冬の養生法の基本中の基本。 パワフルに寒さを乗り切るために必要な薬膳の知恵 「養腎防寒」
インフルエンザなどのウイルスも、寒く乾燥したこの時期に活発になります。手洗いにうがい、空気清浄機の準備などいろいろと対策されている方も多いのではないでしょうか。
東洋医学では、「春は生じ、夏は長じ、秋は収し、冬は蔵する」と言い、季節に合った養生法を考えます。
冬の養生法の基本は、「養腎防寒」です。
防寒は分かるけれど、養腎って何でしょうか、聞きなれない言葉かもしれません。
東洋医学では、臓器の概念が西洋医学よりも幅広く、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つに分類されます。
肝臓、心臓のように臓器の名前ではなく、それぞれの臓腑がもつ複雑な働きによって、5つに分類されています。
(例えば「肝」は全身の気の巡りを統括し、血を蓄え臓器に分配し栄養を与える)
「腎」は人体の生命力に深く関係していて、泌尿器系や生殖活動を司ります。身体の成長・発育・老化のリズムをコントロールしていて、腎が衰えると老化が進むと考えられています。 腎は寒さに弱いという特徴もあるので、冬は「養腎」腎を養って、生命力を強くすることで冬の寒さを乗り切りましょう。
腎が衰えると老化が進むと書きましたが、薬膳では腎を強化することはアンチエイジングにつながると考えています。腎が衰えると白髪や抜け毛が増え、足腰が弱り、歯がぐらつくなどの症状が出て、見た目も老けた印象になります。
生理不順や不妊症、早産や流産などの症状も現れやすくなるということで、妊活中の方や妊娠中の方は特に、腎を養うことを意識しておきたいですね。
「腎」を温存するためには、睡眠不足、過労や精神の酷使など、体に苛酷な状況を作らないことが重要です。
特に寒さの厳しい冬は、活発に動いてエネルギーを消耗することを避け、ゆっくりと過ごして「蓄える」時期でもあります。
いつもよりも少し早めに布団に入り、ゆっくりと眠ることで腎を温存してくださいね。
また、腎を強化するための食養生としては、黒豆、黒ゴマ、きくらげ、黒米などの黒い食品や、胡桃、海藻類、海老、牡蠣、ニラなどが良いとされています。
特に代表的な食材が黒豆です。 黒豆は、血や生命力を補い、血液の巡りを改善してくれます。
腰痛や月経不順、疲労回復老化防止に期待できます。
また、アントシアニンやサポニンなどの抗酸化作用の高い成分も含まれている美容効果も健康効果も期待できる優秀な食材なのです。
薬膳での黒豆の効果・効能
・体質 : 気虚・血虚・瘀血・水毒
・五性 : 平性
・五味 : 甘味
・帰経 : 脾・肝・腎
・主な作用 : 腰痛、月経不順、疲労回復、老化防止、むくみ、生活習慣予防
黒豆の性質は平性といって温めも冷やしもしない性質ですので、季節に関係なく食べても良い食材です。また味は、甘味で、薬膳では胃腸の働きを補う作用があるとされています。
黒豆は、血を補い血の巡りを良くするため、血虚(血が不足した状態)と瘀血(血の巡りが滞った状態)のどちらの体質にも良い食材。
血が十分にあって、きちんと身体に行き渡ると、顔色が良く皮膚と髪にも潤いが出て、筋肉も発達し、動きも機敏になります。
さらに黒豆は、胃腸の働きを高めて水分の代謝を促す作用もあり、むくみやすい水毒(体液の代謝が滞った状態)の体質にも良い食材とされています。
抗酸化作用があって、アンチエイジング効果が期待でき、肌と髪に潤いを持たせてくれて筋肉の発達を助けてむくみにも効果があるという、女性には特にうれしいことだらけの食材です!
黒豆というとお正月の煮物でしか食べないという方もいらっしゃるかもしれませんが、マフィンや蒸しパンに入れたり、ごはんと一緒に炊いたり、茹でて冷蔵庫に常備させておくと様々な料理に活用できて便利ですよ。 気軽にその日の気分で食べてもよい食材なのです。
もちろん茹でたものをそのまま頂くのも美味しいです。 個人的には塩ゆでしたものをお茶と一緒に頂くのが大好きです。
毎日続けるためにおすすめなのが黒豆・黒ゴマ・黒米・胡桃を混ぜ込んだ雑穀おこわ!
