腸内細菌のバランスが崩れると何が起こるのか
ヒトの腸は食べ物や外界からの病原菌などの異物に常にさらされています。しかし、腸管免疫はこのような宿主にとって排除するべきものと許容するべきものを選択しながら、500~1000種類、約100兆個といわれる腸内細菌ともバランスを保っています。
腸管免疫と腸内細菌叢との間で、ダイナミックな平衡関係が保たれることで、私たちの健康が成り立っています。「腸内細菌のバランスを保つことが健康保持の秘訣のひとつ」といわれるのは、こうした理由によるものです。
では、安定的に形成されていた腸内細菌のバランスが崩れるようなことがあったら、何がおこるのでしょうか?また、バランスが崩れるとは具体的にどのような現象なのでしょうか。
■腸内細菌バランスが崩れると、免疫力バランスも崩れ、様々な病気を誘発する
ヒトの腸管、小腸から大腸に重さ1.0~1.5Kg、その種類は500種類以上、その数は100兆個にもおよぶ腸内細菌叢(腸内フローラともよばれます)が共生していると言われています。
腸内細菌叢は、健康な人であれば、有用菌(善玉菌)20%~30%、有害菌(悪玉菌)10%、残りの60%~70%は「日和見菌」といわれる、良い働きも悪い働きもする菌種で構成され、腸管からの栄養吸収、腸の免疫、病原体の感染の予防などに重要な働きをしています。
ところが、遺伝的な要因、食事などを含む生活習慣、ウィルスやカビなど病原体の侵入、抗生物質の多用など種々の医療的処置などによって、腸内細菌のバランスが乱れると、クローン病や潰瘍性大腸炎をはじめとする、炎症性腸疾患などの原因となることが分かっています。
このように、腸内細菌のバランスの崩れると、免疫力のバランスの崩れを誘い、それが免疫力低下を引き起こし、様々な病気を誘発させます。さらに、炎症性腸疾患が慢性化すると、大腸がんの発症のリスクを高めます。
■腸内細菌バランスが崩れから、大腸がんの発症のリスクが高まるまでメカニズム
以前から炎症関連大腸がんの主な原因のひとつとして“腸内細菌のバランスの崩壊”が関与しているとの仮説があったのですが、最近の研究でそのメカニズムが次第に分かってきました。
◇何らかの理由で、腸内細菌叢のバランスが崩れると、大腸粘膜に常在する、異物から腸管を防御する働きをする腸内細菌叢が失われれる
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◇防御機構が十分に機能しなくなると、これまで近づけなかった腸管内細菌が、大腸粘膜面に押し寄せ、脆弱になった粘膜内への移行が起こりやすくなる
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◇すると腸管免疫系は“異物侵入”“異常事態”と認識し、免疫システムの初動部隊である樹状細胞が、侵入してきた腸内細菌の貧食を開始
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◇樹状細胞により、免疫の活性化のシグナルとなるインターロイキン(IL-6と可溶性IL-6受容体)が信号物質が放出され、本格的な免疫現象が働き出す。
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◇同時に、樹状細胞により放出された IL-6と可溶性IL-6受容体は、大腸組織の炎症反応の進行を促進し、病原性微生物を駆逐する。
ところが、IL-6と可溶性IL-6受容体は過剰な炎症反応を引き起こすことがあり、それが宿主の器官・組織にダメージを与えることもある。
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◇ それが炎症性腸疾患やがんなどの原因となる。
まだまだ腸管免疫系のメカニズムに腸内細菌がどのように関与しているか、という点に関しては未解明な部分が多いのですが、上の大腸がんの事例が示すように、少しずつ具体的な実態が明らかにされつつあります。
■腸内細菌バランスの崩れを引き起こす要因
「ストレス」「運動不足」「過度の清潔志向」「抗生物質を使った治療」「加齢」など様々な要因がありますが、特に大きな原因が『食の欧米化』だと考えられます。
