手のひらや足の裏の皮膚に膿を持った小さな水ぶくれができて、悪化すると痛みを伴い、皮膚がボロボロになってしまう「掌蹠膿疱症」(しょうせきのうほうしょう)という病気があります。
見た目は水虫(白癬菌の感染)などによく似ていますが、これは細菌や真菌、ウイルスなどの感染症によるものではありません。
原因としては、扁桃腺炎や副鼻腔炎、歯周病などの原病巣に端を発する慢性炎症や、過剰なストレスなどが疑われていますが、完全に解明されているわけではないのが現状です。
自己免疫疾患の一種ではないかという説もあります。
最近では、金属アレルギーとの関連性がよく知られるようになりました。
なかでも、歯科金属アレルギー(歯の治療に伴う金属製の詰め物などに対するアレルギー反応)は大きな要因のひとつだと考えられます。
歯の詰め物にはさまざまな種類の金属が用いられますが、何といっても、水銀アマルガムの悪影響は顕著です。
実際に、掌蹠膿疱症患者の水銀アマルガムの詰め物をすべて除去したところ、それまでボロボロだった手足の皮膚がすっかりきれいになったというケースもあります。
また、亜鉛の補給によって症状が改善したという例もあります。
これは、亜鉛が充足することで皮膚のタンパク質の代謝が正常になったり、免疫システムが整ってアレルギー反応が緩和されたり、あるいは解毒タンパク質(メタロチオネイン)の合成がスムーズになり、水銀の解毒が促されたりした結果であると推測されます。
一方で、歯科金属アレルギーが疑われ、歯の詰め物を全て除去したにもかかわらず、症状が一向に治まらなかったという例も報告されています。
ある歯科医師の方が、この患者に普段の食事内容を尋ねてみたところ、牛乳や乳製品、甘いものが大好きで、肉類や揚げ物などもよく食べるということでした。
そこで、これらをやめて、玄米や豆類、野菜中心の穀菜食を実践するようアドバイスした結果、症状がどんどんよくなっていったそうです。
この場合、細胞の環境を乱す因子が取り除かれたことや、豊富に含まれるミネラルやビタミンの恩恵はもちろんのこと、高繊維食によって腸内細菌叢が安定し、免疫系が正しく機能するようになったことも大きく貢献したものと思われます。
歯科金属に注目するのも、亜鉛をしっかり摂取するのも、穀菜食をとるのも、全てのアプローチが理にかなっており、どれかひとつが正解というわけではありません。
むしろ、こうした多種多様なアプローチを包括的に行えば、掌蹠膿疱症への非常に有効な対策になるだけでなく、心身の健康状態が幅広く改善されていくことでしょう。
逆に言えば、掌蹠膿疱症は決して“原因不明の病気”などではなく、「細胞環境の悪化」が原因です。
現代人は誰もが食事や環境中から無数の有害物質を取り込み、細胞の環境が劣悪な状態になってしまっています。
そんな環境を是正しないまま何らかのアプローチを行ったとしても、細胞が最高の働きをしてくれることはありません。
それは、現代人が見舞われている多くの健康問題も同様です。
だからこそ、何よりもまず、全身の細胞の環境整備に徹底して取り組む必要があるのです。
そうやって、細胞の環境さえ整えてやれば、あとは細胞たちが勝手に万事都合よくやってくれる。
そして、最高の治癒力をいかんなく発揮してくれる・・・。