我々は炭水化物を摂ると、それが体内で糖分に転換され、余った分は肝臓でグリコーゲンに変えて蓄えます。
この蓄えは空腹時に血糖値が下がってしまう時に再び糖分に転換され、血中の葡萄糖濃度を調節する仕組みになっています。
しかし、肝臓の機能に障害が生じ場合は、葡萄糖をグリコーゲンに転換する能力も、蓄える能力も低下しまいます。
すると、食事したあと、余った糖分はそのまま血液中に流れ込み、血中葡萄糖の濃度が急激に上昇します。
逆に、空腹時に血糖値が下がる時、肝臓はグリコーゲンの蓄えがないから、血糖値を正常水準に戻すことができなくなります。
このように、食後に高血糖状態になり、空腹時に低血糖状態になるのは、肝性糖尿病です。
「インスリン分泌能低下型」で「肝機能障害」がなくても「肝性糖尿病」と同じ「血糖値波形」を示すのが「隠れ糖尿病」の「低血糖あり」のタイプです。
「高血糖」になる仕組みは、そもそも「インスリン産生指数」が低いことから始まります。
これが「先天的」か「後天的」かについては「後者の方が多い」とは思われますが、いずれにせよ「アミノ酸代謝の異常」や「糖質過多によるすい臓のβ細胞の疲弊」が「インスリン産生低下」の原因ではないかと考えられるのです。
実際「ChEの値が低い」症例に「隠れ糖尿病」が発生しやすい傾向を認めます。
したがって「アミノ酸代謝異常の改善」「β細胞のインスリンの初期産生能力の改善」が「隠れ糖尿病」に対する「根本治療」となります。
また「中性脂肪が40㎎/dl以下の低値」では「糖代謝異常が多い」ことは知られていますが「隠れ糖尿病」も「中性脂肪の低値」が原因ではないかと考えられます。
「中性脂肪の値」は「中性脂肪」を運ぶ「リポたんぱく量」であり、おそらく「アミノ酸代謝異常」か「遺伝的素因」が原因で「中性脂肪を運ぶリポたんぱく」が生成量が少ないために「中性脂肪が過剰に体内で生成されていても血中濃度が低くなる」と考えます。
このため「皮下脂肪」だけでなく「内臓脂肪」が「蓄積されやすく」なるのです。
一方「エネルギー代謝」から考えると「中性脂肪が異常低値」の場合「心臓や筋肉の細胞」の「エネルギー需要が増大」した場合「ブドウ糖やケトン体」が十分あれば「エネルギー源不足」は起こりません。
しかし「高インスリン状態」のため「ケトン体濃度が低値」であると「ブドウ糖のみにエネルギー源を依存」することになります。
つまり「中性脂肪異常低値」は「肝臓のグリコーゲンを消費する原因」となってしまうと考えられます。
したがって「グリコーゲン→ブドウ糖」への分解をする代謝の方が「優勢」となって「ブドウ糖→グリコーゲン」への合成をする代謝の方は「劣勢」となっていると考えられるのです。
このため「糖質が過剰に摂取された」場合「肝性糖尿病」と同じように「ブドウ糖をグリコーゲンに転換する能力や蓄える能力も低下してしまうと考えられるのです。
「血糖値急上昇時」に「インスリン分泌が追いつかず」「グリコーゲンへの転換する能力の低下」もあいまって「余ったブドウ糖」は「肝臓」をすり抜け「血糖値の急上昇」の原因となるのです。
したがって「隠れ糖尿病」が「中性脂肪異常低値」が原因で起こっている場合は「中性脂肪」を「高インスリン状態」ではなく「アミノ酸代謝の改善によるリポたんぱく増加」で増やす方法を考えなければなりません。
(「日本版ボーンブロス食事法」の目的の一つに「良質の消化の良いたんぱく質」で「中性脂肪を増やす」ことがあります)
「高血糖状態」で「仮性の著しいインスリン抵抗性の増大」が見られるのは「グリコーゲンへの転換能力低下」が「最大の原因」と考えられるのです。
しかし、一定の時間が経過すると、グリコーゲンへの転換が加速し始め、血糖値が下降します。
「低血糖症」を起こすのは「グリコーゲンの蓄えがない」か「急激な血糖値の変化」に今度は「急にグリコーゲンを分解する方向に舵を切れない状態」に陥って、血糖値を正常の水準に戻すことができなくなるのです。