コレステロールは、細胞膜の構成物質であり、膜の安定性を維持しています。
また、あらゆる生理機構に関わっている大変重要な脂質です。
一般にコレステロールは体内に100~150gの量が存在します。
脳は体重の約2%ほどの重さに過ぎませんが、脳のコレステロール量は体全体の約25%にも相当します。
これは大変高い濃度ということがわかりますか。
実は脳内コレステロールは神経機能に重要な役割を果たしているのです。
脳は前述のように重量は小さいにもかかわらず、消費エネルギー量は実に体全体の約20%と非常に大きいことは、ここの読者ならご存じの事でしょう。
この脳の消費エネルギーの多くは、ナトリウムイオンやカリウムイオンを輸送するイオンポンプが消費するのです。
細胞膜でこのイオンによる膜電位の変化によって、神経を通して速やかに組織間・内で情報を伝えることができるのです。
※活動電位といいます。
さて、この活動電位の電動を高速にするのが、神経細胞の軸索(≒胴体)の周りに結び付いているミエリンです。
ミエリンの絶縁性によって、神経間の情報伝達を高速にします。
そして、このミエリンにはコレステロールが豊富にあり、実に脳中の総コレステロール量の約2分の1が存在します。
逆に言えば、脳のミエリンにはそれだけ多量のコレステロールを必要としているのです。
ところが、成人した動物では食事から摂取したコレステロールや肝臓で合成されたコレステロールは、脳内にほとんど入りません。
では脳中のコレステロールをどうやって維持していけばいいのでしょう。
それは「ブドウ糖」です。脳は最大のブドウ糖食いということでも有名ですが、脳に取り込まれたブドウ糖はアセチルCoAになり、その後HMG-CoAに代謝されます。
HMG-CoAはメバロン酸に変化し、マグネシウムイオンを補因子にATPによってリン酸化され、スクアレンという物質を介して最終的にコレステロールとなるのです。
以上まとめると、脳や神経組織はコレステロールの要求度が非常に高く、コレステロール自体は脳の関門をほとんど通過しないため、ブドウ糖を送り込むことによって、コレステロールを合成しているのです。
ブドウ糖から作られたコレステロールは神経の情報伝達を速やかにするミエリンの重要な構成成分なのです。
※ブドウ糖の供給源はできるだけ精製されたものでなく、未精製の全粒穀物などから摂取することをお勧めしています。
身体の構成成分はタンパク質・脂質がメインで、糖質は少ないということになってるけど、糖質って体内ではいろんな成分に合成されて変化しているから、身体の構成成分比=食事比と見てしまうと、大きな誤解が生じてしまうのです。