酵素は、消化だけでなく、あらゆる生理的プロセスに欠かせないのです。
体から分泌される酵素はアミノ酸からなっており、生理的温度では通常は発生しない触媒作用を促進します。
酵素は文字通りマジカルな働きをするもので、私たちの生命には欠かせません。
酵素が活躍する体内の働きをご紹介しましょう。
エネルギーの生産
酸素の吸収
感染症に対抗し、傷を治す
炎症を抑える
細胞に栄養素を取り込む
老廃物を排出する
血液中の脂肪を分解し、コレステロールやトリグリセリドを調整する
血栓を溶解する
ホルモン分泌を調整する
アンチエイジング
酵素が正しく機能するには、特定のビタミンやミネラルが欠かせません。
いわゆる、「コエンザイム」です。
中でも、コエンザイムQ10は、ご存知の方も多いと思います。
コエンザイムQ10は、細胞のミトコンドリア(ここでエネルギーが生産される)に存在し、細胞にとっての主要なエネルギー源であるATPの産生に関わっています。
また、マグネシウムも300以上もの酵素反応に関与しています。
酵素について
酵素は次の3つに分類されます:
消化酵素
代謝酵素
食物酵素
消化酵素はその名のとおり、食物を小さく消化分解して、吸収、運搬され、あらゆる細胞で利用できるようにします。
消化酵素は細胞外酵素と呼ばれ、細胞の外ではたらきます。
代謝酵素はというと、細胞内酵素と呼ばれ、細胞内でおこなわれる、細胞の再生や栄養補給に関わる様々な機能を助けます。
このような消化酵素と代謝酵素は、そのほとんどがすい臓で作られます。
消化器系をとおる食べ物の旅
体の中に取り込まれた食べ物は、複雑な多くのステップを経て分解、変換され、やっと体が利用できる栄養素になります。
このプロセスが消化と呼ばれるのですが、ここで酵素が重要な役割を果たすのです。
プロテアーゼ:タンパク質を分解する
アミラーゼ:炭水化物を分解する
リパーゼ:脂肪を分解する
セルラーゼ:繊維を分解する
マルターゼ:穀物の複合糖類をグルコースに分解する
ラクターゼ:乳製品に含まれるラクトース(乳糖)を分解する
フィターゼ:消化を総合的に助け、ビタミンBを生成する
スクラーゼ:多くの糖類を分解する
消化は口の中で唾液によって始まります。
人は毎日1.7リットルもの唾液を生産しているということをご存知でしたか?
酵素が最初に活動を始めるのは口の中(主にアミラーゼ)です。
唾液中のアミラーゼは炭水化物を分解し始めます。
そして食べ物が胃に届けられると、プロテアーゼがタンパク質に働きます。
さらに食べ物は小腸に送られ、リパーゼが脂肪を分解し、アミラーゼが炭水化物の分解を仕上げます。
消化活動の90%が小腸で行われているということをご存知でしたか?
そして、微量栄養素が小腸の内壁にある無数の微細な繊毛を通して血液に取り込まれます。
もしこのプロセスがうまくいかない場合はどうなるでしょう?
「dis-ease(奪う- 安楽)」、つまり病気という状態に陥ってしまいます。
食生活の欧米化の影響:酵素の欠乏
酵素というのは比較的大きな物なのですが、そのタンパク質の構造は非常に壊れやすい性質を持っています。
アミノ酸は、特定の配列で一定の形状になるように結合して分子鎖を形成しますが、その配列や形状により酵素はそれぞれの機能や特性を持つようになります。
もし何かかがこの鎖の結合を壊すと、酵素は「変性」を起こして形が変わってしまうため、その能力を失ってしまいます。
例えば、食べ物を116°F(47°C)以上に熱するとほとんどの酵素は不活性になってしまいます。
このようなわけで、食材を生で食べるのが大切なのです。
生の食材に多く含まれる酵素を摂取することで、酵素を体内で作り出す負担を軽減してあげられるのです。
酵素はまた、熱だけではなくpHの変化にも敏感です。
それぞれの酵素が機能するpHに違いがあるからこそ、体内の消化器系内の異なる場所で各酵素が活動できるのです。
酵素が欠乏していると、消化不良を起こしたり、栄養吸収に問題が出てきたりします。
更に、次に挙げるような胃腸の症状を引き起こします:
便秘
膨満感
けいれん
おなら、げっぷ
胸やけ、胃酸の逆流
慢性的な吸収不良は様々な病気の原因となります。
もし、体が必要とする基本的な栄養素を得られていないとすると、当然、不健康になり自然治癒能力は低下してしまいます。
