糖尿病の症状は喉の渇き、食欲の増加、頻尿などがありますが、何の症状もない方が殆どで、そして糖尿病の合併症も自覚がないまま進行していき、気づいた時には重篤な合併症を発症しているというケースが良く見られます。
糖尿病の合併症では主に血管に酸化と炎症が起きることで血流が停滞して様々な臓器にダメージが起こります。
比較的大きな血管にダメージが起きたものには心臓の冠状動脈疾患、手足の末梢血行障害、脳卒中があり、小さな血管にダメージが起きたものには腎臓、網膜、神経へのダメージによる糖尿病性腎障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害があります。
統計では糖尿病を患っている40歳以上の方の28.5%が糖尿病性網膜症、35歳以上の方の8.5%が脳卒中、同じく35歳以上の方20.4%の方に冠状動脈疾患、年令に関係なく20-30%の方に糖尿病性腎障害、60-70%の方に糖尿病性神経障害が起こっています。
特に発症件数の多い糖尿病の三大合併症の糖尿病性腎障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害の予防方法と改善方法を説明していきます。
糖尿病性腎障害
腎臓不全の44%が糖尿病に由来するものです。
一旦腎不全になりますと定期的に人口透析を受けないと命の危険に関わるようになります。
症状:高血圧、浮腫、こむら返り、夜間の頻尿、吐き気、嘔吐、疲労、貧血、痒みなどが起こります。
自然療法:高血圧は腎不全の原因のナンバー2に位置していて、高血圧と糖尿病のコンビネーションは腎臓にとって最悪の組み合わせになります。
ですから最も重要なのは血圧をコントロールして腎臓機能をこれ以上悪化させないことです。
その他に生活習慣で注意したいことは体重のコントロール、塩分摂取の制限、運動、禁煙です。
また腎臓は体のフィルターとして機能していることから、腎臓への刺激を増やすお酒、コーヒー(カフェイン)、鎮痛剤、処方薬(必要最低限)、人工甘味料、造影剤は避けるようにしてください。
食事はCR-LIPEダイエットと呼ばれるものが糖尿病性腎障害へ非常に有効であることが研究で確認されています。
この食事法は炭水化物の制限、低鉄分、ポリフェノールの豊富な食事法です。
炭水化物の摂取を現時点での食事の50%程度に制限し、鉄の豊富な牛肉や豚肉の代わりに鶏肉や白身魚に代えます。
また鉄分の吸収をブロックする大豆の摂取を増やします。
大豆は低糖、高タンパクなだけでなく、赤身肉と比較した場合腎臓障害の指数となる尿中微量アルブミン値の低下も確認されています。
肉は調理法にも注意してください。
揚げ、ロースト、焼くといった調理法は終末糖化産物を増やし、血管へのダメージを加速させてしまいます。
逆に煮る、茹でる、蒸すといった調理法は終末糖化産物を減らします。
ポリフェノールは植物の樹皮、表皮、種子などに含まれる色素や苦味や渋味の成分です。
代表的なものに緑茶のカテキン、ブルーベリーなどに含まれるプロアントシアニジン、葡萄の表皮に含まるレスベラトロール、ウコンに含まれるクルクミンなどがありますが、バラエティー豊かな野菜を多く食べるようにしてください。
オメガ3必須脂肪酸を多く摂ることで腎不全への進行を低下させることができますので、魚、クルミ、亜麻仁油、アボカドの摂取を増やしてください。
またオリーブオイルに含まれるオメガ9必須脂肪酸にも炎症を軽減する働きがあることからサラダのドレッシングや調理にはエクストラヴァージンオリーブオイルを使用すると良いでしょう。
水分は水、お茶、牛乳のみに留め、飲み過ぎ、飲まな過ぎにも注意してください。
ハーブではキバナオウギ(Astragalus)、イチョウ葉(Ginkgo)、丹参(Salvia Miltorrhiza)が有効です。
キバナオウギは強壮作用が有名ですが微量アルブミンの減少、終末糖化産物の減少、腎臓障害の改善、腎機能の回復が確認されています。
標準抽出物でしたら250-500mgを一日3-4回、アルコールチンキでしたら20-60滴一日3回を目安にしてください。
イチョウ葉は腎臓性浮腫を改善し、血中クレアチニン、尿素、尿たんぱく、空腹血糖、終末糖化産物を減少させ、腎臓の保護作用があります。
標準抽出物でしたら240mg一日1-2回を目安にしてください。
丹参は血糖値、微量アルブミン、腎肥大を減少させ、抗酸化作用、腎臓保護作用、肝臓保護作用として効果があり慢性腎盂炎の治療にも使用されます。
アルコールチンキでしたら20-60滴一日3回を目安にしてください。
サプリメントではベンフォチアミン、アルファリポ酸、クルクミン、オメガ3、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンEなどが有効です。
ベンフォチアミンは脂溶性のビタミンB1の誘導体です。
ベンフォチアミンの最も優れている働きは終末糖化産物の形成をブロックすることです。
