ザワークラウトや、シュークルートと呼ばれて欧州で愛されてきたキャベツの漬物。主な材料はキャベツと塩だけなのに、程よい酸味があるのは乳酸菌発酵による「乳酸」の風味が加わるから。
この「乳酸キャベツ」が、胃や腸を整えたり、 美肌や免疫力アップに役立ったり、健康効果抜群。
手軽に作れて、アレンジも自在です。
「いろいろな発酵食品のなかでも、一番多く作って、肌や胃腸が喜ぶのを実感しているのが乳酸キャベツ」と話すのは、料理家の井澤由美子さん。
その魅力は乳酸菌とキャベツの健康効果のダブルパワーにある。発酵過程で増える乳酸菌は、悪玉菌の増殖を抑えて腸内細菌のバランスを整える。免疫力を高める効果もある。
前東京農業大学応用生物科学部教授で植物性乳酸菌に詳しい岡田早苗さんは、「乳酸キャベツには乳酸菌が億から十億の単位で生息していて、キムチの乳酸菌生菌数と同等と考えられる。
植物由来の乳酸菌は動物由来のものに比べて強い酸性の下でも生きられ、胃酸や胆汁酸にさらされても生きて腸まで届きやすい」と話す。
もちろん、キャベツそのものにも栄養がたっぷり。胃腸薬にも配合され、胃腸の粘膜の修復を促す成分のキャベジン(ビタミンU)のほか、腸の掃除役となる食物繊維、美肌にいいビタミンCも含まれる。
日を追うごとに、酸味が出てうま味が深くなるのも魅力。「一緒に入れるスパイスには殺菌や防腐、消化促進などの効果があるので、唐辛子と粒コショウをベースに、好みのものを加えて」と井澤さんは薦める。
[材料(作りやすい分量)]
キャベツ……1個(正味1kg) 塩……小さじ4弱(20g) きび砂糖……小さじ1/2 好みのスパイス……適量(唐辛子、粒コショウ、ショウガ、ローリエ、クローブ、キャラウェイなど)
1.キャベツを千切りにする
キャベツを4等分に切って洗い、水気を切って千切りにする。細かく切るほど発酵しやすくなる。
2.保存袋に入れて塩を振る
味を全体になじませるため、塩は2回に分けて入れる。まず半量のキャベツを保存袋に入れ、小さじ2の塩を混ぜる。
3.袋の上から両手でもむ
残りのキャベツと塩、砂糖を加え、袋の上からなじませるようにもむ。密閉袋(大)1枚にキャベツ1個分が入る。
4.余分な空気を抜く
好みのスパイスを加えたら、袋の上からぎゅっと押して、余分な空気を抜いてしっかりと口を閉じる。
5.重しをする
1.5kg程度の重し(500mlのペットボトル3本など)をのせて、直射日光の当たらない常温の環境で1~5日置く。
6.冷蔵庫へ移す
味見して酸味があり、泡が立っていたら発酵している証拠。清潔な瓶に移して冷蔵庫へ。冷蔵で約1カ月保存可能。
すぐに作れて、お腹すっきり効果を最も引き出せる。キャベツは、緑と紫のどちらを使ってもいい。さらに効果を高めるコツは、チーズやヨーグルト、納豆などの発酵食品と組み合わせること。「発酵食品同士は、味の相性もいい」という井澤さんの一番のお薦めは、「乳酸キャベツの梅納豆あえ」だ。
「納豆、梅、酢の組み合わせで免疫力アップに効果的。腹持ちもよく、朝食にも最適。ゴマ油を加えると、便通作用がさらに高まります」(井澤さん)
◇チーズと好相性! ワインのお供にも 富士山乳酸キャベツ
[材料(2人分)]
乳酸キャベツ …… 200g ハードタイプのチーズ(ペコリーノまたは パルミジャーノなど) …… 適量 オリーブオイル …… 適量 粗挽きコショウ …… 適量
[作り方]
皿に乳酸キャベツを盛る。その上にチーズを削りながらかけ、オリーブオイルを垂らし、コショウを振る。
◇食物繊維たっぷり、酢のパワーで疲れも取る ワカメと乳酸キャベツの酢の物
[材料(2人分)]
乳酸キャベツ …… 100g 乾燥ワカメ …… 5g 甘酢(酢 …… 大さじ2、砂糖 …… 小さじ1、塩 …… 1~2つまみ) 針ショウガ …… 好みで適量
[作り方]
1.ワカメは水で戻して水気を絞る。
2.ボウルに甘酢の材料を入れて混ぜ、乳酸キャベツと食べやすく切った1を加えてあえる。器に盛り、針ショウガを上にのせる。
◇最強の発酵食品同士の組み合わせ 乳酸キャベツの梅納豆あえ
[材料(2人分)]
乳酸キャベツ …… 100g 納豆 …… 1パック(付属の辛子、たれも) 梅干し …… 大1個 酢 …… 小さじ2
[作り方]
1.梅干しは種を取り、梅肉を手でちぎる。
2.辛子以外の材料をすべて混ぜて器に盛り、辛子を上にのせる。