疾患と体液の酸性化の関係               医学博士、楠崎克之


肥満

これは前述したような高カロリー食の過食による水素イオンの細胞外への排出が悪くなることによる糖代謝、脂肪代謝の停滞による悪循環であると考えられます。

もともとは原始の時代にいつ食物が得られるのか分らないような食生活をしていたので、大量に食物が得られたときに余分なブドウ糖や脂肪をグリコーゲンや中性脂肪として肝臓や脂肪細胞に貯蔵する生存のための重要な人体の能力であったのですが、現代のような飽食の時代にはこれがかえって人体に悪影響を及ぼすようになったのです。

 

グリコーゲンは長期の貯蔵はできず優先的に利用されるので人体への悪影響はほとんどありませんが、脂肪細胞の増加は直接肥満につながります。

脂肪細胞はいったん形成されると容易には消失せず、過食が続くとどんどんと増加するだけでなく様々なホルモンや因子を放出して慢性炎症や糖尿病を引き起こすことも報告されています。

特に吸収された脂肪が内臓脂肪細胞に中性脂肪としてそのまま蓄積されると様々な現代病の引き金になると考えられています。

 

 

細胞外液の水素イオンの増加による肥満は脂肪が溜まっただけではなく前述したように細胞間質の浮腫、むくみを合併していると考えられます。人間の体の水分は体重の60%を占め、そのうち40%は細胞内液で、残り20%の中で循環血液量が5%で細胞外液15%です。

つまり体重60kgの人の15%、9kgが細胞外液です。

 

これらの水分量で最も変動しやすいのが細胞外液と考えられます。

ここの水分量が増えると容易に体重が増加します。

腎不全の患者さんは体重の増加を定期的に測定する必要があるのはこのためです。

肺や腎の機能が正常であればこれらの水分は排泄されるのですが高カロリー食が続けば慢性的に細胞外液の酸性化とそれに伴うむくみが持続するようになり体重増加の一因になります。

 

脂肪性の肥満ばかりが注目されていますがむくみによる肥満も重要と考えます。

食生活の改善により先ずこの水分肥満が改善され、次いで運動などのエネルギー消費で脂肪の消費が進むと脂肪細胞も消失していきます。

 

 

高脂血症

血中の中性脂肪やコレステロールが多くなる病態で、これが血管壁に溜まると高血圧や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。

中性脂肪は食物の脂質由来のものだけでなく炭水化物からも作られるので高カロリー食を続けると当然血中濃度は高くなります。

コレステロールは食物以外に肝臓などで合成され、その原料が炭水化物や脂質なのでやはり高カロリー食で増加します。

このような病態は肥満と同じなので、細胞外液に水素イオンが蓄積していると考えられます。

そうすると糖や脂肪代謝の停滞をさらに助長して悪循環に陥ります。

また脂肪を分解するリパーゼはアルカリ性で活性化されますが、酸性では働きが悪くなり脂肪の利用がますます障害されます。

血管壁へのコレステロールの沈着(コレステリン結晶)に水素イオンの蓄積による局所的な酸性化が関連している可能性も考えられます。

 

 

高血圧

高血圧を生じる原因の一つとして高食塩食が問題とされていますが、それだけで全てを説明することはできません。

実際に高食塩食を長年摂っていても高血圧にならない人もかなりいます。

食塩はナトリウムイオンと塩素(クロライド)イオン(NaCl)からなり、一般的には食塩の摂り過ぎはナトリウムが体内に溜まるために体液量が増えることや、レニンーアンギオテンシンというホルモンの活性が高まること、交感神経が活性化されることなどにより高血圧になると考えられています。

 

一方、前述したように生理食塩水を点滴すると体液が酸性になることが知られています。

これにはナトリウムだけではなく塩素イオンも大きく関係していると考えられます。

つまり、食塩の摂り過ぎも体液の酸性化と関係している可能性が高いのです。

 

高齢化とともに血圧が上昇するのは動脈の血管壁の柔軟性が失われ硬化することが原因と考えられています。

それは血管壁に慢性的な炎症が起こっておりそれによる血管壁の線維化や石灰化が硬化を引き起こしている可能性があります。

この場合の炎症は細菌などで生じる急性のものとは異なり、炎症を引き起こす物質の活性化が続くことによると考えられます。

 

