末期癌患者が、残りの人生を温泉地でゆっくりと過ごすとを決めてから3カ月間、温泉巡りをしていたそうです。
いつの間にか、その方の癌が体から消えていたという話を聞きました。
温泉には解明されていない自然治癒の力を引き出す効果が期待できるようです。
大分県の内部、九住山系の麓、竹田市直入町にある「長湯温泉」は、国内では数少ない炭酸泉の湧出するところとして知られている温泉地です。
また炭酸泉の湧出量と二酸化炭素の含有量、そして温度から、日本一の炭酸泉とも言われています。炭酸泉が堪能できる長湯温泉には、いくつかの温浴施設や旅館がありますが、オススメしたいのは「ラムネ温泉」です。
そもそも炭酸泉は、その特性からも内湯が多いのですが、露天風呂が楽しめるのは貴重な存在です。ラムネ温泉は、リニューアルして以来、スタイリッシュで少しモダンになりましたが、肝心な炭酸泉は相変わらず、存分に、シュワシュワを楽しむことができます。
炭酸泉は、源泉温度が40℃以下のぬる湯がほとんどで、高温になると炭酸が抜けてしまうので、独特のシュワシュワ感を味わうためには、源泉を加温せずに使用しなければなりません。
季節によっては、浸かり始めは少し冷んやりと感じますが、やはり本物の天然炭酸泉ですから、5分もしないうちに体が温まってくるのが実感できます。ぬる湯なので、30分以上湯に浸かっていても、湯あたりすることはないと思います。
日本の炭酸泉は、長湯温泉も該当しますが、少し鉄分が含まれているものが多いので、湯に浸かることでミネラルも補給できます。天然の炭酸泉によって、血の流れが良くなるので、腰痛や肩こりが軽減されるという声を地元の方々からも聞きます。
昭和初期、ドイツで温泉療養学を学んだ松田武幸博士、御沓重徳(みくつ しげのり)が実験を重ね、長湯の炭酸泉の効能を実証したそうです。そして、昨年(2015年)12月、竹田市と一般財団法人「日本健康開発財団」と慶応義塾大学で、直入町の長湯温泉の飲泉効果に関する調査結果を発表しました。温泉水を飲むことで血中成分や腸内細菌の機能が変化し、糖尿病予防の効果に期待できることが証明されたそうです。医科学的なデータに基づく飲泉効果の研究は初めてということです。
「長湯温泉」は、世界屈指の炭酸泉湧出地で、古くは岡藩主中川久清公などに愛され、藩主・藩士の湯治に認められていたそうです。また与謝野晶子ら文人墨客にも好まれ、ゆかりの歌碑も多く点在しています。平成元年に世界の代表的な温泉療養地である、ドイツのバードクロチンゲン市と姉妹都市を結びました。町並みは、ヨーロッパを思わせるレンガ造りのしゃれた飲泉場などの建築物も多く、また、同市でしか味わえないドイツワインなど、町のいたるところでドイツ文化を感じることができます。
そして、長期滞在して心や体を癒したいという、この温泉に魅せられたリピーターのために、平成23年度、竹田市は豊かな温泉を健康づくりに取り入れる目的で、温泉を使った滞在に「保健」を適用する制度、「温泉療法保健システム」を開始しました。この制度は、旅行者でも3泊以上滞在すると入浴や宿泊などの補助が返金されるということで、長湯温泉観光案内所でパスポートを発行してもらえます。このシステムは、竹田市が全国に先駆けて発信している取り組みで、竹田市の温泉や自然、文化をトータルに楽しむ「竹田式湯治」で元気になり、来訪する人々が温泉をより身近に感じ、“湯治”の効果を実感し、さらに元気に、健康になっていただくことを目的とするものだそうです。
十和田、八幡平国立公園の乳頭山麓に点在する七湯が乳頭温泉郷と呼ばれています。鶴の湯温泉、妙乃湯、黒湯温泉、蟹場温泉、孫六温泉、大釜温泉、休暇村乳頭温泉郷の七湯は独自に源泉を持ち、その泉質は多種多様で、合計すると十種類以上もの源泉があります。ブナの原生林の呼吸によって澄んだ空気の中、さまざまな泉質の温泉を堪能できます。また、山菜やきのこなど、自然溢れる恵も味わうことが出来ます。
鶴の湯温泉は、乳頭温泉郷の中で最も有名で最も古くからある温泉宿で、鶴の湯の名前の由来は地元の猟師、勘助が猟の際に傷ついた鶴が湯で傷を癒すのを見つけた事がそのまま鶴の湯の名に残ったのだといいます。開湯は350年前と言われています。
鶴の湯には4種類の泉質の異なる源泉があり、どれも足元からぷくぷくと湧き上がる乳白色のお湯が特徴です。白湯(美人の湯、別名冷えの湯)は、もっとも湯量が豊富とのこと。濁りは他の湯より薄い感じです。黒湯(ぬぐだまりの湯・子宝の湯)は湯冷めの来ないことから不妊症に、中の湯(眼っこの湯)は、 眼っこの湯と呼ばれているように、目の疲れを癒す効果が有名です。他、滝の湯(打たせ湯)と、同じ敷地から効能、泉質共に異なる4つの温泉が湧く珍しい温泉場です。この4種類の中で一番オススメなのが白湯になります。
何よりも、この鶴の湯温泉が人気のある理由は、鶴の湯の玄関と言える門の前まで来ると、黒い壁に茅葺屋根でできた一つの集落のような佇まい。現代とは違う時代に入り込んでしまったかのような雰囲気の部屋の中には囲炉裏があり、灯油ランプがぶら下がっています。本陣の建物は江戸時代に湯治場として使用していたものをそのまま残して使用しているそうです。歴史のある建物ですが、現代的な洗面所、ウォシュレット付のトイレ、暖房など、古いままの設備ではなく、新しいものを取り入れています。昔懐かしいひなびた雰囲気を味わいながら、かつ、快適に過ごせるというのが人気の秘密のひとつではないでしょうか。