日本で食の欧米化が進むのと比例して、大腸がんにかかる人が急増していることが分かっています。大腸がんが増えた原因の一つとして、高タンパクで脂肪分の多い食生活をすることによる、悪玉菌の増加とそれによる善玉菌の減少や腸内環境の悪化が考えられます。
有害菌は肉類などに含まれるタンパク質や脂質を腐敗させて、それをエサにして増殖します。腐敗したタンパク質などは、アンモニアやインドール、スカトール等の有害物質を発生させ、同時に発がん性物質を発生させます。
本来、食物繊維をしっかりと摂取していれば、有益菌の力で有害菌の増殖を抑え、有害物質などを体外へ排出することが出来るのですが、食の欧米化が進んだことで、動物性タンパク質の摂取量は増加する一方で、食物繊維の摂取量は減少してしまいました。
有害菌の増加と有益菌の減少、腸内環境の悪化によって有害物質や発がん性物質の発生が増加したことで、大腸がん発症リスクが増大します。
腸と体の健康を考えるなら、まずは食生活と生活習慣から見なおすことが必要なようです。
免疫力を高めるには、腸内細菌のバランスを整えたり、腸内環境の改善を行なったりして「腸」の機能を高めていくことが欠かせません。
なぜなら、腸という器官は栄養素の消化・吸収、排泄の働きをするだけではなく、免疫細胞が集中しているため、免疫機能に大きく関わっているからです。
小腸と大腸の粘膜には全身の約60%の「リンパ球」と呼ばれる免疫細胞が集まっているとされます。
そのため「腸管免疫」と呼ばれるほど、腸は人体で最大の免疫器官なのです。
ところで、腸管の内側のひだに存在する腸内細菌は、約100兆個と言われ、その種類は1000種類にも及ぶとされています。
その多様な腸内細菌の集まりの様子は近年「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と表現されていますが、実は「腸内フローラ」は免疫機能の維持や免疫力の向上に深く関係していることが分かっています。
腸内細菌は小腸と大腸のどちらにも司っていますが、それぞれ異なった働きをしています。
また、その役割も大腸と小腸で違ってきます。大腸内には善玉菌(ビフィズス菌・乳酸菌など)、悪玉菌(ウェルシュ菌など)、日和見菌(善玉菌にも悪玉菌にもなる)といった腸内細菌が、バランスよく存在することが私たちの健康は成り立っています。
■大切なのは腸内細菌のバランス
ちなみに東京大学名誉教授の光岡知足氏は、腸内細菌の善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスは「2:1:7」が理想だとしています。
もし便秘や下痢の症状に悩まされるようになったら、それは腸内細菌のバランスが悪くなり、腸管の免疫力が低下していることを知らせるシグナルなのだと考えられるのです。
また小腸の場合は、腸内細菌が大腸と比べると少なめですが、免疫力の向上と関係が無いわけではなく、むしろ小腸は腸管免疫の中枢だと言われています。
「免疫グロブリンA」と呼ばれる、免疫細胞群が病原菌を攻撃するための抗体は小腸で作られるそうです。
その免疫グロブリンAは、全身の免疫抗体の約60%を占めているとされています。
腸内細菌は「腸管免疫」(免疫系)とも深く関わっているため、小腸の腸内環境を整えることは、免疫力の向上だけではなく、アレルギー症状の改善にも大きく役立ちます。
近年、アレルギーの症状に悩まされる方が急増している背景には、実は小腸の免疫システムの異常が深く関係しているのです。
■「プレバイオティクス」と「プロバイオティクス」
大腸の腸内環境を改善するには、ビフィズス菌や乳酸菌に加え、整腸効果があり、腸内で発酵・分解されるとビフィズス菌などが増えて腸内環境が良くなるとされる食物繊維を多く摂るのが良いと言われています。
食物繊維には「不溶性」と「水溶性」 のものがありますが、特に整腸作用をもつのは海苔やワカメや昆布といった海藻に多く含まれている「水溶性」の方です。
ちなみにごぼうやかぼちゃなどに多く含まれる不溶性の食物繊維にも整腸作用があり、便秘の解消に効果的ですが、摂り過ぎると逆に便秘になってしまうことがあります。