その原因として局所の細胞外液の酸性化が考えられます。

pHが低い状態は炎症の引き金になります。酸は生体に痛みを惹き起こします。

また炎症の時に細胞から放出される炎症物質としてブラジキニンというものがありますが、この物質は局所に長期にとどまるとさらに様々な炎症物質(サイトカインなど)を誘導して炎症をますます助長します。

このブラジキニンはキニナーゼという酵素で分解されますが、キニナーゼはアルカリ溶液中で活性化されます。

そのため細胞外液が酸性であるとブラジキニンはいつまでも分解されずに局所に炎症が続くことになります。

 

炎症は白血球を呼び寄せて酸性の酵素(ペルオキシダーゼ)細胞外液を放出するためにさらに局所は酸性化し、炎症は慢性化します。

このように血管壁が酸性化すると慢性炎症が続き線維化から石灰化を生じ最終的には動脈硬化になります。

こうなると全身に十分な血液を送り込むには血管の抵抗が高いのでこれに対抗するために高い血圧が必要になり、高血圧という病態になります。

もちろんこれに高脂血症が合併すると脂質、特にコレステロールの血管壁への沈着を生じて血管腔の狭小化が促進され、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血の原因になります。

 

 

脳梗塞、心筋梗塞、血栓症

前述のように脳梗塞、心筋梗塞もこれらの血管病変を元に発生することが知られていますのでやはり酸性体質と深くかかわっていると考えられます。

また血液が血管の中で固まる血栓症は、飛行機や災害後の避難生活での長時間の座位姿勢や手術を受けた後に下肢の静脈に発生して、エコノミー症候群や静脈血栓症として知られています。

 

この血栓の形成にも静脈の酸性化が関係していると考えられます。

血液が静脈内で長時間うっ滞すると二酸化炭素が溜まりこれが酵素で重炭酸と水素イオンを発生するので酸性になります。

血液の酸性化、いわゆるアシドーシスになると血中にカルシウムが遊離されて高カルシウム血症になります。

カルシウムは血液凝固因子の一つで血栓の形成を促進します。この血栓が大きくなってちぎれると肺に飛んでいき肺梗塞になり死に至ることがあります。

手術後は手術侵襲や輸液、様々な薬剤で体液が酸性になっていることが知られていますが、これも手術後の静脈血栓の形成に関係していると考えられます。

 

動脈の血栓は高血圧で硬化し、酸性化した動脈壁が肥厚したところに形成され、動脈の血液の流れを障害して脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。

この原因もやはり慢性的な局所の細胞外液の酸性化がと考えられます。

 

 

糖尿病

高カロリー食の現代人が罹患する糖尿病はII型糖尿病と呼ばれ、血糖(血中ブドウ糖)値を下げる膵臓から分泌されるインスリンの量が減るか、もしくはインスリンの効きが悪くなっている状態(インスリン抵抗性)です。

 

前述したように人はまず炭水化物を分解して得られたブドウ糖を利用して生きるために必要なエネルギーを産生します。

インスリンはこの血中のブドウ糖を細胞内に取り込ませグリコーゲンとして保存させます。

これにより血中のブドウ糖の値は低下します。インスリンは膵臓の細胞の中にいるときは酸性の袋に包まれて不活性の状態で保存されています。

食事により血中のブドウ糖の濃度が上がるとインスリンは細胞外へと放出されますがこの時血中でアルカリ化されて活性型になります)。

 

しかし、インスリンが働くのは血中ではありません。

インスリンは細胞表面のレセプターと結合しなければなりませんが、細胞は血管の外にある細胞外液に囲まれていますから、そこが酸性になっていると膵臓の細胞内と同じ状態になるので活性化されません。

インスリンがもっともよく効くのはpHが7.4前後で、7.0になると効果は激減します。

 

そのため高カロリー食で細胞外液が酸性になっているとインスリンがいくら膵臓から分泌されていても血糖値は下がらなくなります。

インスリンも正常に分泌され細胞も正常であるにもかかわらず血糖値が下がらない状態の糖尿病をインスリン耐性糖尿病といいますが、その本体は細胞外液が酸性化していることにあると考えられます。