食べ物を分解するのに加えて、酵素(特にプロテアーゼ)は、腸を修復したり、病原菌を抑制したり、免疫のサポートをしたりします。
免疫システムというのは腸が源なのです。
もし酵素や消化に障害があると、おそらく免疫システムも正常に機能できないでしょう。
問題を複雑にしているのは、酵素を作り出す能力は年齢とともに衰えるという事実です。
代謝酵素のさまざまな役割
栄養を吸収するのに消化酵素がいかに大切かおわかりいただいたと思います。
次は別のタイプの酵素、代謝酵素のお話をしましょう。
代謝酵素は、循環器系、リンパ系、血液循環系、神経系、内分泌系、泌尿器系、肝機能、生殖機能や、皮膚、骨、関節、筋肉などの組織の維持と密接に関わっています。
人の体には10兆個もの細胞がありますが、そのどれもが、酵素がエネルギーを作ってくれているおかげで存在しています。
すでにお話したように、各酵素はそれぞれの機能ごとに独特の分子構造を持っており、その機能は高度に専門化されています。
二つの例をあげてみましょう:
RNAポリメラーゼはDNAをRNAに書き込むのに利用される酵素で、タンパク質を生成するのにも使用されます。
また、各細胞のリソソームで作られるリソソーム酵素(「自殺袋」とも呼ばれる)は高分子や、細胞が取り込んでしまった異物(バクテリアなど)を排出できるように分解します。
リソソームは小さなゴミ捨て係なのです!
代謝酵素の大切な仕事のうちの一つは血液中で行われます。
これには納得ですよね。ウイルスはタンパク質の殻に包まれていますが、同様に、バクテリア、菌類、寄生虫もタンパク質からできています血液中の酵素であるプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)はタンパク質からなる異物を効果的に分解し、血液のお掃除をします。
代謝酵素は、血液のお掃除やさんとして慢性炎症とたたかいます。
慢性炎症は放っておくと自己免疫疾患や循環器系疾患や、ひいては、がんの原因となるものです。
ここで、酵素がどのように炎症を抑えるか紹介しましょう。
外部から侵入した炎症の原因であるタンパク質を血中で分解、血液循環やリンパ液循環を利用して排出するのを促進します
炎症を長引かせる原因となり、凝固剤の役割を果たす「フィブリン」を除去します
炎症を起こしている部位の浮腫を抑えます
そして、血液中の機能酵素のレベルを高めることは、炎症が引き起こしている病気(実際のところ、今日存在する慢性疾患の全て)の治療に役立つ可能性があるのです。
体内の酵素レベルを自然に高める方法
酵素レベルを自然に高める4つの方法を紹介します。
生の食材(生きている食材)を多く取り入れましょう
カロリーは控え目に
よく噛んで食べましょう
チューインガムは避けましょう
全ての生の食材に酵素は含まれますが、もっともパワフルに酵素を含んでいるのはスプラウト(豆類と種子の芽)です。
発芽期には、食材の酵素の力は驚くほど増加します。
酵素を多く含む食材には、スプラウトの他も次のものが挙げられます:
パパイヤ、パイナップル、マンゴー、キウイ、ブドウ
アボカド
生ハチミツ(蜂の唾液由来の酵素)
蜂花粉
エキストラ・バージン・オリーブ・オイル、ココナッツ・オイル
生肉、乳製品
もっとも効果的に代謝酵素を増やす方法は、生の食材を多く食べ、代謝酵素の元となる栄養素を多く摂取することです。
これらの食材を多く食べると、アミノ酸や、体が酵素を作り出すのに必要とされる酵素の補因子を取り入れられます。
体が必要とする酵素の量を減らすもう一つの方法は、カロリー摂取量を抑えることです。
これにはよく噛んで食べるのが有効です。
ゆっくりと取る食事から得られる美容効果とは別に、良く噛んで食べることは生理学的に大変重要なことなのです。
噛むことは唾液の分泌を刺激し、またより長く噛み続けることで口の中で唾液酵素が働きます。
そうすることで胃や腸の負担が軽くなるのです。
さらに、噛むことは反射神経を刺激し、膵臓やその他の消化に関わる臓器に「準備せよ!もうすぐ食べ物がやってくるぞ!」と指令を送るのです。
だから、チューインガムはお勧めできません。
ガムを噛むことで、体は何かを消化していると錯覚し、不要な消化酵素を分泌してしまいます。
貴重な酵素を無駄に使うなんてもったいない!
