人間にとって都合の良い草はハーブ、人間にとって都合の悪い草は雑草と呼ばれています。
雑草の中でも特に嫌われているのがスギナです。
スギナは畑や田んぼの嫌われものを代表する草であり、土手や空き地にも気づいたら生えているもので、除草作業する人にとってはとてもやっかいものといえるでしょう。
ちなみにスギナは杉に似ているため「杉菜」ということが名前の由来です。
実はこんなスギナでも私たちは知らない間にとてもお世話になっていたのです。
スギナの祖先は約3億年前に地球に繁栄したとされています。
このスギナの祖先が中心となって当時の森林を作り、やがて石炭となって、後年、私たちの生活に欠かせないエネルギーとなったのです。
また、有名な話ですが、広島に原子力爆弾が落とされ廃墟と化したその土地に、真っ先に生えたのがスギナだったと言われています。
これは被爆後1年以内の出来事だったそうです。
(実際の当時の調査では、スギナの他にハコベ、ナズナ、ドクダミ、ヤエムグラなどの草本も記録されています)
被爆後、この爆心地には数十年は生物が住めないだろうと言われたこの広島の土地に、復興の兆しを見せるかのように登場したのが、あの憎き雑草たちでした。
緑の新芽を見せたスギナたちは、悲しみに暮れていた広島市民を慰め、とても勇気づけたという記録があります。
実際に、原爆資料館が新設されたときに、代表的な雑草19種類を標本にし、陳列させたそうです。
スギナをここまで生命力の強い性質にしているものは一体なんでしょう。
それは地下茎(根茎)です。スギナは古来より、深い地下にある地獄まで根っこが伸びているという言われがあります。
実際には、地下へ伸びているのは根ではなく地下茎です。
この地下深くまで張ってある地下茎があるからこそ、原子力爆弾によって地上の部分が焼失されても、再生することができたのです。
除草してもまた生えてくるスギナの生命力は、やはりこの地下茎のおかげです。
スギナは不思議な雑草のひとつですが、日本に多い酸性土壌に一目散に生え、やがて枯れるとその土壌をアルカリ性にする作用があります。
土壌がアルカリ性になるとスギナはやがてそこから去っていき、また酸性土壌になると再びやって来ます。
この憎き畑の嫌われものスギナは、私たちの知らない間にさまざまな働きをする不思議な雑草なのです。