 

この状態が長く続くと最終的には膵臓の細胞が疲弊してインスリンが分泌できなくなります。

そうなると細胞はブドウ糖が利用できなくなるので脂肪酸やアミノ酸からTCA回路を使ってエネルギーを得ようとします。

そのため糖尿病の末期になると脂肪や筋肉が減少して痩せてくるのです。

 

この脂肪酸やアミノ酸を利用する経路ではケトン体(酢酸、いわゆる酢の仲間)という酸性物質が大量に産生されてますます体液の酸性化が助長されます。

こうなると体液だけの酸性化では済まなくなり血液も酸性化(アシドーシス)してしまいます。つまり血液の緩衝作用でも追いつかないほどの水素イオンが体内に溜まっているのです。

 

糖尿病患者さんは血管の傷害による脳出血や網膜出血を起こすことが知られていますが、この原因として長期にわたるアシドーシスが血管壁の炎症を引き起こし脆弱化による出血の原因の可能性があります。

腎臓の血管にも同様なことが起こって慢性腎不全状態になっている可能性があります。

 

糖尿病のアシドーシスで昏睡を起こすことがありますが脳は細胞外液が酸性になると活動が抑えられることが知られており、昏睡の原因の一つではないかと考えます。

 

ちなみに、呼吸抑制によって体に二酸化炭素が溜まると体液は酸性化します。

そのような状態では患者さんは眠気を訴えます。

これを傾眠状態(CO2ナルコーシス)と言いますが、細胞外液が酸性化すると脳の活動も悪くなります。

これはエネルギー産生が低下するので脳でのエネルギー消費を少なくしようとする生体防御反応であるという見方もできます。

 

 

痛風 

痛風は尿酸が体の中に溜まりこれが関節などに沈着して激しい痛みと炎症(痛風発作)を起こす病気です。

その痛みは風が吹いて患部の皮膚を刺激するだけでも飛び上るほど痛いということで名づけられました。

この病気も高カロリー食とともに増加の一途をたどっています。

尿酸自体はDNAやRNAといった細胞が持つ核酸の分解産物(プリン体)から作られるものなので毎日大量に産生されていますが、通常は尿から排泄されます。

 

この尿酸が体内で増加する原因としては食物、特にプリン体を多く含む肉類やビールの大量摂取が挙げられています。

またもともと遺伝的に尿酸値が高い人もいます。

運動選手の中には筋肉からの尿酸排泄による高尿酸血症の人もいます。

 

一方、尿酸の排泄の悪い人も尿酸が溜まります。

この尿酸は足の母趾の付け根の関節(第一中足骨趾骨関節)に結晶が沈着して強い炎症(痛風発作)を起こします。

この結晶は尿酸ナトリウムで細胞外液が酸性の時に結晶化します。

これが関節の膜に沈着すると白血球が集まってきて攻撃するため関節内がさらに酸性になりまた結晶が沈着するという悪循環になります。

足の関節はもともと血流が悪く体温も低いので関節の膜の細胞外液のpHは低くなりやすい状態です。

そこに高濃度の尿酸が集まると容易に結晶化してしまいます。

 

尿酸は血液や尿に溶けますがアルカリ性のほうがより多く溶けることが知られています。

尿が酸性であると排泄が障害されるので尿をアルカリ化する治療薬もあります。

つまり、肉に限らず高カロリー食では水素イオンが体に溜まり細胞外液や尿が酸性になるために尿酸の排泄が障害され高尿酸血症になり、局所的に酸性度が高くなったところで結晶化して痛風発作を惹き起こすと考えられます。

 

血中の尿酸が高くないのに発作を起こす患者さんは局所の酸性度が異常に高くなったために結晶化が生じた可能性もあります。

また肉を食べない人でも痛風発作を起こす人がいますがこれも体液の酸性化が原因になっている可能性があります。

逆に言うと、血中の尿酸値が高くても体液の酸性化が起こっていなければ痛風発作は生じないと考えられます。

また高尿酸血症が長く続くと腎臓に結晶が沈着して腎不全になる可能性があるといわれていますが、これも体液および尿の酸性化を抑制すれば防げます。

尿酸結晶による尿管結石もありますがこれも尿のアルカリ化で予防できます。

 

