制限でサルの老化が抑えられたのではなく、体に悪影響を与える食べ物を減らしたために、結果として老化が抑えられたことになります。
アンチエイジングのために大切なのはカロリーより「食事の中身」
つまり、カロリーより、食事の中身が大切だというわけです。言い換えれば、食事量を減らしてカロリー制限したとしても、「AGE」量が同時に減っていなければ、老化を抑え、寿命を延ばす効果は認められない可能性が考えられます。
すでに、ネズミの実験では、いくらカロリー制限をしていても「AGE」の制限が実行されないと寿命の延長効果がないことまでわかってきました。
「AGE」の摂取量をある程度コントロールできれば、カロリー制限を行わなくとも長寿を手に入れることが可能かもしれませんよ。
*久留米大学 医学部 糖尿病性血管合併症病態・治療学講座 教授
「二十歳」は見た目も同じように見え、健康にも通常格差がないことは実感されていると思います。この状態は40歳くらいまで続きます。
しかし、40歳以降、加齢に伴って病的な老化の程度は拡大します。
なぜ多少の老化と病的な老化の差がでるのかといいますと、CML(カルボキシルメチルリジン:糖酸化生成物)などの蓄積量に個人差ができるからです。
このCMLは老化現象の原因物質ともいわれ始めているAGEの1つです。
日本人女性における生命寿命は東日本大震災が起こる前までは26年間連続世界一でした。現在、第2位で86.3歳ですが、健康寿命は73.6歳にすぎません。
ところで、健康寿命ってご存じですか?「健康上の問題で日常生活に支障のないこと」を健康寿命といいます。
この生命寿命と健康寿命の差は不健康な期間そのものに相当しますが、その期間は12.68年もあります。
12.68年というと女性の人生の14.7%にも相当します。つまり、人生の最後、いわゆる晩年の12.68年を健康上に問題を抱えながら過ごし、決して健やかでなく人生の終焉を迎えるわけです。
男女の介護要因、男性はメタボ、女性はロコモに注意!
要支援・要介護度別認定者数は、人口の高齢化により直近の10年間で218万人から469万人と2倍以上も増加しています。
この原因として、要支援は関節疾患や骨折・転倒の運動器疾患と老衰が多く、要介護は脳血管疾患と認知症が多いことが判っています。
そして、要支援とは「日常生活の能力は基本的にあるが、買い物や家事で一部支援が必要で、食事・排泄・着脱のいずれも概ね自立している」状態をいいます。
一方、「要介護1」とは、「立ち上がりや歩行が不安定で、主に屋内で生活。食事・排泄・着脱のいずれも概ね自立しているが、一部支援を要する」状態を指します。
さらに、「要介護2」となると、「食事・着脱は何とか自分でできるが、排泄は介護者の一部介護を要する。歩行や起き上がりも介助が必要。食事・排泄・入浴などで毎日1回の介護が必要」となります。
このような要介護要因も男女で異なり、明らかな性差があります。
そして、全要介護者のうち、男性は28.4%であるのに対し、女性は71.6%と、男性と比べ2.5倍以上も多いのです。
そして、男性の要介護要因は脳卒中が32.9%と、原因疾患の1/3を占めるのに対し、女性は男性の1/2以下の15.9%に過ぎません。
女性の要介護原因疾患は骨折・転倒の14.1%と関節疾患11.7%、合わせて25.8%と運動器の疾患が原因疾患のトップであり、1/4を占めています。
このことから男性はメタボリックシンドローム(メタボ)に気をつけて、女性はロコモティブシンドローム(ロコモ)に気をつける必要があります。
健康長寿確保の早道は、AGEを減らすこと
メタボは内臓脂肪型肥満によるインスリン抵抗性が高まり、脂質代謝、糖代謝異常と高血圧を呈する、いわゆる生活習慣病です。
男女の介護要因となるメタボとロコモにはいずれもAGEが関与しています。
AGEはメタボの主因となるインスリン抵抗性にも直接関係し、糖尿病による血管症、そして男性の要介護原因の脳卒中にも関わりがあります。
AGEはロコモの原因疾患となるサルコペニア(筋肉減少症)、骨粗鬆症、変形性関節症や脊椎症とも関係します。
こうしてみますと、超高齢社会を健やかに生き抜き、健康格差を少なくするためにはAGEを減らすことが不可欠です。
健康長寿を獲得する早道はAGEを減らすことにつきるかもしれません。
*国際医療福祉大学臨床医学研究センター 教授
山王メディカルセンター・女性医療センター長