37億年前の生命誕生から、生きものの食の変化について考えてみる
37億年前に誕生した地球上の生命は、現在の生物とはかけ離れたものも居ましたから、なかなか全体を整理するのは難しいのですが、現代の生物を基準にして生物界や私たち人間、それに健康や寿命というものを系統的に考えることはできますし、またとても参考になるものです。
長い生物の歴史を経て、すべての生物のもとは「植物」が担っています。
そして最初の植物は、地上に生物がいないときに誕生したものは「生きもの」がいないのですから、無生物を食糧にしなければなりません。
それが今は温暖化ガスと言われる「二酸化炭素」です。
地球の大気には二酸化炭素が95%と豊富にあったので、植物は二酸化炭素を食糧にしています。
二酸化炭素の中に含まれる酸素は役に立たなかったのですが、炭素は燃やすとエネルギーがでるし、体を作ることもできるので、二酸化炭素を食べて炭素と酸素分解して食糧にしていました。
それから37億年もたった現在でもおなじで、そこら辺に生えている草木、私たちの主食でもあるイネなどはすべて二酸化炭素だけを食糧にしています。
良く「この土には栄養がある」と言いますが、この「栄養」は人間で言えばビタミンやミネラルというもので、ご飯や肉などではありません。
だから本来は「土の栄養」という用語はあまり適当ではなく、「調整剤」などと呼ぶべき副次的なものです。
大気中の二酸化炭素を食べる植物が誕生して繁栄すると、二酸化炭素から光合成で体を作るのは面倒なので、二酸化炭素を食べる代わりに命(植物)を食べるというサボりが出てきます。
それが「動物」です。昔は大気中に二酸化炭素が多く、植物が繁茂していましたので、動物はドンドン植物を食べることがでて、恐竜のような巨大な体を持つ動物も出現しました。
そのうち、さらにサボりが出てきて、植物を食べて自分でタンパク質などを作るのは面倒だとばかり、ほぼおなじ体の構造をしている動物を食べる「肉食動物」が誕生しました。その一つがライオンです。
アフリカの草原にはライオンとそのそばにいつも餌になるヌーというウマのような草食動物がいます。
ヌーは「土に生えていて動かない草」を食べますので、食事は楽ですが、草には蛋白も少ないので、草を過剰に食べないと必要な蛋白(アミノ酸)を摂ることができません。
そこで「食べ過ぎては走ってエネルギーを消耗し、自分の体を作る蛋白の原料となるアミノ酸をやっととる」という大変なことをしなければなりません。ウマがいつも走っているのはそれが原因しています。
一方、ライオンは走って逃げる獲物を獲らなければなりませんので、狩は大変ですが、ひとたび獲物を手に入れると自分の体とほとんど同じものでできているので、あとは食べるだけでよく、食べるとゴロゴロしています。
ヌーが走り、ライオンが寝ているのは草食と肉食の違いが生活に表れていると言えます。
◆健康食品が増えているのにガンも増えているのはなぜか
ところで、草食と肉食がいれば、その中間の雑食というのも登場する訳で、私たちヒトも雑食と言われています。
でも、厳密に考えると「雑食」という動物はいないと言ってもよいのです。
その理由は「雑食動物で草を消化できる動物はマレ」だからです。
ウマやウシは草食動物ですが、基本的には「草」を食べていて、果物や大根のような根ものは食べません。
それに対して人間は雑食と言われますが、食べる植物は「果物と野菜、根もの」にほぼ限定されていす。
つまり「草」を消化できないのですから、雑食とも呼べないのです。
動物というのは自分の体をつくり、エネルギーを得るために食べますし、植物にしても動物にしても「他の命をいただく」ということでも何を食べても同じです。
つまり動物は「他の命をいただいて、自分の体の中で消化(バラバラになる)し、改めて自分に必要なものを合成して生きる」というものだからです。
人間は草を食べても美味しいとは感じないのですが、それは「味覚」が「人間に必要なもの」を見分けるからです。
人間には栄養学とかテレビなどがありますから、「これは栄養がある」などと言われますが、動物はそんなことは分からないので、味覚で自分に必要なものを見分けます。
もちろん、人間も正常なら「美味しいものを食べる」ことが大切で、「あれが良い、これは体に良い」等という知識は本来はムダなのです。
最近50年ほど、テレビや雑誌などで健康と食材のことが繰り返しでますが、本当に食べてまずいのに健康によい食材というものがあるかどうか不明です。
事実、ガンなどの病気がドンドン増えていますが、「健康食品」がガンを増やしている可能性もあります。
つまり、味覚に勝る栄養学があるかはまだ分かっていません。
私たちは「健康食品を食べると健康になる」と考えますが、私が慎重にデータを見ますと、その「健康」とは人間全体を観察しているのではなく、なにか一つだけ良くなることを言っています。
だから、全体としては健康を損なったり、精神的に不安定になったりする可能性はとても高いのです。
食品に興味のある人、食事を作る人は「ライオンにベジタリアンはいない」、「ライオンはいつもゴロゴロ寝ている」ということをよく考える必要があるでしょう。
※武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』
血の気のない冷血動物