胡桃の触感がザクザクとして、黒米ともち米でもっちりとして、とても美味しいですよ。
【腎を強化させる雑穀おこわのレシピ(3合分)】
・黒豆(乾燥) 1/4カップ
・黒ゴマ 大匙1~2
・黒米 大匙1~3
・胡桃(炒ったもの)大匙2
・無農薬の玄米 黒米と合わせて2合
・もち米 1合
・水 3合分
・酒 大匙2
・自然塩 小さじ1/2~1
1、黒豆と少し砕いた胡桃を軽く炒る
2、米ともち米、黒米を合わせて研ぎ、他の材料を全て合わせて炊く。
3、炊き上がったら少し蒸らして完成。
黒豆と胡桃は炒ったものを常備しておくとそれほど手間もかかりません。 炒った黒豆に熱湯を注ぎ、2~3分蒸らせば黒豆茶として頂くこともできるのでおすすめです。
黒豆がもう少し柔らかい方がお好みの方は、少し手間ですが下茹でしておくと良いです。
黒豆のゆで汁も、そのまま黒豆茶として頂くことができます。
かなり濃厚なので飲みにくいと感じる場合は、他のお茶と合わせたり、ココアに足したりしても風味が増して美味しくなります。
黒豆茶は喉の炎症にも効果的で、咳が出るときやのどが痛いときに飲むと良いとされています。
毎日の食事に薬膳の思考を取り入れて、より健康に!
東洋医学のキホン
それは、頭で考えるのではなく、体の声をききながら食べることです。その日その日の身体の声を聞きながら、毎日の食事を丁寧に選んでいくことが薬膳での基本の考え方です。難しいことはありません。
是非、あなたの毎日の生活の中にも薬膳を取り入れてみてくださいね!
冬は蓄える時期と書きましたが、ゆっくりと過ごして身体を休めるべきこの時期に、活動的に動いて気を消耗させてしまったり寝不足が続いたりすると、春になっても冷えになやまされたり、風邪をひきやすかったりと不調が長引くことになります。
逆を言うと、冬にしっかりと身体を休めて腎を補うことができれば、春も健康に快適に過ごしやすくなるということです。
「養腎防寒」をして、元気に冬の寒さを乗り越えましょう!
血不足になりがちの女性の味方。 黒豆で血を増やし腎を癒す。
寒さなどの天気による影響を、人間はもろに受けて暮らしています。冷える食生活、ストレスなども冷えの原因になります。
そして冷えることにより、人間の体温は下がりやすくなり、通常36度から36.5度が平熱だったのが、現代では36度に満たない方も増えてきているようです。
健康診断で血液検査を受けると「ヘモグロビン値」や「赤血球数」などを見て、貧血かどうか調べることができます。会社や人間ドックなどの結果で、「貧血」と言われたことがある方も多いはず。
貧血となると、次の症状が現れます。
・めまいがする
・息切れがおきる
・爪が割れやすい
・髪の毛がパサつく
・なんとなくだるい
もし、「貧血」と診断されたならば、鉄剤を服用したり、食事やサプリメントなどで鉄分を補うという指導がされるのが一般的です。
でも、ここで問題なのが「貧血」と診断されなくても、上記のような症状がある方がいることです。例えば、赤血球数が基準値内であっても油断はできません。
赤血球数の基準値の幅は非常に広いので、女性の場合 380~500×10^4個/mm3、上限の方と下限の方では、120万個ものヘモグロビンの数の差が出て来るわけです。
いくら正常値内とはいわれても下限値に近い場合には、赤血球不足状態になっているのです。
漢方の世界では、人間は「気・血・水」という3つの構成成分で出来ているといわれています。
これらのバランスが整い、はたらきがしっかりしていれば、体は病気にならない丈夫な状態を維持することができます。
その中でも「血」は栄養素や酸素を運び、生きていく上で絶対に欠かすことができない存在です。
よく、「血液さらさら」と言いますね。血液がドロドロしているため、さらさらにして流せばよいと思われがちです。でも、そもそもの「血の量」が足りなかったら、どんなにさらさらにしても全身に十分に行き渡りません。
汚れを水で流すことを考えてみてください。どんなにさらさらの水でも量が足りなければ、汚れを流しきることはできませんね。
血液の質も大事ですが、血液の量を増やすことの方が大事なのです。
漢方の世界では、この血が足りていない状態のことを「血虚」(けっきょ)と言います。血虚となると次のような症状が出てくることがあります。
・顔色が青白い
・肌のうるおいが足りない
・乾燥する
・漠然と不安になりやすい
・目が疲れやすい、視力が落ちてきた
・爪が割れやすい
・立ちくらみ、めまいがする
・足がつりやすい