したがって「不溶性」と「水溶性」 の両方をバランスよく摂ることが大切です。
また、オリゴ糖もビフィズス菌のエサになるとされているため、イソマルトオリゴ糖や乳果オリゴ糖などは、善玉菌であるビフィズス菌の数を増やして腸内環境を改善するのに有効です。
このような腸内細菌のエサとなる栄養成分が含まれた食品は「プレバイオティクス」と呼ばれており、この「プレバイオティクス」を送り込むことで善玉菌を増やしていくことは腸内環境を改善するのに役立ちます。
■乳酸菌の摂取は免疫力を高めるのに効果的
一方、ヨーグルトやヤクルトなどの乳酸菌飲料を摂ることで、乳酸菌などの有用菌を腸内に直接送り込む方法や、ビフィズス菌などの生きた有用菌が含まれた食品のことは「プロバイオティクス」と呼ばれています。
乳酸菌は腸管免疫に存在している「TLR」と呼ばれるセンサーを刺激することで免疫細胞を活性化すると言われているため、日頃からの乳酸菌の摂取は免疫力の向上に効果的です。
しかし「プロバイオティクス」に関しては、乳酸菌が活きているか死滅しているかよりも、数を重視しつつ、継続的に摂取し続けることが大切になってきます。
乳酸菌を腸内に摂り入れることは、腸内環境を確実に改善させますが、途中で止めてしまうと元に戻ってしまうのです。
また、近年は200億個以上の乳酸菌が含まれたサプリメントが多く販売されるようになっているため、それらの乳酸菌サプリメントを利用することも「プロバイオティクス」として効果的です。
さらに、「乳酸菌革命」のような食物繊維やオリゴ糖、酵母などの「乳酸菌生産物質」も一緒に配合されているサプリメントは、乳酸菌の働きを助けるため、腸管免疫を刺激したり、腸内細菌のバランスを整えたりするのに高い効果を発揮すると思われます。
ちなみに、大腸だけではなく小腸については、松生恒夫氏が「グルタミン」という非必須アミノ酸の一種が免疫機能を保ち、活性化するためのエネルギー源であるとしています。
グルタミンは生卵や刺身などの生魚に多く含まれており、40度以上の熱に弱いという性質があります。
ほかに腸管免疫を刺激し、腸内環境を刺激する成分としてはラクトフェリンが挙げられます。
■腸に良い生活環境を整えることが免疫力を高める
ところで、強いストレスや不安を感じたりすると、途端にお腹の調子が悪くなって下痢をしてしまう人は多くいます。
また、反対に便秘の症状も、実は過剰なストレスが最大の要因でもあると言われています。
腸はストレスの影響を受けやすく、脳と違って身体に分かりやすい反応をすぐに示してくれるのです。
さらに酵素で分解しきれないほどの食べ物の食べ過ぎによって消化不良が起こることも、腸内環境をひどく悪化させる原因になります。
そのため、腸の健康のためには日頃から腹八分を心がけたほうが賢明です。
他にも、冷たいものの食べすぎ・飲みすぎによって、お腹が冷えてしまうことも、腸内の環境を悪化させる大きな原因になりますので、普段からなるべく腸を温める習慣をもつことも大切です。
そのため、腸に良い生活環境を整えて、腸内環境を改善してあげることが、免疫力を高める最大の秘訣だと思われます。
私たちの体の中を流れる血液の成分に、「白血球」というものがあるのはご存じですか?
この白血球の中には、たくさんの細胞が存在しているのですが、それらは「免疫細胞」と呼ばれ、外部から侵入してきたウイルスなどから私たちの体を守ってくれています。
また、外部からのウイルスだけでなく、私たちの“体の中”から生まれる異常からも守ってくれているんです。
免疫細胞の7割は「腸」でつくられ、3割は「心」でつくられる!
この免疫細胞ですが、体のどこでつくられているかご存じですか?
実は、免疫細胞の7割は「腸」でつくられ、残りの3割は「心」でつくられているんです!
「心」というのは自律神経のこと。
自律神経が弱まると、風邪をひいたり体調を崩しやすくなるのは、免疫細胞が弱まるからなんですね。
「心」と免疫細胞の関係についてはあとでお話ししますので、まずは「腸」と免疫細胞との関係についてお話しします!
免疫細胞の7割は私たちの「腸」に生きているとお話ししましたが、実は、免疫細胞が元気に暮らしているのは、腸に住む「腸内細菌」のおかげなんです!