会津・裏磐梯は、磐梯山や桧原湖、五色沼などの豊かな自然に恵まれた地。裏磐梯の森にそっと佇む宿、大府平温泉「ホテリ・アアルト」には、敷地内にある沼のほとりから湧き出る源泉があります。色合いを変える景色に飽きることのない黄昏どきや、まるで北欧の森にいる様な錯覚さえ覚える、朝もやにかすむ木立を眺めながらの源泉かけ流しが堪能出来ます。敷地内に地下545mから湧き出る硫黄泉で、かすかに黄色味を帯びた澄明な湯が湧き出ています。源泉温度は50℃、湧出量毎分101リットルの湯は、その温度と湧出量に合わせて浴室を設計し、加水、加温の必要がない源泉かけ流しの絶景温泉です。また、塩化物泉は塩のベールでお肌をコーティングするので、保温保湿効果が期待できます。
離れがあるホテル「ホテリ・アアルト」は裏磐梯高原、吾妻小富士、猪苗代湖等を望む裏磐梯ホテルリゾート地にあり、五色沼にほど近い木立の中、ひっそりと佇んでいます。
外観も建物内もインテリアも北欧テイストでまとめられていて、家具や照明、インテリアは徹底して北欧のものを使用。建物は、裏磐梯にあった築40年の山荘を、〝捨てない、壊さない″を最大限に活かしたリノベーションによって甦らせたとのことで、地元産の無垢材と漆喰の内装、自然エネルギーを大切にする観点から、かけ流しの温泉の排熱も有効活用されています。客室は、離れを含む13室全てが趣の異なるしつらえで、インテリアに関しては、家具好きにはたまらないウェグナー、ヤコブセン、アルテックら北欧デザイナーの家具が美しく配置されています。ラウンジの真ん中に据えられた巨大なテーブルは、大変貴重な山桜の巨木をそのまま譲り受け、割ってみないと使えるかどうか判らない代物だったそうです。オブジェもマリア・クルバーグさんの作品など、インテリアもどれも素敵なものばかり。
アアルトのもうひとつの顔。それは、フレンチディナーとも言える懐石型自然料理。ダイニングは「たごころ食堂」と名付けられ、「田」の下に「心」を書いて「思」という意味だそうで、 ひと品ひと品、〝思い″を込めて料理を作り、「地産地消」で、この地の恵み を「お福分け」したいという願いがあるそうです。地元産の食材で手をかけて作られた、素材の持ち味を最大限に生かした素晴らしい料理ばかりで、料理を食べるためだけでも訪れたいと思うほど。また、オールインクルーシブのため、夕食時のお酒が全て無料というのも魅力的です。
源泉かけ流しの絶景温泉とおいしい食事で、副交感神経優位にし、体温を上げましょう。
温泉マニアの間ですこぶる評判が高い温泉「あきしげゆ」は、宮崎県えびの市の霧島国立公園の北側にあります。比較的温泉が少ない宮崎県の中でも、この辺りは温泉が沢山あるエリアで、「あきしげ湯」はJRえびの駅から車で10分ほどの、霧島連山が一望できる高台にあります。
「あきしげ湯」の魅力は、泉質の良さもさることながら、経営されている御夫婦の心温まるなおもてなしにもあるようです。「あきしげ湯」という名前は、経営されているご主人の秋元(あきもと)さん・奥様の成子(しげこ)さんの名前に由来しているそうです。霧島山が大好きなご主人は何年か前脳梗塞で倒れたそうですが、温泉のおかげでなんとか歩けるくらいに回復したということで、当初は自宅用の温泉だったのを増築して一般客に開放したということです。
最大の魅力は、なんと言ってもお湯の素晴らしさにあります。
植物の堆積由来で有機質を多く含む「モール泉」と呼ばれる系統のお湯で、肌に触れるとトロトロとした柔らかな感触です。色は紅茶色で透明度が高く、くせがない万人受けをするであろう、柔らかな浴感の湯です。また、うすめず、沸かさず、飲んでよし、入ってよしの源泉100%のお湯です。閉店後清掃し、毎朝純度100%の源泉を掛け流しているそうで、60℃の源泉が、200ℓ/分浴槽に直接注がれているため、加温・加水は一切していないそうです。
栗野岳温泉(くりのだけおんせん)は、鹿児島の霧島温泉の少し北西の栗野岳中腹にあります。霧島温泉郷としては1カ所だけ離れた場所にありますが、杉木立を縫って標高700㍍まで上ったところに、噴気の山を背に立つ一軒宿の「南洲館」があります。
「地獄」の名を持つ秘湯の宿は何軒かありますが、ここ「南洲館」の八幡大地獄、ラジウム地獄の噴気はその規模や勢いがみごとで、九州一の噴気孔とも言われています。源泉は「桜湯」、「竹の湯」、「蒸し風呂」の三種類になります。
三種類の異なる源泉は二日かけて50度ほどに下げられ、昔ながらの温泉の姿でお客様をもてなします。観光客用の棟のほかに湯治用の別棟もあり、日帰り入浴も可能です。
霧島の大自然が奏でる四季折々の姿に溶け込んだ鄙びた風情も趣があり、毎年多くの温泉ファンが訪れています。
そして、商売気をあまり感じさせないご主人の穏やかな応対と、地元の山で採れた山菜メインの会席料理や、「鶏の地獄蒸し」も人気の秘密。温泉の蒸気で鶏を丸々2時間蒸し上げた名物料理で、これを食べるために訪れる人もいるそうです。