・物忘れが増えた
・よく夢をみて熟睡感がない
・コロコロ便の便秘である
・手足がよくしびれる
・経血の色が薄いまたは量が少ない
そして、血が足りないと、全身に血が届かないので、手足などの末端が冷えがちになります。血が酸素と栄養を届けて、末端を温めてくれます。
冷えが強いという方は、温めることも大事ですが、血を補うことも重要なのです。
「女性は肝を先天とする」という言葉があります。体の血の巡りを司り、血を蓄えている「肝」は、特に女性の月経とも大きな関係があるのです。
毎月の生理がきちんと来る、排卵があるという大事なことは「肝」の働きのおかげ。 肝には、「気」の力も大きく関わります。
肝の働きが衰えると、気血両方のめぐりが悪くなり、イライラしたり、生理周期が乱れたり、生理痛が強くなったりという不調が起こります。
だから、女性は「肝」をいたわることもとても大切なんです。では血を補い、肝を癒すにはどうしたら良いでしょう。
まず浮かぶのは、「レバー」でしょう。レバーはご存知のとおり、肝臓です。漢方でも「肝は血を蔵す」といわれるように、血を蓄える場所と言われています。
だからレバー(肝)を食べることは、貧血によいと薬膳の世界でも勧められています。
でも、安全なレバーを食べなければ、汚染などの問題もあり逆効果になり得ます。以前にも生レバーによる食中毒などの問題が話題となりましたよね。
それに、ベジの方や、肉は食べてもレバーは食べたくないという、レバー嫌いの方も多いはず。わたしもかつて貧血でした。そして、レバーは大の苦手・・絶対食べたくありませんでした。
でも、レバーにこだわる必要はなかったんです。血を補ってくれる食材は他にもたくさんあります。
「血虚」におすすめの食材は、黒い食材と赤い食材
薬膳や漢方では、「弱い部分を、その部分と同じ色の食材で癒す」という考え方があります。
血が不足している時には、「赤い食材」と「黒い食材」を積極的にとるとよいです。
赤い食材としては、「クコの実」がおすすめ。
ゴジベリーという呼び方でスーパーフードとして近年話題になっていますが、漢方の世界ではもう何千年も前から当たり前の存在。
「上薬」といって、どんなに食べても良いといわれている薬効食材なのです。おやつの代わりに食べたり、お茶に入れたり、料理に使ったりして、どんどん食べましょう。
黒い食材としては、前回もご紹介した「黒米」「黒きくらげ」「ひじき」「しいたけ」などもおすすめです。
黒豆といえば、甘く似た煮豆でおせち料理にも登場する、縁起物です。ほくほくしていて、甘みがあり美味しいですよね。
しかし、あまりアレンジの仕方がわからず、使いこなせないという方も多いでしょう。お正月も黒豆ばかり残る・・という事態が起こりがちです。
でも、黒豆は本当にすごい食材なので、おせちだけではもったいないんです!黒豆には素晴らしい効果があるんですよ。
<黒豆の性質>
五味・五性 甘/平
帰経 脾・腎
血虚・瘀血・水滞・冬
秋から冬などの寒い時期に必要な「甘み」を持ちます。平性というのは、冷やしも温めもしないという意味。
帰経とは、体の五臓のどこに働くかということ。
胃腸を意味する「脾」を癒し、腎臓や生命力の源を意味する「腎」を癒してくれる「補腎」の効果があります。
冬に衰えがちな「腎」には黒豆が最適な食材
特に、冬は「腎」の働きが低下して、足腰が冷えたり、生命力が落ちやすい時期になります。腎は、水分代謝だけでなく、「精」といわれる、生命エネルギーや生殖力にも関係する大事な部分です。特に、女性は腎の働きが衰えると、老化が気になったり、不妊といったトラブルを抱える可能性もでてきます。
黒豆は「腎」をいたわる最強食材とも言われています。見た目にも腎臓っぽい形をしていて、黒々しい感じが、まさに腎に効きそうな印象を与えています。
そして、黒豆には「血虚」を癒す、血を補う作用「補血」作用もあります。貧血気味の方や、経血量が多い方、また万年冷えに悩んでいるような方に大変おすすめです。
さらに、血虚だけでなく、血液がドロドロで巡りが悪くなっている「瘀血」
むくみや体に余計な水分を溜め込む「水滞」にも効果があるので、全身の巡りがよくなるのです。
黒豆の黒色はアントシアニンの色素によるもの。
アントシアニンにはアディポサイトカインという内臓脂肪から発生する高血糖や高血圧に関わる物質を抑制し、さらには動脈硬化を抑制するという効果も知られています。
また、黒豆に豊富に含まれるサポニンには、血中コレステロールを低下させる作用もあります。また、アントシアニンとビタミンEによる抗酸化作用もあることがわかっています。
