1,生きるために絶対になくてはならない酵素
戦後、欧米からもたらされた栄養学では、炭水化物、タンパク質、脂肪の三大栄養素が、ヒトが生きていく上で必要な栄養素としてもてはやされました。
その後、炭水化物を摂っても、それだけではエネルギーとしてうまく代謝しないということで、ビタミン、ミネラルが加わって五大栄養素となりました。
そしてさらに、体内では消化されないからと、それまで見過ごされてきた食物繊維が6番目に加わりました。
もちろんこれらの栄養素も大切です。
しかし、ビタミンやミネラルよりも、私たちの生命を維持する上でもっと大切なものがあります。
それが酵素です。
酵素と聞くと、ほとんど無条件に「消化酵素」と連想されると思います。
が、しかし、酵素は食べたものを消化吸収するばかりでなく、息をしたり、筋肉を動かしたりと、一切の生命活動に関与しています。
もし、酵素の働きがなければ、人間も動物も生きることはできません。
いわば、生命活動の主役であり、源です。
2,ビタミンやミネラルそして酵素の共同作業。
栄養サプリメントのムダな飲み方してませんか。
今、流行のビタミンやミネラルなどの栄養サプリメント。身体に良いということで飲んでる方は大勢いらっしゃることでしょう。
しかし、ビタミンCやカルシウムなどの微量ミネラル、はたまた栄養ドリンクを飲んでいても、今ひとつ効き目が現れないという経験をお持ちの方もまた、多いのではないかと思います。
この問題を解く鍵が酵素にあります。
いくらビタミンやミネラルを摂っても、酵素がなければ身体の中で十分に働けません。
酵素あってのビタミン・ミネラルです。
今やビタミン・ミネラルは、この酵素の働きを助けるという意味で「補酵素」と言われるようになっています。
3,一つの仕事しかできない酵素
酵素の構造を簡単に言えば、ミネラルの周りにタンパク質が巻き付いたものです。
中心になるミネラルの種類や、タンパク質の巻き付き方によって、様々な種類があります。今発見されている酵素は約3000種で、今後も新しい酵素がどんどん発見されていくでしょう。
しかし、3000種あるといっても、それぞれの酵素はそれぞれ一つの仕事しかできません。
たとえば消化酵素として有名なアミラーゼというものがあります。
これは唾液の中に含まれているもので、デンプンを分解する酵素です。
そのアミラーゼによってタンパク質を分解することはできません。
ちなみにタンパク質を分解するのは、プロテアーゼという酵素ですが、逆にプロテアーゼでは、デンプンは分解できないということです。
4,熱によって変成する。
材料がタンパク質ですから、酵素の特徴としてあげられるのが、熱に弱いということです。
卵を思い出してください。
卵は、熱をかけていないときは白味の部分は透明でとろとろしていますが、熱をかけると白く固まります。
同じように酵素も、加熱されると蛋白が変成して酵素でなくなってしまいます。
一般に酵素が耐えられる温度は50度くらいから、せいぜいから70度くらいまでです。
つまり、加熱した食べ物に、酵素の働きはないということです。
このため、普段の食生活において、加熱したものばかりたべず、酵素の入っている食品を摂るように心がけなければなりません。
5,発酵食品や生の食べ物(新鮮なもの)には酵素がある。
酵素は何に含まれているかといと、新鮮な生の食べ物です。
生の肉や魚、生野菜、果物には皆酵素が入っています。
また、日本には多くの発酵食品があります。
みそ、納豆、糠付けなどなど・・・。
この発酵食品にも、酵素が豊富に含まれています。
この生の食べ物や発酵食品に含まれている酵素のことを食物酵素といいます。
焼き魚には大根下ろしがついていますが、あの大根おろしは、焼き魚と一緒に食べると食物酵素として消化を助けてくれます。
以上のような特徴をもった酵素ですが、では、私たちの生命活動に具体的にどう作用しているのでしょうか。
酵素については、過去にも研究をする科学者はいました。
しかし、これまでは酵素の原料であるタンパク質を摂っていれば、無尽蔵に作られると考えられていたので、全体的な栄養学の中では、それほど重要視されなかったのです。
1,潜在酵素。消化酵素と代謝酵素
しかし、近年になって研究が進み、実は酵素をつくる能力は、一人一人遺伝子によって決まっていて限界があるのだということがわかってきました。
その人間が固有に持っている、一生のうちで作れる一定量の酵素のことを潜在酵素といいます。
体内で作られる潜在酵素は、大きく分けると、「消化酵素」と「代謝酵素」の二つがあります。
まずはじめに、消化酵素ですが、これは文字通り消化のための酵素で、私たちが毎日食べるご飯や野菜などの食べ物を消化分解し、吸収するための酵素です。
たとえば前述の、唾液の中に含まれているアミラーゼ。
これはでんぷんを分解する酵素でしたね。
では、胃液に含まれているプロテアーゼ、この酵素の働きは
そうタンパク質を分解する酵素です。
そして、膵液の中にある、脂肪を分解するリパーゼなどがあります。
消化酵素の働きと種類
・デンプン → ブドウ糖に分解(アミラーゼ)
・タンパク質 → アミノ酸に分解(プロテアーゼ)
・脂肪 → 脂肪酸に分解(リパーゼ)
一方、代謝酵素の働きは、
代謝酵素の働き
①吸収された栄養をを体中の細胞に届けて、有効に働く手助けをする。(新陳代謝)
②毒素を汗や尿の中に排出する。 (有害物質の除去)
③体の悪い部分を修復し、病気を治す。(自然治癒力)
