鉄は、全身への酸素運搬の機能に必要であり、またミトコンドリアのエネルギー産生に必須のミネラルです。
つまり、生体にとって非常に重要なミネラルといえるでしょう。
女性の間で鉄欠乏がよく見られますが、鉄欠乏とは全身の鉄が欠乏した状態のことであり、鉄の貯蓄がなくなることです。
つまり、鉄欠乏とは貯蔵鉄(フェリチン)の欠乏以外の何物でもありません。
鉄は生体内では基本的にタンパク質と結合していますが、まれに結合を離れ遊離鉄になると、強力な酸化物質であるヒドロキシラジカルという活性酸素を発生させ、細胞毒性を発揮することがあります。
そのため、鉄の過剰摂取などに気をつけるべきですが、一般にアメリカと違い、日本では鉄の摂取過剰は稀であるとされています。
ところが、古くなった赤血球が破壊されると、赤血球に含まれているヘモグロビン鉄が血中に遊離してきます。
そうすると、遊離したヘモグロビン鉄は反応性が高いため、上述したように強力な活性酸素を生成してしまいます。
そのため、このような鉄は生体にとって危険なのです。
しかし、生体にはこの遊離したヘモグロビンを回収するシステムがあります。
それが、ハプトグロビンと呼ばれるタンパク質です。
ハプトグロビンはこの遊離したヘモグロビンに結合し、活性酸素による酸化障害から生体を守る素晴らしいタンパク質といえます。
実は、ややこしいことに、このハプトグロビンには1-1型、2-1型、2-2型の3つの遺伝子多型があります。
皆さんのハプトグロビンの型もこのうちのどれかにあてはまりますが、残念ながら、2-2型の人は遊離ヘモグロビンの回収処理能力が非常に弱いとされています。(私たちの3人に1人は、2-2型と言われている)
そのためか、2-2型の人はアテローム性動脈硬化になりやすい傾向があります。
実際にこの3つの型を調査すると、2-2型の人の血清ビタミンC濃度は有意に低いそうです(各国が発表している)。
せっかくハプトグロビンという抗酸化物質を持っているのに、2-2のような遺伝型によっては処理能力が低いのです。
では、このような人はもはや諦めるしかないかという話になりますが、そうではありません。
実はこの2-2型の人はビタミンE(ここではαトコフェロール)をきちんと摂取していれば心血管疾患に対して有意に予防できるという臨床結果や実験研究があります(Andrew P. Levy et al,2004; Veiner HL et al,2015)。
ここではビタミンE400IU(268mg)/日の4.5年間投与で2-2型に有効であったとされています(相対リスクは、心血管死で0.45、非致死性心筋梗塞で0.57)。
以上まとめると、鉄は生体に必要なミネラルでありながらも、遊離した鉄イオンが活性酸素を生成するため懸念されていますが、ハプトグロビンが存在する限りは生体は守られています。
ところが2-2型のハプトグロビンではその処理能が低くなってしまいます。
2-2型の人がビタミンEを日々摂取していれば、これらの予防が可能であるということです。
ちなみに、ビタミンEが多く含まれる食品は、ナッツや油脂類になります。