脱公害食品とは、公害物質を含まない食品であることと、その食品が積極的に公害物質をも排除していく働きをもっているということです。そのとき大事になるのは、その食品が、腸内細菌に対してよい影響を与える食べものであることです。
すなわち食べものに含まれる有害物質のことだけでなく体内に入ってから、それがどのように処理されるかが問題なのです。
公害物質をどの程度スムーズに処理できるかは自衛体制に帰するという訳。
そのためには、玄米・菜食に加えて、胚芽、葉緑素、酵素、朝鮮人参、ローヤルゼリー、ゴマ、海藻などの摂取が重要になります。
脱公害食品とは、公害物質を含まない食品であるということが、まず第一の条件であるが、それと合せて、その食品が積極的に、いろいろな公害物質を排除していく働きをもっていることも不可欠な条件だ。
公害物質を排除していく働きと一口にいっても、いろいろな面があるもので、特に大事な問題となるのは、腸内の常在細菌に対してよい影響を与える食べものでなければ、それは優れた栄養食品とはいえず、と同時に優れた脱公害食品とはなり得ないということである。
したがって、まず、この重要性をもった腸内細菌について、少しふれておこう。
腸の中でわれわれと共存している常在菌というのは、つい最近まで、その正体が良くわからなかった。腸の中のバクテリアというのは、ほとんどが嫌氣的な性格を持っており、空氣、とくに酸素を嫌うという性質をもっている。従来の培養方法がうまくいかなかったのも、この嫌氣的な培養条件を十分に整えることができなかったからだ。
しかし、最近になって空氣の出入りを防いで、大氣中の酸素にもあまり接触させることなく、腸内そのままの状態でバクテリアを培養するという、嫌氣的な培養法が完成されたため腸内微生物の実体をかなり正確につかむことができるようになった。
いままでの好氣的な培養条件だと、細菌の数は1億個ぐらいの数しか検出できなかったが、嫌氣的な培養法だと1千億個にも及んでいる。
バクテリアの種類も大変雑多であって、いままでほとんど知られていなかった種類のものが、約90%を占めているということが明らかになった。たとえば、嫌氣性の連鎖球菌、バクテロイデス、あるいはカテナバクテリウムなどである。
その他、残りの約10%が乳酸菌類、とくにビフィズス菌、あと1%ぐらいが大腸菌、腸球菌、クロストリジウムというようなものである。
我々の健康状態というのは、乳酸菌 と 大腸菌、腸球菌、クロストリジウムとの2つのグループの相対的な関係によって決まると考えて良い。この両者のバランスのいかんによって、われわれの健康状態は左右されると考えて良い。
それでは、腸内の有用微生物はいったいどんな働きをもっているのかというと、栄養の吸収を高める働き、生命物質の生合成。
特に大事なことは、体蛋白は、植物性の食物を素材にして腸内の微生物によって生合成されるということである。
だから、我々は、肉、牛乳、卵などの動蛋食品は全く必要ないと考えている。
すべてのビタミン群の生合成。
現在の生理学ではビタミンB群、ビタミンKは、体内合成されるといわれている。だが単にこれらのみでなく、実際にはすべてのビタミンが体内で合成されると、私は考えている。
<腸内細菌の問題>
今、騒がれている種々の食品公害問題も、この腸内細菌の問題を度外視して論ずるわけにはいかない。公害社会になって、だれの体にも一様にいろいろな公害物質が、いろいろな形で入りこんできている。
だが、それら公害物質の体内蓄積量は、個人個人みな違う。個体差がかなり大きいのは、公害物質の処理に、腸内細菌が大いに関係しているためなのだ。具体的な公害問題と関連させて、バクテリアの存在価値をここで考えてみよう。