腸内細菌とは、腸に棲みついた「菌」のこと。
「えっ!?菌のおかげ!?なんだか菌って体に悪そうな響きがするんだけど・・・」と思ったのなら、あなたは菌のありがたみを知らなければなりません!
実は腸にいる細菌は、NK細胞をはじめとした免疫細胞を鍛えてくれているんです。
いわば、免疫細胞が強くなるためのトレーニング相手。
そのトレーニングとは、体の中にいるほかの菌と闘うための模擬戦のようなもので、トレーニングをクリアした免疫細胞だけが、体の中をパトロールできるようになるんですね。
あなたは腸の長さってご存じですか?
実は、腸の管は、伸ばすと10メートルもあります。
それはテニスコート1面分に相当するほどの長さなんです。
そんな広い腸の中には、たくさんの腸内細菌が棲みついています。
約100兆個(!)、種類でいえば数百種類の細菌が暮らしています。
それら細菌がつくる寝床(集落)はとても美しく、ギリシャ神話の花の女神の名称をとって、「腸内フローラ」とも呼ばれているんです。
とっても神秘的ですね。
ヒトの腸管内では多種・多様な細菌が絶えず増殖を続けています。
これらは腸内細菌と呼ばれ、個々の菌が集まって複雑な微生物生態系を構築しています。
この微生物群集を「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(そう)」と呼んでいます。
フローラ(Flora)は分類学の用語で植物群集を指しますが、かつては細菌が植物の中に分類されていたためです。
また、ギリシア神話の花の女神をも意味しています。
腸内細菌の数はおよそ100兆個、その種類は一人あたり数百種にのぼり、その構成は食習慣や年齢などによって一人ひとり異なっています。
腸は「第二の脳」と呼ばれ、大脳と同じくらいの神経細胞が集まっています。
しかも、脳にはできない“ある判断”をおこなうことができるんです。
それは・・・「食べ物が安全かどうか?」の判断をおこなうことです!
脳が「美味しそうだな~」と思って口に入れたものが、もしも体に悪かった場合、腸が「この食べ物はダメ!」と判断して、外へ排泄してくれるんですね。
そのため、「腸は脳よりも賢い」といわれる場合もあります。
つまり、腸内細菌を増やすということは、そんな大事な場所の環境を整えていくということだと覚えておいてください。
腸内細菌の増やし方としてオススメなのは、以下の5つの方法です。
1、ビフィズス菌が入った飲料や、乳酸菌飲料を飲む!
ヨーグルトや乳酸菌飲料などの「ビフィズス菌」や「乳酸菌」を含む食品を直接摂取すると、腸内細菌の増加につながります。
2、発酵食品を食べる!
漬物、ヨーグルト、チーズなどには「乳酸菌」がいます。そして、味噌には「麹菌」がいますので、これらの発酵食品を食べると、腸内細菌の増加につながります。
3、腸内細菌の“餌”となる「オリゴ糖」「食物繊維」を含む野菜を多く摂る!
「オリゴ糖」や「食物繊維」は、胃で消化・吸収されることなく大腸まで達します。そして、腸内細菌の栄養源となります。
これらの成分は野菜や果物類、豆類などに多く含まれているので、野菜をしっかり食べるようにしましょう。
特に、ゴボウ、大根、レンコンはオススメです!
4、食事を工夫し、腸内細菌を減らさない!
加工食品などの“食品添加物の多い食品”は避けましょう。
というのも、“保存料などの食品添加物入りの食べ物を摂取すると、腸内細菌が減るかもしれない!”といわれているからです。
保存料で使われる「ソルビン酸」という成分は、食材の中に混ぜておくと腐敗の進行を止める作用があります。
そのため、ハムやソーセージといった加工食品に使われるようになりました。
ですが、最近の実験で、ソルビン酸を使うと細菌が増殖できない、ということが分かったのです!
そのため、ソルビン酸のような添加物を含む食品を摂ると、腸内細菌も増えにくくなるのでは?といわれています。
5、潔癖になりすぎない!