病院が高血圧治療を始めて30年、血管障害が減り、ガンが増えた理由
温泉に浸かるとゆったりした気分になり、血の巡りが良くなり、ハッキリと元気が戻ってくることを感じます。
なぜ、温泉に浸かると「良かった!」と思うのでしょうか。
それは、体温が上がり、血液の粘度が上がって血流が多くなり、同時に体の表面が暖まるので代謝が盛んになり、人間の生体反応が順調になるに他なりません。
現在はすでにエアコンが普及していて、夏も冬も同じような生活ができるようになっていますが、ちょっと前まではものすごく暑い夏と、厳しい寒さの冬が人間を痛めつけたのですが、その中でも老人や赤ちゃんなどの体力が弱い人にとって「夏は楽だが、冬を越すのは厳しい」というのが現実でした。
真夏の暑い日の昼、老人がよく外に出て庭仕事などをしていましたが、熱中症で無くなる人などほとんど居なかったのですが、「冬は越せない」というのは普通でした。
動物の多くも春に出産をしますが、これも「厳しい冬を目前にした秋、まして冬にはお産はできない」ということだったからです。
これら全ては「動物にとって血流と代謝が大切」であることを示しています。
その血流と代謝を盛んにするのが「高い血圧」です。
水道水を送ろうとすると強力なポンプがいるように、液体を輸送するには「ポンプで高い圧力を作る」ことが大切です。
人間ではポンプは心臓で、圧力は血圧で示されます。
血液は全身の毛細血管にくまなく送る必要があり、そのためには水銀柱で140mmHg程度(普通は単位を使わずに単に140という)は必要です。
一気圧は760mmHgで、水で言えば10メートルの高さまで上げることができます。
人間の体は大きい人で180cmぐらいですから、計算上は760*180/1000=136.8mmHgが必要な圧力となります。
現実には心臓が胸についていること、人間は多くの動物と違い二足歩行であること、女性は普通は身長が低いことなどから、いろいろ相殺して結局140ぐらいになるということです。
ところが歳をとってくると、体の全ての場所が「固く」なります。
赤ちゃんの時には皮膚も関節も本当に柔らかく、全身がお餅のような感じですが、老人になりますと枯れ木のように固くなるのも仕方が無いことです。
血管も同じで若い頃の柔らかい血管が硬くなり、血液を送るときにもスムースに送ることができなくなります。
でも、血は必要なので、心臓は仕方なく血圧をあげて血の巡りを良くしようとします。
人間が誕生してからズッと、自然の摂理、歳をとったら体が硬くなるのは仕方が無いとあきらめて、血圧を上げてきました。
日本人の場合、1年歳をとると血圧が1.0あがるので、50歳で140としますと、60歳では150、70歳では160と上がってきます。
それが当たり前でした。
ところが、血管障害を防ぐことだけに熱心な医師が増えて、血の巡りはどうでもよいから血管障害だけを防ぎたいということになり、さらに降圧剤(血圧を下げる薬、別の説明をすれば血流を悪くする薬)が儲かることもあって、血圧を130にするのが当たり前になりました。ここ30年ぐらいのことです。
そうなると、血の巡りが悪くなり、酸素不足(すぐ息切れがする)、栄養不足(元気が無い、疲れやすい)、白血球不足(病気になりやすい)、免疫物質不足(ガンになりやすい、カゼを引きやすい)になって、血管障害は減りましたが、ガンや認知症などがものすごい勢いで増えてきました。
血圧の関係する脳血管障害がもっとも多かった昭和45年頃、10万人あたり180人が脳の血管が破れて死んだのですが、その後、血圧を下げてきたので、脳血管障害で無くなる人は100人に減りました。
その代わり、ガンが100人から280人、肺炎が100人と増えて、血圧を下げたことで増える病気に変わっただけになりました。
◆血圧は本当に低下させていいのか。認知症や寝たきり老人が増える要因にも
血圧を下げれば血流が悪くなり、血管は破れないけれど、ガンや肺炎が増えるのは普通のことで、医学的に難しい問題ではありません。
ただ「縦割り医療」で、血圧の医者は血圧のことだけを考えた結果、人間というものがどういうものかを忘れていたのです。
また、血圧と食塩は余り強い関係がないのですが、減塩食があたかも血圧を下げる万能の方法だという間違った情報を蔓延させたのも大きな問題でした。
塩(塩化ナトリウム)は海から陸に上がってきた人間にはとても大切なものなのです。
生き物は血が巡り「温かく生きているもの」で、冷たい体の「冷血動物」は死んでいる状態です。
ガンや肺炎の外に「認知症」や「寝たきり老人」も日本人に特に多いのですが、これも血圧に強く関係しています。
人間の脳は激しく活動をしていて、体積は小さいのに全身を巡る血の4分の1も使っています。
だから、血流が悪くなると脳の働きもダメになり、物忘れ、記憶力の低下、さらにそれが進んで新しいことを覚える意欲の低下、そして最後は気力を失って寝たきりになるということです。
命の源になる血の巡り、それを低下させた医療行政の間違いはとても大きいことがわかります。
むしろ、血管を強くする生活や食事、血管の破れを防止する方法や薬剤など、血流を減らすのでは無く、維持しながら血管が破れることを防ぐのが本当の医療というものです。
※武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』