「病は気から」という言葉があります。
日本では「気」という漢字に3通りの意味があります。
空気に代表される「ガス状のもの」を指す場合、
電気に代表される「エネルギー的なもの」を指す場合、
そして気持ちに代表される「心」を指す場合です。
日本人のほとんどは「病は気から」の「気」を気持ちの意味だととらえ、「病気になるかどうかは、その人の心の持ち方次第」という意味で使うでしょう。
気合で病気なんかやっつけられる、いわゆる精神論ですね。
でも漢字の本家本元中国では、「気」はエネルギーそのものであり、「気体」や「気持ち」の意味が本質ではありません。
中国には「万物のもとは気である」という概念があるのです。
エネルギー(E)=質量(m)×光速度(c)の2乗
これはアインシュタインが発見した、質量とエネルギーの等価性を表す有名な関係式ですが、古代中国の人々も、エネルギーが物質に変換できることを感じとっていたのでしょう。
気というのは万物のもととなるエネルギーをもっています。
「気」には陰と陽という2つの要素があり、宇宙にあるすべてのものを形づくっていると推定し、世の中のすべてを解明してきたのです。
中国の自然哲学思想としてよく知られている五行説や、漢方医学で大切にされている気・血・水の考え方も「万物のもとは気である」という概念から生まれた思想です。
五行説とは、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという考え方で、方角や色など、あらゆるものに五行が配当されています。
五臓六腑という人間の体内を表す言葉がありますが、この五臓(肝・心・脾・肺・腎)も五行が配当されているのです。
気・血・水とは、人間の体を循環して体全体にエネルギーを行き渡らせている3要素です。
万物を形づくっている気を、気(実体のないもの)と血、水(血液以外の体液)に分けて考えたもので、この3要素がバランスよく体内を流れることにより健康が維持される、というのが漢方医学の基本的な考え方です。
要するに、人間の体もすべて気からできているというのが中国医学や漢方医学の考え方なのです。
気が正常に作られて正しくめぐっている状態が正気、すなわち健康で、この気が病むのが病気。
これこそ「病は気から」の語源です。