西洋医学では治しようがなくなって、私のクリニックにいらっしゃる患者さんのなかには、こんなことを言ってくれる人がいます。
「先生のところには、私の病気に効く方法があるんでしょう」
なぜ病気になったのか、その原因を自分で見つけることもしないで、どこかに自分の病気を治してくれる方法が、あるはずだと思い込んでいるのです。
そんなときは、即座に私はこうお答えします。
「私は魔法使いではありませんから、そんなものはありません。 あなたの病気を治すのは、あなた自身しか、いません」
私がそう言うと、決まってこんな答えが返ってきます。
「やっているつもりなんですけど・・・」
この「けど・・・」が問題なのです。
「やっているつもりだけど、本当はやっていない」ということをきちんと自覚してもらわなければ、こちらはどうすることもできません。
私は腎臓内科医ですが、腎臓が悪くなる大きな原因の1つが糖尿病ですから、糖尿病の患者さんもたくさん診ています。
そもそも糖尿病は不規則な生活や偏った食事などにより、起きる生活習慣病の1つです。
つまり、自分の生活習慣の乱れが病気を悪化させるのです。
ちなみに糖尿病には初期症状がほとんどありません。
自覚できるような形では体に現れないため、いつのまにか症状は進行し糖尿病にかかってしまうのです。
もっと悪いことに、糖尿病になったあともあまり大きな症状はありません。
それを理由に治療をしない人も多く、そういった人は順当に合併症を併発します。
がんも同じです。
自分の生活習慣の乱れが、がんを発症した根本原因になっていることが少なくありません。
このことに気づき、病気を引き起こす根本原因を改めていくことが大切なのです。
「いつまでも健康で長生きしたい」
本気でこう考えるなら、意識的にしろ、無意識的にせよ、自分がしている「無理」に気づき、それを自分の意志で正すことから始めてください。
自分で自分の間違いに気づき、自分で「変えよう」という強い意志を持たない限り、生活習慣も、考え方も決して変えることはできません。
そして、間違った生活習慣や考え方を変えられない限り、自己治癒力が発揮されることはありません。
体に負荷をかけることもしないで、楽なほうへと逃げてしまうのが、いちばんよくありません。
「魔法の薬」や「奇跡の治療法」などというものはないです。
それを自覚させるための方法が、「死を意識する病気の発症」なのです。
こうして、その人の考え方の甘さを、痛烈に思い知らせるのです。
このままだと自分が死ぬと思えば、タバコもやめるし、食事も変えます。
そして、考え方や生き方まで変えようとします。
そして、その努力を怠けたとたん、病気は進行します。