以前にチクロという人工甘味料があった。これは、発ガン性があるということで、使用禁止になったものであるが、一時はいろいろな食べものに混入されていた。ある体操研究所では、飲み水に砂糖を入れる代わりにチクロを入れ、やせるための効果を上げようとしていたと聞く。
全く無知とは恐ろしいものだ。
このチクロは、腸内細菌の働きが十分でない状態、すなわち乳酸菌が少なくて、大腸菌とか、クロストリジウムなどが多い状態においては、これらの菌の作用でチクローヘキシールーアミンという発ガン物質に変る。
また発色剤として、ハム、ソーセージなどの色を鮮やかにしている亜硝酸と言う物質があるが、これも同様の条件下で、腸内でニトロソアミンという発ガン物質に変る。けっきょく、食品添加物が有害であるかどうかを決める最終的な条件は、腸の中で共生している腸内細菌の性状である、といえよう。
むろん、食品添加物そのものは有害だ。有害ではあるけれども、それが誰にでも同様に有害かというと必ずしもそうではなく、有害性を左右する基本的条件は、腸内細菌の働きいかんであるということである。
したがって、食べものに含まれる有害物質のことだけを論じていたのでは問題の解決にはならない。体内に入って、それはどのように処理されるかということまでをも考えていかなければならない。そのためには、どうしても腸内細菌の働きを無視できないのである。
もう一つ、新たな認識をもってもらいたいのは、われわれの体内で常時分泌されている胆汁色素も、腸内細菌の状態が狂うと、発ガン物質に変っていく危険性があることだ。このように公害という問題も、結局は我々の体で、公害物質をどの程度スムーズに処理できるかという自衛体制に帰するといえる。
やたらに公害物質を神経質に恐れる必要はないのであって、それより前に、自分の体の自衛体制を整えてかかることが重要であろう。
<基礎的な健康食品>
以上、述べてきたことをふまえて、脱公害食品についてあげてみよう。
腸内のバクテリアの働きを正常に調整し、しかも肝臓、腎臓などの働きを強める効果のある食品は自ずから限定されてくるが、その代表的なものは胚芽、葉緑素、酵素である。
特に酵素というのは、今述べたような腸内の微生物に直接作用して、乳酸菌を増やし大腸菌、クロストリジウムなどを減らしていく作用をもった食品である。
その他の脱公害作用のある健康食品としては、朝鮮人参、ローヤルゼリーなどがあげられる。
朝鮮人参は、薬用植物の中でも最もよく知られているものであるが、その効果はめざましく、とくに現代人の体質的な欠陥を補い、本来の健康を取り戻す優れた特性をもっている。
ニンジンの主成分は、配糖体であるサポニンで、このサポニンの代表的なものにパナキシンとパナキロンがある。パナキシンには保温効果があり、パナキロンには低血圧作用、低血糖作用、利尿作用がある。
また一般に、朝鮮人参には強い興奮作用があることが知られているが、ニンジン特有のにおいであるパナツェンには鎮静作用、催眠作用などもある。
なお朝鮮人参には、制ガン効果さえあるということで、最近注目されているゲルマニウムも、多量に含まれていることが明らかにされている。
ローヤルゼリーは女王バチの食べもので、女王バチに他のハチにない様々な特性を生み出させているものだが、我々仲間にも、数々の薬効を発揮してくれる。
主な成分は蔗糖、果糖、ブドウ糖などの糖分に、蛋白質、脂肪、ミネラル、水分などを含み、特に蛋白質の素材であるアミノ酸は、リジン、グリシン、セリン、グルタミン酸、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸など、人体に必要な成分をことごとく含んでいる。
ビタミンの種類も、B1、B2、B3、葉酸、イノシトール、パントテン酸、ビオチンなどと多彩で、まさに天然総合ビタミン剤といえよう。
この他に、特殊成分としてアセチルコリンをもっていることも注目すべきである。この物質は、神経系の刺激伝達の橋渡しとしてなくてはならないもので、人体の生理作用においては重要な役割を果している。
