ひと昔前まで、子どもの扁桃腺が肥大するとそこを切除したり、盲腸炎(実際は虫垂炎)になれば虫垂を切除してきました。
しかし、無数の免疫チームが集まっている小腸のパイエル板のように、虫垂にも扁桃腺にも多くのリンパ組織が存在しています。
大腸の入り口である盲腸周辺や虫垂の中には多くのリンパ節があり、ここにリンパ球(B細胞、T細胞など)が無数に集結し、日々活動しています。
小腸から送られてきた食べかすはまず虫垂にたまります。この食べかすの中にまだひっそりと残っている病原菌・ウイルス・化学物質などをリンパ球が厳しくチェックし、攻撃していくのです。ここは大腸の最初の入り口にある検問所のようなところです。
さらに、虫垂は消化器官としての役割もあり、ここでたまった食べかすを腸内細菌によってできるだけ先に分解させておきます。善玉菌によって発酵された物質は腸内でエネルギーとして使われたり、腸内環境のpHを一定に保つために使用されますが、悪玉菌によって生成された腐敗物質や有害物質は、実は虫垂にいるリンパ球などによって無害化される仕組みになっています。
しかし、有害物質が多量の場合、リンパ球でも消耗できません。その場合は、善玉菌が無害化してくれます。こうした連携プレーが私たちの知らない間に行われているのです。ただし、それでも無害化できなかった有害物質は肝臓で解毒されますが、あまりにも多量であったり、肝臓障害があったりすると、全身の細胞に届いてしまうことがあります。やはりそうならないように、腸内細菌の多様化、免疫の強化、善玉菌の確保などがポイントになってくるでしょう。
ここで虫垂や扁桃腺を切除してしまった人もいることでしょうが、大きく心配する必要はありません。もちろん、切除しないに越したことはありませんが、他の部位での免疫組織(特に小腸のパイエル板)がしっかり働くからです。
扁桃腺は消化器官の入り口として重要な免疫組織の場であり、同じく虫垂は消化器官の出口として重要な免疫器官だと捉えることができます。