終末糖化産物とは血糖と体内のタンパク質が反応することで作り出されるもので、細胞の構造、働き、血管のダメージ、炎症の悪化、酸化の悪化を引き起こす非常に危険な物質です。
高血糖によるダメージのほとんどがこの終末糖化産物によるものです。
ベンフォチアミンは一日あたり150mg2-3回の摂取を目安にしてください。
アルファリポ酸は血糖値を低下する働きの他に血管の炎症をブロックする働きがあります。
ビタミンDには糖尿病性腎障害患者の尿たんぱくを低下する働きが確認されています。
クルクミン、オメガ3、ビタミンC、ビタミンEには抗炎症、抗酸化作用により血管の炎症、ダメージを低減することが期待できます。
糖尿病性網膜症
アメリカでは失明の原因No.1が糖尿病性網膜症です。(日本ではNo.2)
症状:自覚症状は無く進行していくケースが殆んどです。
視界に煙や小さな虫が飛んでいるようなものが見える飛蚊症という症状や、視界がぼやけたり、夜の視野が悪くなるといった症状が出始め、進行すると突然視力が低下したり失明することもあります。
また糖尿病を患うと糖尿病性網膜症以外にも白内障が悪化したり、眼圧が上がることで緑内障が悪化する傾向にあります。
自然療法:生活習慣や食事法は糖尿病性腎障害と同じですが、サプリメントではプロアントシアニジン、アルファリポ酸、ベンフォチアミン、タウリン、N-アセチルシステイン、ルテインが有効です。
プロアントシアニジンはブルーベリーなどに多く含まれる植物由来の成分で、強力な抗酸化物質として知られ目の血行を良くする、血管のダメージを軽減する、視力を改善するなどの働きがあります。
一日当たり200mg摂ると有効です。
タウリンは眼の網膜に多く存在し活性酸素から目を守る働きがあります。
また糖尿病性網膜症や黄斑変性症の進行を低下させる働きが確認されています。
一日あたり500mg3回を目安にしてください。
ルテインは緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種で目に多く存在し、抗酸化物質として糖尿病のダメージから目を守る働きがあります。
一日当たり10mgを目安に摂取してください。
糖尿病性神経障害
糖尿病の合併症としては一番発症するケースが多いのが糖尿病性神経障害です。
糖尿病を発症してから数年以内に何らかの神経障害を発症し、転倒や足潰瘍、足の切断や自律神経障害などの原因となり得ます。
症状:最も一般的な症状は手足の麻痺、神経痛です。
それ以外にも筋力の低下、歩行障害、起立時のめまい立ちくらみ、勃起障害、吐き気、嘔吐、誤嚥、下痢、便秘、排尿困難、心拍数の乱れや増加などがあります。
治療:糖尿病性神経障害は症状の軽いうちに適切な治療を行えば神経が再生し、症状が劇的に改善します。生活習慣や食事法は糖尿病性腎障害の欄を参考にしてください。
アルファリポ酸ですが神経障害の治療では最も重要で、点滴での治療が非常に有効です。
週に1回の点滴プラス、サプリメントで一日当り300mg2回アルファリポ酸を摂取してください。
アルファリポ酸は末端神経への血流を改善することで神経の再生を促進します。
アセチルL-カルニチンは神経の再生を促す、神経痛の軽減、触覚の改善などの働きがあります。
一日当り500-1000mgを3回摂取してください。
ビタミンB12は神経の働きに非常に重要なビタミンの一種です。
神経痛、麻痺、自律神経障害の改善に効果的です。
ヤマブシダケ(Hericium Erinaceus)と呼ばれるキノコには神経成長因子と呼ばれる物質の製造を増加させる働きが確認されています。
特に中枢神経の神経再生効果も確認されていることから痴呆やアルツハイマーにもその効果が期待されています。
一日当り500mg1-2回を目安に摂取してください。
アルファリポ酸の点滴治療が受けられない方はベンフォチアミン、クルクミン、オメガ3を組合させていただくと神経障害の治療に有効です。
サプリメントと言うと抵抗がある方も多いかもしれません。
本来であればバランスの取れた食事から栄養素(ビタミン・ミネラル)を摂るのが最も良いのですが、サプリメントを栄養補助の目的として摂っている方が多いと思います。
しかしサプリメントには栄養補助の目的以外にも色々な応用方法があります。
弱った体の機能の回復(消化不良、副腎疲労、免疫力の低下など)や薬の代わりに副作用の低いハーブなどに代替する。
(血圧、アレルギー、痛みのコントロールなど。)
糖尿病の治療は血糖値のコントロールも重要ですが、今回紹介したサプリメントを上手に使うことで三大合併症の糖尿病性腎障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害の予防だけでなく合併症の改善にも貢献できるのです。
糖尿病を患うとクオリティーオブライフが低下しがちですが、生活習慣を見なおして合併症の予防と改善をすることで糖尿病をコントロールしてください。