ある実験によると、黒豆、黒大豆双方ともにDPPHラジカル補足能を有している。
LDL酸化の観点からアテローム性動脈硬化を防ぐ可能性が考えられた
また、黒豆はほとんど大豆と同じような栄養成分を持っており、イソフラボンも含んでいます。女性のホルモンバランスによる不調、更年期障害などにも効果が期待できるのです。
黒豆は、あまくお砂糖で煮て食べるのが一般的ですね。黒豆といっても、「黒千石」「黒丹波」「光黒」などさまざまな品種があります。
黒豆の皮は硬いので、重曹を使って煮る方法が昔から行われています。砂糖と一緒に煮てつくる煮豆も美味しいけれど、どうしても砂糖の摂りすぎが気になります。
甘くない!シンプルほくほく黒豆の作り方
【材料】
黒豆 100g
重曹 ほんのひとつまみ
自然塩 小さじ2分の1
【作り方】
1.あらかじめ400mlの水に一晩つけておく。
2.そのまま水は変えずに火にかけて煮る
3.重曹と塩を加えて沸騰したら、灰汁を摂りながら弱火から中火で1時間ほど煮る。
4.好みの硬さになったら完成です。
黒豆の黒い色は水につけることで抜けやすいので、浸水するときに一緒に釘を入れておくと良いといわれています。
でも、綺麗な釘がなければ入れずに作っても十分に栄養はとれますよ。
塩で味付けただけの黒豆は、サラダのトッピングにすると、一気に見た目にも健康的な薬膳風サラダになります。
ビーツや紅芯大根などをスライスしたものと合わせて、「赤と黒」を取り入れてみて。
ミネストローネにすれば、トマトの赤と、黒豆の黒を同時にとりいれることができます。
カレーに入れたり、白和えに加えたり、大豆やキドニービーンズなどの代わりに使ってみてくださいね。
冬には、常に黒豆を冷蔵庫にストックしておいて、血を補い、腎をいたわっていくことが、養生にもつながります。
<おせちには、しわしわ黒豆 >
”マメマメしく、しわしわになるまで長生き”
縁起もの 「マメマメしく しわができるまで長生きをする」という意味があります。
しわのない煮る方 と しわありの煮方の違い
○煮る前に 調味料と重層を合わせて漬けておき 時間をかけて弱火で煮、煮汁につけたまま一晩置くのが しわのない煮方。 黒豆が煮汁から顔を出さないようにすることもポイント
○煮る前に重層と水で24時間つけて戻し 強火で煮て水が半分になったら砂糖を加え最後にこいくち醤油をたらすのが しわのある煮方。 です。
*煮豆に重層を使うといい点・悪い点
メリット: アルカリ性なので 黒豆の黒が反応してより黒くなり+表皮の繊維が軟らかくなる+内部も膨らみ調味料が浸透しやすくなる
デメリット: ビタミンB1が減る
料亭では 「黒豆を煮ない」のだそう。
煮ない?! どうするのか・・・・ そう、蜜に漬けこむのだ。濃い蜜に漬けこんだら、浸透圧の原理で豆から水分がでてしわがよる。
◇黒豆煮~しわ有り・歯ごたえ有り
黒豆250g
水800cc
☆砂糖(きび砂糖)180g
☆みりん 50cc
☆醤油大さじ1
☆錆びたくぎor鉄玉子適宜
黒豆は、皮をこすらないよう優しく洗い、水に5時間程度浸水(熱湯なら2時間でOK)1日以上漬けると逆に煮えにくくなります。
☆を鍋に加え、中火で沸騰させます。沸騰したら、火を弱め(蛍火)で煮て行きます。
渋みの原因になるので、アクは丁寧に引きます。初めて煮る場合、アクの多さと色(グレイ!)にびっくりするかもしれません。
灰汁は、2度ほど取ったら大丈夫です。アクひき用のお玉があると便利です。→煮汁も減りません。
あとは、クッキングシートを鍋の大きさに切り、真ん中を開けて落とし蓋にし、1.5~2時間、豆が柔らかくなるまで煮ます。
途中で豆が煮汁から顔を出してもOK。そのままお鍋で冷まします。冷めたら豆が締まり、しわが寄るのです。
黒豆と一緒にお餅をチン。ほうじ茶と一緒に。もっと艶が欲しければ、水飴を加えるとよいです。その分砂糖を減らします。
◇シワシワ黒豆
黒豆 300g
☆ぬるま湯 1リットル
☆砂糖 2カップ
☆しょうゆ 大さじ3
☆塩 小さじ1
☆の材料を鍋にかけ、砂糖を溶かす。
冷めたら黒豆を入れ、一昼夜つけておく。
2時間ほど鍋で炊いて煮詰め、ひたひたになるくらいまで減ったら火を止めて出来上がり。
◇黒豆(シワあり、歯ごたえあり)
黒豆 250g
砂糖 200g
醤油 大さじ2
水1.5リットルくらい
1黒豆を洗ってざるにあげます。
2鍋に水、砂糖200g、醤油を入れて沸騰させます。洗っ