分子栄養学や生化学のメカニズムを学んでしまうと、どうしても多くの人がサプリメントに走りがちです。
現実的にこれはこれで一つの手であると私は思っています。状況や場合によっては、私は推奨することさえあります。
なぜなら、それだけ新型栄養失調の人が多かったり、栄養の欠乏症が見られる人が多かったりするからです。
しかし、本質的なこととして、より大切なことは地元で育った食材を選び、普段の食事からきちんと栄養を得ていくという身土不二の流れがより自然的な行為といえるのではないでしょうか。
仮にサプリメントを服用してある程度欠乏していた栄養を満たしたのなら、その後、最終的には”できるだけ”サプリメントに頼らない食生活を取り戻すことが動物としての本来の生き方であると思うのです。
当たり前ですが、真の栄養補給は食事にあります。
サプリメントと食べ物の大きな違いは、栄養素の「バランス」にあります。
サプリメントは単体の栄養素であったり、人工的に配合された栄養素群だったりします。欠乏した栄養素を効率よく取り込んで体調を回復させるメリットがある一方で、長期的に継続すると場合によっては偏ったこの栄養補給により競合した栄養素が欠乏してしまうなどのデメリットもありえます。
一方、食べ物は、食べ物となる前のこの生き物自身が生命活動をしていく上で、絶妙なバランスで天然型栄養素を含んでいます。私達と同じ動物の栄養には多少の違いがあっても大きな違いはなく、特異性は低いと言えます。
ビタミンやミネラルはその性質上、相互作用や拮抗作用があるため、マルチビタミン・マルチミネラルとして取り込むことが大切ですが、それを理想近くまでに満たしているのがレバーなどの内臓肉です。
私がモンゴル遊牧民を訪れたとき、ヒツジの解体後にまず出されたのが、火であぶったレバー(肝臓)でした。レバーの焼き具合はレアの状態でしたが、女性群と子どもたちがまずは集まり、みんな積極的に食べていました。
次に他の内臓部は塩ゆでして、みんなで回しながら食べたのです。明らかに彼らは、内臓は重要な栄養食品として取り扱っていました。残りの筋肉部は少し干してから、その日の夕飯か、翌日に食べました。
レバーは、優れた高品質なタンパク質、豊富なビタミンB群(特にB12)、利用度の高いカタチをした鉄分、完璧な量を誇る葉酸、亜鉛・銅・クロム(3価)の最高の栄養源、ミトコンドリアの活動に必要なコエンザイムQ10の重要なソース、ビタミンAの宝庫、抗ファティーグ(疲労)栄養素の貯蔵庫、DNA・RNAの前駆体として機能するプリンタ体などの貯蔵庫といえます。
肝臓というと解毒器官でもありますが、毒素成分を格納する貯蔵器官ではなく、むしろ上述のように、ビタミンA、D、E、K、B、葉酸、そして鉄、亜鉛、銅などのミネラルを多く含んだマルチビタミン・マルチミネラルの重要な貯蔵器官といえます 。
そして、何よりの利点は、これらの栄養素は合成製造されたものではなく、天然型であるということです。
ウェストンAプライス博士はアフリカのとある狩猟民を訪問した時に、狩猟民はレバーを神聖なものと考えていたため、直接手で触れずに、槍のみを使ってレバーを取りだしていたそうです。
一方、今の日本ではレバー肉を食べる人が減ってしまい、店頭で見ることさえ少なくなりました。特に女性や子どもにおいては、レバーが苦手であるということが多く、豊富な栄養を逃しています。
今一度、私たちはレバー肉の重要性を見直す必要があるかと思います。もちろんレバーに含まれている栄養素を他の食品で補うことはできます。しかし、それらの含有量は乏しいものが多く吸収効率も劣り、これでは慢性的な栄養欠乏になっても仕方ないのではないかとさえ思います。
また、レバーを食べる頻度は、一物全体として一頭まるごとを食べることを意識したとき、各部位の食べるサイクルを考えればよいと思います。ある程度筋肉部位を食べたのなら、そろそろ内臓かなとか。
私たちが本当に学ぶことは栄養学のメカニズムや理論ではなく、そもそもどの食品、どの部位に栄養が多いのかです。
健全に生きている民族はサプリなど利用しなくても、どの食材を食べれば調子がよいか、エビデンスの中ではなく体感的にきちんと理解しているのです。