低血糖というのは「末梢血の血糖値」が「80㎎/dl未満」というのではなく、細胞内のブドウ糖濃度が低下して「ブドウ糖がTCAサイクルに入りにくい状態」になって「ATP不足」になることを指します。
これは、あくまで「仮説」ですが「壁の下限から下方20㎎/dl」の「間質液のブドウ糖濃度」を割ると「低血糖状態」と判断すべきと考えています。
したがって「負の乖離」がある場合は「末梢の血糖値」が基準値内であっても「壁の下限」が高ければ「低血糖状態」の診断を見逃すことになります。
例えば「壁の下限が110㎎/dl」とすれば「90㎎/dl未満」になれば「低血糖状態」です。
「リブレ」を使っていないと実際の数値は分かりません。
そこで「末梢の血糖値が100㎎/dl」とした場合、もしも「負の乖離が20」とすれば「リブレは80㎎/dlとなり「低血糖状態」になってしまうのです。
空腹時に「負の乖離」によって「低血糖状態」になっている場合は「血液中のブドウ糖が取り込めない状態」と同義であり「ピルビン酸→アセチルCoA」に至る代謝経路が流れにくくなって「バックフロー」が低血糖状態でも起こっていると考えなければなりません。
「糖質制限」で「末梢の血糖値」が下がってきて「血糖値のコントロール」が上手くいって喜んでおられる方が大多数と思いますが「とんでもない勘違い」をしているのです。
何らかの「耐糖能低下」の背景には、必ず「末梢のインスリン抵抗性」すなわち「ピルビン酸→アセチルCoA」に至る代謝経路のパイプが細くなっていると考えなければなりません。すなわち「負の乖離」が起こりやすい状態と言えるのです。
つまり「糖質制限」をすれば「末梢の血糖値」を正常化しているように見えますが「負の乖離」があれば「常に細胞質内のブドウ糖濃度の低下を招きやすい」と考えなければなりません。
したがって「空腹時の採血」の血糖値が基準値内であっても「ケトン体濃度」が高く、かつ「中性脂肪濃度」が低下している場合は「低血糖状態」が深刻化して「ブドウ糖によるATP不足」に陥り「脂肪酸がβ酸化してケトン体を産生した」と考えなければならないのです。
「正の乖離」で「低血糖状態」でない時に産生される「ケトン体」は「エネルギー源」として利用できますが「負の乖離」で「低血糖状態」になっている時に産生された「ケトン体」は「エネルギー源」として利用されず「尿中に排出」されてしまいます。
これが「溶解人間のメカニズム」であり「糖質制限やファスティングで痩せるメカニズム」でもあるわけです。
これは同時に「たんぱく質の異化」も招きますので「筋肉量の低下を始めとするたんぱく質不足」の原因にもなってしまいます。
「たんぱく質」をしっかり摂取しても「たんぱく質不足」になってしまう背景に「低血糖状態」があり「糖質制限」には常にこの危険性を伴うことに留意しなければならないのです。
「糖質制限」をするにしても、最低限の糖質を外部から摂取する必要性を主張する理由はここにあります。
低血糖すなわち糖不足は、肝臓での「FT4→FT3」の代謝も阻害され「低T3症候群」の原因になることも再三警告が発せられていることは、すでにご存じであると思います。
しかし、このような状況であっても平然として「ケトン体賛美」をしている医師が存在しています。
「一般啓蒙書」まで出版しているために、それを信奉してしまった方々の中に「多くの犠牲者」が今も増え続けていることは見過ごすことができないのです。
「スーパー糖質制限」以上の糖質制限、さらには「ケトーシス」を目指すような厳格な糖質制限には、必ず「低血糖」とリスクが伴います。
「低血糖」は「高血糖」よりも身体にとって「最大のストレス」であることを銘記しなければなりません。
「糖質が必要ない」とか「糖質は毒」だとかを声高に叫ぶことは許されません。
なぜなら何も知らない一般人は「糖質制限」を始めると、そのまま「厳格な糖質制限」まで走ってしまう恐れがあるからです。