腸内細胞を増やすためには「土壌菌」を取るとよいという意見があります。
土壌菌とは、いわゆる土の中に存在する微生物のことで、この菌を取り入れることで、腸内細菌が増えるといわれています。
間違えてほしくないのは、「積極的に土壌菌をとりましょう」ということではありません。
世の中の動物は、草木やお肉に多少の土がついていても食べます。
そうすることで、腸内細菌を増やし、いろいろなものを体の中で分解するための力を身につけるのです。
例えば、生まれたばかりのパンダの赤ちゃんは土をなめ、お母さんのウンチをなめるそうです。
パンダは「笹」を消化する酵素を体内にもっていないため、腸内細菌で笹を分解しています。
そのため、パンダが生きていくためには腸内細菌を育てることが必須となり、パンダの赤ちゃんは本能的に腸内の細菌を増やそうとがんばるわけですね。
私たち人間も、腸内の細菌の低下を防ぎ、免疫力を落とさないために、潔癖になりすぎずに生活することが大切なんですね。
実は、生まれてすぐアトピーになる赤ちゃんの腸内細菌の数は非常に少ないことがわかっています。
アトピーなどの疾患にかかってしまう原因は、腸内細菌が少ないことで、免疫力が低下しているためだといわれています。
赤ちゃんが免疫力を身につけるプロセスってご存じですか?
赤ちゃんはお母さんの胎内にいるときは無菌ですが、お母さんの産道を通ってこの世に誕生した瞬間に免疫力を身につけます。
産道を通る際に、ラクトバチルスやビフィズス菌といったいわゆる「善玉菌」と、大腸菌やクロストリジウムなどの「悪玉菌」と呼ばれる腸内細菌が赤ちゃんの腸内に棲みつくんですね。
日本人の腸内細菌の数は大幅に減少しているそうなんです。
戦前の日本人のウンチの量は一回あたり400グラムだったのですが、今の日本人は200グラムほどになり、約半分に減ってしまったとのこと。
これは、戦後、日本人の食生活が欧米化し、野菜の摂取量が減少したことが原因だそうです。
野菜の摂取量が減れば、ウンチの量が減るだけでなく、腸内細菌の“餌”がなくなり、腸内細菌の数が減ります。
そうなると、免疫細胞のトレーニング相手がいなくなり、結果的に免疫力の低下が起きるんです。
医学は戦前よりも進歩し、人々の寿命は延びたものの、食生活の欧米化により免疫力は落ちてしまった・・・。
そんな皮肉な状況が生まれてしまっているんです。
この記事の途中でお話しましたが、腸は「第二の脳」ともいわれています。
腸がハッピーでないと、免疫力は低下し、心身が不安定になります。
その結果、イライラする人が増え、人間関係、ひいては社会全体に悪影響が出てくるでしょう。
現代の日本が「殺伐としている」といわれるのは、一人ひとりの体の中にいる腸内細菌が減ったからなのかもしれませんね・・・。
ちなみに、太古のアメリカ先住民族のウンチは、一回あたり800グラムもあったそうです!
太古の人は大きなウンチをしていたんですね・・・!
ウンチが大きいということは、腸が元気ということ。
腸が元気な人は心身が安定していますから、きっと「ガハハハ~!」と大笑いするような、明るい方が多かったのかもしれません。
「心」を大切にして、免疫力を上げよう!
最初の方で、免疫細胞の7割は「腸」でつくられ、残りの3割は「心」でつくられるとお話ししました。
つまり、心が乱れると、免疫細胞の量が減少し、病気にかかりやすくなることが分かっています。
ストレスが溜まると体調を崩しやすいのは、まさに、ストレスにより免疫細胞が減ってしまったことが原因なんです。
先程、腸は「第二の脳」であるとお伝えしました。
実は、私たちを幸せな気持ちにしてくれる神経伝達物質である「セロトニン」は、脳ではなく、腸の中でその大部分が合成されています。
例えば、「うつ病」はセロトニンの減少が原因で発症する病気です。
つまり、腸の調子が悪くなると、セロトニンの生成量が減り、うつ病になりやすいということが分かります。
腸の調子を良くするためには、ストレスを減らし、心をリラックスしてあげる必要があります。
そこでオススメしたいのが、たくさん笑うこと。
笑うことは最高のリラックス。
笑うことで、ストレスは減り、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)をはじめとした免疫細胞がどんどんつくられるようになります。
その結果、セロトニンが増え、うつ病の予防にもつながるんですね。
腸内細菌が鍛えた免疫細胞は、血液に乗って身体中をパトロールしています。
そのため、体温が低くなって血流が悪くなってしまうと、免疫細胞が本来の力を発揮できなくなってしまいます。
たとえば体温が一度下がった場合、免疫力は30%も下がってしまうと言われています・・・!
