人類がかきを食べるようになったのは有史以前からで、その証拠に貝塚からかき殻がたくさん出てきている。
それだけ人間の生理は、かきに適応しているから、スムーズに消化・代謝される。だから、同じ動物性食品でも、動物蛋白食品(肉、牛乳、卵)のように酷く血液を酸毒化することはない。
かきには、体蛋白から赤血球をこしらえる際に不可欠なミネラルである鉄、銅、マンガン、ヨードなどがたっぷり含まれる。レバーと違って腸機能を混乱させることもないから、それらの有効成分は確実に利用されるわけだ。
すぐれた強壮作用をあらわすのは主にグリコーゲン及びビタミンB群によるもの。これらの成分によってエネルギー代謝が効果的に行われるようになるためだ。従って、体質が虚弱化したときにあらわれやすい寝汗にも、かきは卓効をあらわす。
また強精食品としても有名だ。
かき独特の美味しさを生み出している元は、かきの生殖腺であるだけに、アルギニンなどのホルモン成分が沢山含まれている。
だから、このホルモン成分を失ってしまった後にかきはまずくなる「桜が散ったらかきを食べるな」と言われるのもそのため。別に有害というわけではない。この間の事情は、かきの生態のアウトラインを掴んでいると理解しやすいだろう。
かきはすべてオスとして生まれ、産卵期になるとメスに性転換して産卵する。産卵に備えて生殖巣が熟し始めるのが5~8月で、そのため体内の栄養分を消費してしまうので、まずくなるわけだ。産卵をすませた9月頃からは徐々に体成分も充実して美味しくなってくる。
そして、味の絶頂期は12~1月の厳冬期だ。
さらにかきには神経を静めるカルシウム、視神経の疲れを取るビタミンAも豊富なため、不眠症、夜尿症、性欲減退、眼精疲労などに有効だ。
かき鍋、かき飯、かきフライなど様々な食べ方が楽しめるが、通人は、生がきに限るともいう。生がきにユズ汁をかけて食べるのだ。そういえば世界一多くかきを食べるフランス人も、ほとんどレモン汁をかけるだけで生食している。
ただ残念ながら、公害物質による汚染の心配もあるし、それ以上に、不自然食による現代日本人の胃腸機能の弱体化減少もある。食中毒などの害作用防止のため、なるべくなら十分に加熱したほうが懸命である。
ついでながら、かき殻にも薬効のあることを申し添えておこう。かき殻は、かき自身が吐き出した唾液が石灰化したもので天然の炭酸カルシウムやリン酸カルシウムを大量に含んでいる。粉末を飲むと、胃酸過多、神経衰弱、タンなどに有効。
■かきのかぶら蒸し
材料(5人分)
・かき・・・10粒
・ぎんなん・・・5粒
・しいたけ・・・5枚
・うずまき麩・・・10個
・三つ葉・・・5本
・かぶ・・・5株
・くず粉・・・大さじ2と1/2
・だし汁・・・少々
・自然塩・・・少々
・自然酒・・・小さじ2
・くず餡(だし汁1と1/2カップ、自然酒大さじ1、しょうゆ大さじ2、くず粉大さじ1、みりん小さじ2、ユズの皮少々)
<作り方>
①かぶはすりおろし、くず粉、だし汁、自然酒、塩を混ぜ ておきます。
②ぎんなんは外皮をむき、塩ゆでして、薄皮をむきます。
三つ葉はサッと熱湯をかけてしんなりさせ、1本ずつ結んでおきます。 しいたけは、少しのだし汁で煮て、しょう油、みりんで味つけしておきます。
かきは塩水できれいに洗っておきます。
③器に、かき、しいたけ、巻き麩、ぎんなんを置き、①をかけてフタをし、蒸気の立った蒸し器で15分くらい蒸します。
④くず餡をつくり③をかけて、結び三つ葉とユズの皮を飾り、熱いうちに召し上がってください。