消化酵素を補うもの
時々お腹の膨張感を感じたり、少し不快な感じがしたり、便秘に悩まされている場合は、酵素の生成が足りていないかもしれません。
生で食材を摂取することに加えて、酵素をサプリメントで補うのも役に立つかもしれません。
消化酵素は必ず食事と同時に摂取してください。
サプリメントには様々なタイプの酵素が含まれており、摂取したあらゆる食物に対応できるようになっています(リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼなど)。
原材料は高品質、天然由来成分で、アレルゲンや添加物が含まれていないものにしましょう。
そしてサプリの重量だけではなく、各原料の酵素の濃度が記載されているかを確認してください。
システミック酵素 西洋医学に肩を並べる
消化器官から酵素を血液中に取り込むことはそんなに簡単なことではありません。
これまでにもお話したように、酵素というのは非常に変性しやすく、胃のような強い酸性の環境で生き続けるには助けが必要です。
そのため、消化器系を生き抜くことができるよう、「腸溶コーティング」されたサプリメントも多く見られます。
吸収もまた、さらなる問題です。
しかし、酵素は、変性することなく腸を通過し、血液循環系、リンパ系に吸収されて身体中に広がり役目を果たすことができるという多くの研究結果が発表されています。
医学のミステリーとも呼べるくらいに不思議なことなのですが・・・
酵素を最も効率よく血中に取り入れるには、サプリメントは空腹時に摂取しなければなりません。
そうしないと、体はそれらの酵素を食物の分解に使用してしまい、血液中に吸収して役立てることができなくなってしまうからです。
システミック酵素がどのように健康に役立つのか、今日の2大疾病である心臓病とガンの例を取り上げてみてみましょう。
心臓病に対するシステミック酵素の効果
心臓病発作や脳卒中が炎症と関係あるということは今ではよく知られたことですが、このため、C反応性タンパク質(炎症のもと)は循環器系の病気の診断に利用されます。
しかし、マイケル・セラー氏によるシステミック酵素に関しての素晴らしい論文によると、フランスの研究者らは、バクテリアが冠動脈疾患の原因となっているかもしれない、と提唱しています。
高レベルのバクテリアが患者の動脈プラークで見つかり、このためC反応性タンパク質が増加した可能性がある、としているのです。
C反応性タンパク質はバクテリアが体内に広がるのを阻止します。
酵素は血小板の凝集を抑制することから、免疫システムが病原体とたたかい、フィブリン(凝固剤の役割を果たす)を分解するのを助け、血栓症、静脈炎、静脈瘤などの血管の病気に大いに効果があります。
ガンの治療におけるシステミック酵素の利用
ガン治療に酵素を利用することのルーツは、1911年に出版されたジョン・ビアード氏によるThe Enzyme Treatment of Cancer and Its Scientific Basis『酵素によるガン治療とその科学的根拠』に遡ることができます。
ビアード氏は、ガンの原因は膵臓の酵素が減少し免疫反応に障害を及ぼしていることにあると考えました。
手術が不可能な膵臓癌の患者10人に、大量の膵酵素を(解毒剤とオーガニック食材の食事と同時に)経口投与したところ、従来の治療を施された場合よりも生存率が3?4倍も高くなるという結果が出ました。
ニューヨークのニック・ゴンザレス博士も、ガン治療における酵素について多くの研究を行い、このテーマで本も出版しています。
タンパク質分解酵素のガン治療での有効性について、以下の事実が挙げられます:
サイトカインの働きを強化する。
サイトカインはインターフェロン、腫瘍壊死因子として癌細胞を消滅させる。
炎症を抑える。
フィブリンを分解する:
がん細胞は免疫系によって発見されないようにフィブリンの陰に隠れます。
隠れるフィブリンがなくなると、がん細胞は免疫システムに発見され攻撃を受けることとなります。フィブリンはまた、がんの転移のもととなる、細胞の「接着」を助けると考えられています。
そろそろ、あなたの健康にとっての酵素の重要性が、まさに細胞レベルであることがお分りいただけたかと思います。
そして、新鮮な、オーガニックの、生の食材を多く摂取することの大切さも同時に感じていただけたのではないでしょうか。
栄養豊富で、酵素もたくさん取れる手作り野菜ジュースなんかはお勧めですよ。
お試しあれ。