免疫細胞が本来の力を発揮するためには、体温を高く保って血流がいい状態にしておくことが大事です。
体温低下の主な原因は、筋力の低下と身体の冷えです。
その2つを防止して、体温を上げる生活習慣を身につけましょう。
1.1日で合計30分以上歩く
日常的に運動する習慣がないと、筋肉量は少しずつ減っていきまいます。
ですから、筋肉量の低下を防ぐために、1日で合計30分以上歩きましょう。
たとえば、一駅分歩いたり、犬の散歩をしたりするなど日常生活にうまく取り入れていきましょう。
またウォーキングが一番効果的な時間は、体温が低い朝です。
ウォーキングに慣れてきたら、朝の散歩がオススメです。
2.湯船につかって入浴する
湯船に10分ほど浸かると、体温が1度上がります。
もちろん平熱が急に1度上がるわけではないですが、体温を上げる生活習慣を取り入れていくと冷えない身体づくりができます。
忙しい日でもシャワーで済ませずに、なるべく湯船につかるようにしましょう。
3.温かい飲み物を飲む
温かい飲み物を飲むことも、体温アップに効果的です。
特に体温が低い朝は、温かい飲み物を飲んで身体を内側から温めましょう。
また、氷が入っているような冷たい飲み物は、なるべく避けるようにしましょう。
身体を冷やさずにしっかり温めてあげると、免疫細胞が体内で大活躍してくれます!
また体温が上がる効果は、免疫力アップだけではありません。
基礎代謝があがって太りにくい身体になったり、腸の運動が活発になって便秘が解消できたり、いいことずくめなんです!
生活習慣を改善して、体温を上げる生活をしてみてくださいね。
免疫力をアップするためには、「腸」と「心」が重要ということがご理解いただけましたか?
最後に、今回の要点を以下にまとめてみました。
以下の8つの要点をぜひ覚えておいてくださいね。
・腸内細菌を増やすことを考えて日常生活を送る!
・「ビフィズス菌」が入った飲料や、「乳酸菌飲料」を飲む!
・チーズや味噌などの「発酵食品」を食べる!
・ゴボウや大根、レンコンなどの「野菜」を多く摂る!
・食品添加物の多い食品を食べ過ぎない!
・食品の汚れを過度に気にしない!
但し、人体に影響のある物質などによる汚れがついている場合は食べないように!
・ストレスをためないように、たくさん笑う!
・身体を温めて、体温を上げる生活をする!