④免疫力を高める。
などがあります。
2,食物酵素
そして、もう一つ、身体の外にある酵素があります。
先に出た食物酵素です。
加熱されてない生の食べ物や、発酵食品には酵素があります。
その食物酵素の含まれた食べ物を加熱された食品と一緒に食べると、消化が助けられます。
食物酵素が入っている食べ物
・生の食べ物 → 野菜、果物、生の肉・魚など。
・発酵食品 → みそ、納豆、ぬか漬けなど。
3,酵素が不足すると血液が汚れ、万病の元となる。
生きるために必要な酵素が不足すると、どのように血液が汚れるのでしょうか。
それについて、消化酵素の面から説明します。
私たちが食べた食べ物は、口の中で咀嚼されますが、このとき、唾液の中にあるアミラーゼによって、デンプンが分解されます。
デンプンというのは、ブドウ糖が数珠つなぎになっているようなイメージですが、このデンプンのままでは、身体が吸収してエネルギーとして使えなません。
そこでアミラーゼが数珠の玉を一つ一つに分けていきます。
その一つになった玉がブドウ糖です。
しかし、その分解が酵素不足で不十分だと、未消化の糖がそのまま吸収されて血液の中を漂います。
この未消化の糖は、血液をドロドロにして、赤血球どうしをくっつけてしまいます。
これが、血液が汚れるということです。
血液の中に未消化の糖分や脂肪が混じって粘りけが出て、赤血球が連なっている状態。
きれいな血液。
そして、こうなると、血流、血行が悪くなります。
赤血球は直径が約7ミクロン。
毛細血管は5ミクロンです。
血管よりも大きな赤血球がどうして血管の中を流れていくのかというと、赤血球は柔軟にできているので、通常は、自分よりも細い血管を通るときには変形して通れるのです。
ところが、赤血球同士がくっついた状態になると、細い血管を通ることができなくなります。
身体の中を張り巡らされている血管の長さはおよそ10万キロメートル、そのうち約90%は、毛細血管であると言われています。
ですから、これでは体中の細胞に血液が行き渡らなくなり、様々な病気を引き起こすようになるのも当然と言えるのです。
しかし、そのドロドロして汚れた血液でも、酵素が十分にあれば、連なりがとけてサラサラした血液になるのです。
これは、デンプンだけでなく、タンパク質でも脂肪でも同じことが言えます。
このような酵素不足を引き起こす背景にあるのが、食べ過ぎや、加熱調理されたものばかりを食べるようになったということです。
加熱調理された食べ物には、酵素がありません。
そのため、身体のほうが全部、自前で消化するために酵素を作らなければなりません。
ところが、食べ過ぎや、病気・加齢で酵素をつくる力が弱くなっている人では、酵素を作るのが追いつかなくなります。
それで、食べたものが十分に分解されないまま、体の中に入ってきてしまうのです。
この場合、本人は栄養を摂っているつもりで食べても、身体の中では異物となってしまっているのです。
4,酵素の無駄遣いをしないことが、健康長寿の秘訣
消化酵素・代謝酵素・食物酵素の関係
さらに今度は、消化酵素と代謝酵素の関係を食物酵素を交えて見ていきます。
人間にはそれぞれ個人差がありますが、酵素を作る能力には限りがあります。
消化酵素も代謝酵素も出所は同じなので、消化酵素ばかりを作っていると、代謝酵素のほうが不足してきます。
〈ケース1〉
仮に酵素を作る能力が20の人がいるとします。
その人が、たとえば、焼き魚を食べるとします。
そして、その焼き魚を消化するには、10の酵素の力を必要とするとします。
しかし、その魚には、大根下ろしが付け合わされています。
その大根下ろしは食物酵素ですから消化を助けてくれます。
その力を2とします。
すると、魚を消化するには、差し引き8の酵素を身体が負担することになり、20のうちの12は代謝酵素のほうに回されます。
〈ケース2〉
次に、同じ人が、焼き魚を2匹一度に食べるとします。そして、これには、付け合わせの大根下ろしがありません。
こうなると、2匹の焼き魚を消化するために、20の酵素の力すべてが使われて代謝酵素をつくることができなくなります。
こうなると、どうでしょうか。
代謝酵素は、免疫力や自然治癒力や新陳代謝の働きを受け持つ酵素です。
それらの酵素が不足してしまうので、当然、ウイルスなどが侵入してきたとき、防衛できなくなります。
風邪をひきやすくなったり、またひいたあと、治りが悪くなったりします。
その他、様々な病気にかかりやすくなるのはいうまでもありません。
どうして風邪を引くと脂っぽい物は食べたくなくなるのか
風邪をひいた時に、私たちは何を食べるでしょうか。
お粥ですね。
それはどうしてかというと、お粥は脂っこいものに比べて、消化しやすいからです。
つまり、消化のために酵素を余分に使わなくて済むので、余った酵素の力を代謝酵素に回せるのです。
犬でも猫でも、動物は皆、身体の調子が悪くなると、何も食べずにじっとしているようになります。
それもやはり、食べないことによって、酵素の力を免疫力や自然治癒力を高める代謝酵素に回そうとするからだということです。
私たちでも、病気になったときは、脂っこいものはあまり食べたいとは思わないと思いますが、これも同じで、身体の方で消化に負担のかかるものを嫌うからです。
つまり食欲がなくなるのも、一つの自然治癒力とみることができるのです。
ですからそういう時には、消化しやすい酵素がたっぷり入った食事を摂るようにすると良いということです。