 

がん

ほとんどのがんの細胞外液は正常組織よりも酸性です。

pHでいうと正常組織が7.4前後でがんは6.0~7.0になります。

がんはなぜ酸性なのかというとがんは多数の細胞がどんどん増殖しているために血液が組織全体にいきわたらず低酸素状態になっていることが挙げられます。

酸素が少ないとはじめにお話ししましたようにミトコンドリアのTCA回路が使えないため、エネルギーの産生にはブドウ糖の解糖系しか使えません。

そうすると乳酸が大量に作られてして水素イオンが発生します。

これが細胞外へ放出されて細胞外液が産生になります。

 

がんはこのようにブドウ糖を主なエネルギー減としているために糖の代謝が極めて活発です。

最近がんの診断に使われるPETはこの原理を利用したもので糖の細胞内への取り込みが異常に多い場合にがんの可能性が高いと診断します。

 

がんは細胞の中へも水素イオンをため込むことができライソゾームという小さな袋に多数の酵素とともに塩酸の形で取り込んでいます。

がん細胞は周囲の組織を破壊して浸潤し、血管に入って転移をします。

酸性の細胞外液は組織を破壊するライソゾームの酵素を活性化するのに有効で、この酸性の細胞環境はがんにとってとても好都合なのです。

 

 

それではがんが発生するとき(発がん)にはこの酸性環境はどうなっているのでしょうか。

がんは様々な発癌物質や環境要因によってDNAに損傷をきたして発生します。

環境要因の一つとして慢性炎症が挙げられます。例えば、慢性骨髄炎で皮膚に膿が出続けると皮膚がんが発生することが知られています。

胃がんはピロリ菌によるものが多いと考えられていますが、これもベースには感染症による炎症があります。

アスベストによる肺がんや中皮腫もアスベストが胸膜に炎症を起こしていることが始まりです。

肝がんも肝炎ウィルスによる肝炎が長期に続いた後に発生します。

糖尿病患者は膵炎を伴っていることが多いのですがここから膵がんが発生することも知られています。

糖尿病患者さんは各種のがんになる頻度が健常人に比べて1.2~3.0倍も高いと報告されており、細胞外液の酸性化による慢性炎症が発がんの原因になっている可能性があります。

結核患者さんの膿を伴う肺炎(膿胸)から悪性リンパ腫が発生することもわかっています。

潰瘍性大腸炎から大腸がんが発生することも知られています。

食道がんの主要な原因として逆流性食道炎も挙げられています。

このほかにも慢性炎症と発癌が関係する報告はたくさんあります。

 

 

慢性炎症では細胞外液は酸性になります。

DNAの損傷は発癌物質などの外からの要因でも起こりますが、正常細胞でもDNAの損傷は高頻度に生じています。

しかし、正常細胞はこれらを正確に修復できる能力があり、もし失敗してもそのような細胞は死んでいきます。

まれに生き残り、がん化した細胞も免疫の力で排除できます。

 

しかし、酸性環境が長く続くと細胞内も酸性に傾きDNAの損傷が増えたり、その修復がうまく行えなくなったりする可能性があります。

実際に培養した正常細胞を酸性の環境に置くと染色体に異常を生じる頻度が高くなることが報告されています。

そうするとがん化する細胞の頻度が増えてきて免疫もすり抜けるものが出てくる可能性が高くなります。

そうするとがんが出来てしまうということになります。酸性環境とDNA損傷を起こす要因が重なると発癌する可能性も高くなると考えられます。

 

 

さらにがんがどんどん増殖して全身に広がるためには前述したように酸性環境が好都合であるため、がんは自らそのような環境を形成するようになります。

 