このローヤルゼリーの薬効は、まず胃潰瘍、慢性胃炎、胃アトニーなどの胃腸病。
及びアレルギー体質、貧血症の根治に特効があり、また整腸作用、血液浄化作用、抗ストレス作用、さらに若返り作用も著しいものである。
<ゴマと海藻の薬効>
以上の基礎的な健康食品の他に、大いに活用してほしい脱公害食品にゴマと海藻がある。
ゴマは菜食を実行する人にとっては、特に必要な食品。成分上の最大の特性は、良質の油脂を含むことで全体の50~55パーセントを占めている。良質の油脂とは、我々の生理に有効な作用をする、不飽和脂肪酸を多量に含むということで、ゴマは、不飽和脂肪酸の中でも最も薬理的効果の大きいリノール酸を、全油脂中、約40パーセントも含んでいる。このリノール酸は、血中コレステロールを減少させたり、血管壁に付着したコレステロールを洗い流し、血管の弾力性を保つという作用をもっている。
この他に100グラム中にカルシウム1100ミリグラムもあり、粗蛋白(20パーセント)ビタミンB1、B2、鉄、ヨードなどを含んでいる。
ゴマには、種々の薬効があり、ガン、胃酸過多症、胃潰瘍、視力低下、精力減退、月経不順、母乳不足などに有効である。
また、ゴマ油は肺結核によいといわれている。これはゴマ油に含まれるカプリン酸が、著しい抗菌作用を持つことによる。ゴマ油中のカプリン酸は4000倍に薄めたものでも結核菌の発育を完全に阻止する効力がある。
ゴマ油は、多くの特性をもっているが、その中でも特筆すべき点は酸化しにくいということである。ちなみに酸化に要する時間は、魚油では20時間、大豆油では40時間だが、ゴマ油では150時間ぐらいだ。
このゴマ油に含まれる抗酸化物質がセザモールとなり、酸化を防止する働きをすると考えられている。
今まで白米・動蛋食の人が玄米・菜食に切りかえると、体質改善反応といわれる症状がおこることがある。たとえば、ヒビ割れ、爪の変形、フケなどのちょっとした異変だが、そんなときにはゴマ油を大いに利用するとよい。
他にミネラル食品として海藻を積極的にとる必要がある。この海藻には公害物質、特にカドミウム、ストロンチウムなどを体外へ排除する働きのあることが認められており、カナダあたりではその研究が盛んである。
海藻中には、ヨード、カルシウムなどが豊富に含まれている。
ヨードの不足は、甲状腺ホルモンの合成、分泌を不十分にし、炭水化物や脂肪の燃焼を悪くし中間産物が脂肪やコレステロールとなって体内にたまりやすくなる。
幼児では発育不良となり、肥満し始めるとともに、動作も思考ものろく鈍くなる。
ことに、美容障害はひどく、皮膚は潤いをなくしカ人カ人となり、シワが増え、目の下はたるみ、脱毛したり、爪の色ツヤも悪くなる。最近、若白髪が目立って増加してきているのも、甲状腺ホルモンの分泌不足と大いに関係ありそうだ。
カルシウムは、精白食品、特に白米、白砂糖との関係が深く、昔から白砂糖は、ミネラル中のカルシウムを奪うものとして灰盗といわれてきた。
白米、白砂糖を食べつづけていると、体の中はカルシウム不足となり、その結果、骨はもろくなり、虫歯だらけということになる。このようなときは、精白食品の摂取をやめてゴマやゴマ油、海藻を積極的にとっていただきたい。
なお、海藻は野菜に比べてそのアルカリ度も高いから、血液の酸性化を防ぎ、きれいな血液にするためにも大いにすすめたい食品である。
脱公害食品とは何も特別な食べものではない。われわれの祖先が天地の恵みを受けて耕し、種を蒔き、収穫したもの、あるいは海や山へ出て、自らの手でとってきた自然の産物なのだ。
この氾濫する公害食品の中で、もう一度、健康のために必要な食べものとは何かということを考え、自然への感謝の氣持をもって、正しい食生活を実行していただきたいと願っている次第である。