病気は腸からやってくるなんていいますが、たしかに腸内細菌は重要です。最近は過分に訴えられているので要注意なのですが、この腸に対して休息を取らせる方法が断食だといえるでしょう。
また断食は休息だけでなく、宿便、腸内細菌の変化、精神面での影響、などにも関係してきます。千島喜久男教授も「食べたものが血となり、肉となる」と述べています。
単細胞生物には脳は存在しないが腸は存在します。人も受精すると腸、脊椎、目が最初にでき、最後に脳がつくられます。「脳腸相関」といって、脳と腸はつながっていると考えられています。
人の小腸にある、絨毛、微絨毛を広げるとテニスコート一面分もの面積になります。このテニスコートの腸絨毛という栄養を吸収する器官を合わせるとその数なんと3,000万本です。
そしてその絨毛一本一本に栄養を吸収する穴があり、1本あたり5,000個程と言われています。腸絨毛は3,000万本ですので、1,500億個の栄養吸収細胞があります。そして腸絨毛一本一本に神経が通っていて、その一本一本に反射区あり、腸は脳をはじめ、身体の器官全てと繋がっています。脳の神経細胞は大脳、小脳合わせると1000~2000億と言われています。
腸は別の脳といっても過言ではありません。そして人の感情はお腹からやってきます。「腹が立つ」「はらわた煮えくりかえる」「腹黒い」「腹で何考えているかわからない」「腹いせ(腹癒せ)」などなどアレルギー、アトピーで悩む子どもの腸内細菌は極端に少ない事がわかっています。
体内の全ての粘液は短鎖脂肪酸から作られます。短鎖脂肪酸は水溶性食物繊維が腸内細菌の力による好気性発酵でつくられます。この短鎖脂肪酸をもとに体中の粘液が作り出されます。
人にとって超(腸)~大切な腸内細菌は100種類の100兆個といわれた時代がありました。それが400種類400兆個、研究が進むにつれ今では1,000種類1,000兆個とまで言われています。他に腸内細菌はビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸)やビタミンKを産生したり、栄養学的に様々な有用成分を作り出していることが解かってきています。
また、分泌物をアミノ酸などの身体に有用なものに変える菌もいます。
「脳はバカ腸はかしこい」なんて本もありましたけど、腸は消化だけでなくホルモン分泌、免疫調節、造血機能などさまざまな機能を備えています。
そもそも腸は脳よりも先に作られる臓器であり、働きは脳に匹敵します。そして昨今死因の第一位は大腸癌ですがこれも当然ながら理由があるわけです。
腸内細菌は説にもよりますが数百兆個とも言われています。
人間の便には1g当たり1兆個の細菌がいるといわれ、便の量自体も減っていることが統計的にわかっているそうです。ある説では戦前は一日平均300gで現代は200g~150g低度とか。
日本人の便の腸内細菌も減っていることが推測され、それは抗生物質だったり殺虫剤だったり水道水だったりが原因です。皮膚は洗い過ぎれば洗いすぎるほど汚くなることがわかっていて、あるデータでは皮膚病の1/3は洗い過ぎだったそうです。
ちなみに抗生物質や殺虫剤などを使うことで耐性菌が出現し、それが社会にはびこって大きな病気をもたらすこともあります。
O-157などはその代表格ですが、だからあの菌には薬が効きにくいわけで、要するに人類が作り出したものでしかありません。ちなみにO-157は米、日、仏、英、カナダ、北欧等の清潔な国にしかないんだそうです。
ちなみにうんこというのは食べカスだと思っている人がいるようですが、実際には食べカスなのは少しであって、ほかは腸内細菌の死骸と腸粘膜の死骸です。うんこが大きいほど健康になりやすいという説もありますね。
さらにいうと腸内細菌とは少し離れますが、女性の膣の中にはデーデルライン乳酸菌がいて膣を守っています。これが膣のグリコーゲンを餌にして乳酸を作って、強力に膣の中を酸性にして雑菌が入らないようにしているわけです。最近はビデで洗いすぎて膣炎になっている人が多いそうですが、これも清潔病のなせる業ということになります。
洗わない、単一の菌類を摂らない、日本の発酵食品を食べる、というのが結局のところ腸内細菌にいいわけですが、間違っても「生きたまま腸に届く」とかいう、不健康な健康食品類に手を出さないよう願っております。
*NPO法人 薬害研究センター 理事長、Tokyo DD Clinic 院長、NPO法人 薬害研究センター 理事長
なぜ現代人はマイクロバイオータのバランスが崩れてしまったのでしょうか。