ひとつ面白い事実があります。

大腸や直腸にはがんが多発するのに小腸は驚くほどがんの発生が少ないのです。

小腸は数メートルの長さの臓器で細胞数から言えば大腸の比ではありません。

なぜ小腸にはがんが発生しにくいのか?今までこの質問に明確に答えられた人はいません。

私たちはその説明として小腸腔内は重炭酸でアルカリに調整されているからではないかと考えています。

今のところ証明はされていませんが小腸の細胞外液はアルカリ化されているかもしれません。

少なくとも小腸上皮細胞の表層は重炭酸の分泌でアルカリ化されています。

 

胃は胃酸(塩酸)を分泌する細胞がいるので細胞外液も酸性になっている可能性があり、ピロリ菌がこれを助長して慢性炎症を誘導している可能性もあります。

特に胃酸が胃粘膜上皮細胞を破壊すると塩酸が細胞間質に入り込み、間質液を酸性にして慢性炎症を生じ、胃がんを発生しやすくしていると考えます。

 

食道では逆流性食道炎で酸性化していると考えられます。

大腸や直腸では腸内細菌の発酵により便や腸液は酸性化していると考えられます。

つまり消化管の中では小腸だけがアルカリの環境にあるのです(唾液もアルカリなのですが、酸性の飲食物や細菌による乳酸などの産生で酸性化していることが少なくありません)。

これらの事実も酸性環境と発がんの関連を示唆していると思います。

 

さらには前述したように菜食主義者(ベジタリアン)の尿のpHはアルカリ化していることが知られていますが、一般人に比べ発がん率が低いことが報告されており、これもアルカリ体液ががん予防に有効であることを示していると考えます。

 

 

骨粗鬆症

高齢化に伴い骨のミネラルが減少して骨が脆弱化する病態です。

転倒により大腿骨頸部骨折、脊椎圧迫骨折などを生じ高齢者が寝たきりになる原因になります。

骨が加齢とともに弱くなるのは筋力の低下による運動不足が始まりですが、女性では閉経に伴う女性ホルモンの低下が原因になることもあります。

関節リウマチやステロイドの投与によっても起こることがあります。

 

骨形成には骨を作る細胞(骨芽細胞)が必要ですが、古くなった骨は骨を食べる細胞(破骨細胞)が先ず破壊して、そこに骨芽細胞が移動して新しい骨を作ります。

若いときはこの働きがうまくかみ合って骨の代謝が行われますが、年齢とともに骨の破壊が進んでしまいます。

破骨細胞は大量の水素イオンを細胞内の袋(ライソゾーム)に持っており、これを様々な酵素とともに細胞外に放出して骨の成分(コラーゲン、カルシウム、リン)を破壊します。

そのため細胞外液が酸性なほど破壊作用が強くなります。

 

一方骨芽細胞は細胞膜表面にアルカリフォスファターゼという細胞外液がアルカリ性で活性化されるリンを骨に沈着させる酵素を持っています。

つまり、細胞外液が水素イオンの多い酸性であると骨破壊が進み、骨形成が抑制され、アルカリ性では骨形成が促進されるということになります。

 

高齢者では細胞外液が酸性の状態が長く続くと骨粗鬆症になる危険性が高くなると考えられます。

糖尿病患者さんは骨粗鬆症を合併していることが多く、これも酸性体質が関係していると考えられます。

 

体液をアルカリ化すると骨形成が活性化されて骨粗鬆症の治療に有効であったという報告も複数あります。

 

骨粗鬆症以外でも酸性環境が骨形成を抑制することは知られており、骨折の初期は出血による炎症で細胞外液が酸性化して骨形成は誘導されませんが、炎症がおさまり血行が回復すると細胞外液がアルカリ化し、骨形成が活発になり骨折が治ります。

 

人工関節が骨と接するところが酸性であると骨が形成されずに緩みやすくなることも報告されています。

 

また小児の腎性アシドーシスでは成長障害を生じることが知られていますが、経口薬により体液をアルカリ化すると身長が伸びることが報告されています。

 

これらの報告を見ると酸性体質は骨形成に悪影響を及ぼしていることはほぼ間違いないと考えられます。

 

 

細菌感染症

人体に常在する細菌の多くは弱酸性を好みます。

皮膚の表面は弱酸性(pH5~6)ですのでこの環境に適した菌が常在して、時に毒性を発揮します。

殺菌には強酸が良く使われますが、アルカリ化しても多くの菌が適応できずに死滅します。

 

