栄養学をちょっと俯瞰する
昨今、栄養学の見直しやエネルギー代謝の重要性が問われています。
例えば、朝からパンと牛乳、昼は牛丼屋やかつ丼、おやつにジュースとケーキ、夜はアルコール&ラーメンみたいな生活を送っている人には、栄養の重要性や精製糖・添加物等の回避を認識してもらうと、体調はかなり良好になるでしょう。
ビタミン&ミネラルの重要性、タンパク質&脂質の重要性を知れば、割と多くの人が意識し始めるでしょうし、食事の内容も変わってきます。
ところが、例えば、大量生産の加工食品はどうしても加工過程で栄養素が脱落することがあり、これでは栄養が満たされているか心配です。さらに滋養のある食材は高価であるため家計を圧迫します。そこで、頼ってしまうのが、サプリメントです。
サプリメントは食品と違って摂取用量がわかりやすく、比較的安価であり、なんといっても習慣化しやすいものです。さらに、栄養学的必要量はとんでもなく多量であり、たとえばビタミンCサプリの摂取用量をレモンに換算すると50~100個分もあります。
栄養欠乏者や治療中の患者さんは別として、健常者が予防的に果たしてここまでする必要があるのかということです。これは、今後、私の最も力を入れている課題&調査事項です。
というのは、がんや糖尿病がほとんどない先住民族(狩猟採集民など)、ピンピンころりで人生を全うしている長寿村などの生活を見れば、サプリメントに頼っている人は皆無であり、では食事性だけでそれだけの栄養量を毎日規則的に摂取しているかというとそんなことはありません。
彼らの生活において、たとえばビタミンB1を150mgを食事性だけで摂取すると言うのは不可能であり、たとえばビタミンC数gを食事性だけで摂取すると言うのはやはり不可能なのです。
ヒトの体には腎臓のように体液を調整し、尿細管で再吸収する機構があります。
たとえば、ビタミンCをあまりとらないマサイ族の身体調査では、尿細管でビタミンCを再吸収してリサイクルされていることなどわかっています。
ミネラルについてもそうです。ちなみに、やはり野菜をあまり摂らないモンゴル遊牧民もビタミンCの尿細管による再吸収が指摘されています。
もちろん、私たち文明人を、土着的な生活やたくましい肉体をもつ彼らと比較したり、全てあてはめて考えるのはナンセンスです。
あまりにも生活や食事内容が異なるからです。とはいえ、同じ人類ですから全く無視もできません。
今は分子栄養学やエネルギー代謝における生化学が見直されているのはとても良いことだと思いますが、気がつけばあまりにも不自然なサプリ生活や、スーパーフードや健康食品だらけの生活を送らなければ、果たして真の健康は得られないのでしょうか。おそらく、そんなことはないはずです。
栄養素の重要性を再認識し栄養欠乏を解消したら、もっと自然な食生活を送る方法があるのではないでしょうか。
サプリ、スーパーフード、健康食品、これらは文明人の知恵だとは思います。
きっと何かしらの役には立つでしょう。実際に私もお世話になっています。
しかし、これらがもてはやされ、大事な何かを見落として先に先に進んで行っているようにさえ思う時があります。
アフリカを起源とする人類は、アフリカを出て、いわやるグレートジャーニーにより地球のあらゆる場所を開拓しました。
動物は土地や気候に適応できる多様性があり、その土地その土地で適応していった歴史と事実があります。
今の時代、栄養を見直すことはとても大事ですが、何か不自然に先走ってていっているように思えてならないのです。