その原因の一つは、抗生物質の処方の乱用によるものです。抗生物質という強力な薬は、健康を害する細菌を殺すだけではなく、健康を保つ細菌まで殺してしまうのです。
そればかりではありません。抗生物質の70%が食肉用家畜に使われており、私たちは多量の抗生物質を口から摂取しています。抗生物質を使えば、感染症を心配せずに狭い場所に多くの家畜をつめこむことができるし、おまけに抗生物質には成長促進作用があるので、企業としては、肥えた家畜を大量に生産できるメリットがあるわけです。
長い間かけて築いてきた母から子への腸内細菌の移植(自然分娩)が、帝王切開や粉ミルク使用のため、妨害されてきている事実も指摘しています。
「破水と同時に微生物の入植がはじまる。赤ん坊は産道を通るとき、微生物のシャワーを浴びる。ほぼ無菌状態だった赤ん坊を膣の微生物が覆っていく。母から子への最初の贈り物、糞便と膣の微生物が無事に届けられる」
こうして赤ん坊の腸内に棲みついた初期のコロニー(腸内細菌の入植地)は、数か月あるいは数年かけて発展していくマイクロバイオータの基礎となるという。
「問題は、多くの赤ん坊が母親の膣を通らずに生まれてくることだ。帝王切開で生まれた赤ん坊は感染症になりやすく、アレルギーを発症しやすい」
そこで、帝王切開で生まれてくる赤ん坊に対して、膣の微生物を移す臨床試験も行なわれています。手術前に妊婦の膣に入れておいたガーゼを取り出し、赤ん坊が出てきたらそのガーゼで、口、顔、全身をこするという方法です。
「母乳に含まれるオリゴ糖と生きた細菌が腸のマイクロバイオータの『苗』を育てる役割を果たし、赤ん坊の成長に合わせて変わるのだとすると、粉ミルク育児ではどうなるのだろう。残念ながら現代の粉ミルクは重要な栄養成分がたくさん加えられているが、免疫細胞や抗体、オリゴ糖、生の細菌までは入っていない」
粉ミルクで育つ赤ん坊は、感染症にかかりやすく、また過体重になりやすいという。粉ミルクだけで育った子どもは、大人になってから60%も多く糖尿病を発症するといわれています。
腸内細菌は1000種類以上存在しています。数にして100兆個が私たちの腸に共生しています。
私たちの体内の細胞の90%以上を腸内細菌が占めていることになります。その中でも有用微生物は腸粘膜の成長や機能に深く関与しています。
更に共生している腸内細菌が肥満、慢性炎症、ガンなどの発生に深く関与していることが最近になって分かってきました。
腸内細菌の種類は特定の病気と関係しているのです。腸内細菌の種類は、加齢とともに個人差が大きくなることが知られています。
興味深いことに、施設に長期入所している高齢者は そうでない健康な高齢者に比べて腸内細菌の多様性が少なく、それが病気に罹りやすいなどの脆(もろ)さに関係していることが分かりました。
これはまさに現在の農薬・化学肥料を多用する農業や遺伝子組み換え作物栽培にみられる単一作物栽培が、ちょっとした環境の変化に脆いことと同じです。
腸内細菌のある特定の種類が増殖すること、そして一方で有用微生物を腸内にキープすることは、ガンの原因となるガン誘発物質や慢性炎症となる自己免疫誘発物質の腸からの侵入を食い止める作用があります。
腸の粘膜細胞は、隣同士が強固に結合して隙間をなくしています。これは腸から異物が体内に入ることを防ぐ重要な防護壁となっています。
しかし、何らかの原因で腸の粘膜がダメージを受けると、腸の粘膜細胞間に隙間ができて、そこから異物が体内(腸の血管内)に入ってきます。
この現象を「リーキーガット」といいます。
2013年のマウスのカロリー制限実験では、そのリーカーガットから慢性炎症を起こす原因になる「リポ多糖類」と結合するタンパク質の血中濃度が低下することが報告されました。
「リポ多糖類」は、バクテリア(グラム陰性菌)の細胞壁成分で強い炎症を起こすために内毒素(ないどくそ)といわれています。
その「リポ多糖類」と結合するタンパク質が低下すれば、血液中で強い免疫反応が起こらなくなるため炎症が起こりにくくなります。
慢性炎症が低下すればガンの発生率も低下してきます。
カロリー制限で腸内細菌が変化し、リーキーガットからの炎症が低下することもガンの発生・増殖を減らすことに少なからず貢献しているのです。
原始人食は、炭水化物が少ない食事内容です。
実は糖質の高い炭水化物は、病原性微生物のエサとなるため、相対的に腸の有用微生物が減少してしまいます。
また、原始人食ではリーキーガットの原因となる高カロリー加工食、豆類、乳製品などを制限します。原始人食によって腸内の有用微生物を増やすことでガンの発生・増殖をブロックすることができるのです。