小腸は重炭酸や胆汁酸でpH8.0程度のアルカリに保たれているために腸内細菌はほとんど繁殖できません。

それが大腸に近づくにつれて中和作用が弱まり、徐々に酸性化し先ずいわゆる善玉細菌のビフィドゥス菌が繁殖して乳酸を作り徐々に腸内を酸性化していきます。

そうすると今度は酸性環境で繁殖できる細菌が大量に出現してきて大腸でいわゆる腸内フローラ(腸内細菌の共存生活集団)を形成します。

 

 

この大腸での細菌繁殖はビタミンや短鎖脂肪酸などの産生、吸収など生体にとって重要ですが、一方でタンパク質の分解によるニトロソアミンによる発がん物質も作ります。

適度な腸内細菌フローラを維持するには腸内が極度に酸性化しないようにしたほうがいいのかもしれません。

そのためには小腸内を十分にアルカリ化しておいて腸内細菌の増殖を抑えたほうがいいと考えられます。

ただし、コレラ菌はアルカリで繁殖するので小腸に炎症を起こしすべての栄養素の消化吸収を阻害します。

 

 

その他の酸性体質関連疾患 

歯槽膿漏

これも口腔内の細菌感染によって引き起こされる感染症です。

口腔内は唾液に満たされており、唾液自体はpH9.0ぐらいのアルカリなのですが、砂糖などの糖分が経口摂取されて歯や歯肉の間に溜まると口腔内の細菌が発酵して乳酸などの酸を分泌します。

そうすると酸により歯のカルシウムやリンが溶けるだけでなく細菌の増殖が活発になります。

これが歯肉炎および歯槽膿漏の原因になります。

昔から甘いものを食べて歯を磨かないで寝ると虫歯になるといわれていたのは正しいのです。

寝ている間は唾液の分泌が抑えられるので細菌がどんどん繁殖します。

食物を良くかんだり、しゃべったりすると唾液の分泌が促進されるので酸性化が防止でき虫歯が少なくなります。

 

 

水虫

これは白癬菌というカビ(真菌)の感染症ですが、足や陰部の皮膚の角質に菌糸を伸ばして広がります。

このカビも酸性の環境を好みます。

多くのカビは酸性環境を好みますのでお風呂の掃除などで重層(重炭酸ナトリウム)を使うとカビが死滅してきれいになります。

 

 

インフルエンザ

ウィルスは人体の細胞に入り込み、そこで増殖して細胞を破壊しさらに感染を繰り返していきます。

人体に有害なウィルスはそれぞれ標的になる細胞がありますが、まずはその細胞膜に付着しなければなりません。

多くのウィルスは細胞膜周囲の環境が酸性である時に細胞膜に付着して細胞内に取り込まれます。

インフルエンザウィルスは喉や気道粘膜が酸性になった時に感染しやすくなります。

冬場に気温が下がり、空気が乾燥して気道粘膜の粘液が濃縮されると酸性化しやすくなります。

そうなるとインフルエンザウィルスが感染しやすくなると考えられます。

細胞内に入り込んだウィルスはライソゾームという酸性の袋の中で増殖して細胞破壊するのでもともと酸性の環境を好むと考えられます。

 

このことはインフルエンザウィルスに限った事ではないので、肝炎ウィルスやエイズなども酸性体液を好む可能性があります(71)。

 

 

アルツハイマー病

最近の研究でアルツハイマー病患者さんの脳内にベータアミロイドという物質が異常に蓄積され脳神経細胞が破壊されることが分かってきました。

このベータアミロイドは脳が酸性になっていると多く産生されることが報告されています。

また酸性体質では血管に慢性炎症を生じ脳神経細胞への酸素供給が滞り壊死になる可能性もあります。

 

糖尿病患者さんにアルツハイマー病が多く発生することが知られておりアルツハイマー病は脳の糖尿病であると考えている学者もいます。

糖尿病患者さんは酸性体質で全身性の慢性血管炎を生じていることから私たちの理論と一致する結果と考えます。