うつが肉体の健康にもたらす代償は大きなものであることは良く知られています。
最新の研究では、うつにより、脳に影響が出ることがわかりました。
特に、うつ症状の再発を繰り返すと、感情や記憶を司る海馬が萎縮してしまうため、十代の若者では特に早期の治療が必要です。
記憶とは、日付、パスワードの記憶にとどまりません。
自己の認識を形成、維持するために非常に重要です。
海馬の萎縮により影響を受けるのは暗記能力だけではありません。
自己の認識に基づく行動も影響を受けます。海馬が萎縮すると言うことは、感情、行動機能の喪失を意味しているのです。
良いニュースは、ダメージをリカバーできるという点です。
そのためには、何らかの対策が必要です。
慢性のうつは脳を損傷させる
国際研究グループにより、世界中様々な地域の8,930人において脳のMRI検査データを分析したところ、うつの症状が再発する人は、海馬が小さいことがわかりました。
うつの患者全体の65%にこの現象が見られました。
初めてうつの症状が出た人には脳の萎縮は見られなかったため、症状の再発が海馬を萎縮させると結論づけられます。
海馬が萎縮している人では、発症年齢が、21歳以前と、萎縮が見られない人と比べて早いこともわかっています。
過去の研究でも、うつ症状の見られる人では、海馬が小さいことがわかっていましたが、それがうつの原因であるか、うつの症状が原因であるかわかっていませんでした。
この研究で真実が明らかになりました。
うつが起こって、脳に損傷を与える。共同著者のIan Hickie博士は次のように述べています。
「症状の出た回数が多いほど海馬の萎縮も進んでいます。
治療しないまま放っておくと、うつ症状の再発や持続により海馬のダメージも増していくことになります。
これで、海馬が小さいからうつになるのか、うつのせいで海馬が萎縮するのかという一番の疑問が解けます。
脳へのダメージの原因は症状の再発です。
他の研究では、海馬の再生能力が示されています。
脳の他の部位よりも急速に細胞間の連携が再生されます。
細胞自身が損傷を受けているのではなく、細胞間の連携が途絶えているだけなのです。
うつ症状への対処とは、投薬だけではありません。
例えば、失業中で何もすることがなく、ただ部屋でぼーっと過ごしていると、海馬が縮んでしまいます。
社会的なつながりを持つことも重要な対処です。
また、フィッシュオイルなども品系を保護する効果があることが知られています。」
うつの原因となる炎症
一般的に考えられているのとは異なり、うつは脳内の化学物質のアンバランスで起こるわけではありません。
他に 様々な生物学的要因があるのです。
慢性の炎症もその一つに挙げられます。
また、ビタミンDの不足や腸内フローラの乱れなどが精神的な健康に影響を与えること、また、そのような環境が炎症を長引かせてしまうこともわかっています。
うつの治療法もそこに集約されます。
Kelly Brogan博士も記事で述べているとおり、うつの症状は炎症が発端となって起こる症状なのです。
「発端となっている症状は一つかもしれませんし、ストレス、食事、有害物質への暴露、感染など様々な場合もあります。
炎症は、やる気が起こらない、考えがまとまらない、おっくう、感じ方の変化、代謝の変化など、うつの症状の原因となります。」
サイトカインなどのバイオマーカーや炎症伝達物質であるCRP、 IL-1、 IL-6、TNFαなどの血中濃度も、うつ症状の前兆として比例関係にあり、新しい診断のツールとして注目されています。
うつ、双極性障害、産後うつでは、サイトカインの濃度が上昇し、コルチゾールへの感受性が低下している状態です(コルチゾールはストレスホルモンでもあり炎症を抑える効果もあります)。
食事のなかで最も炎症性の高い材料は、「砂糖」
砂糖、ほとんど加工食品に含まれており、その役割を理解せずに、炎症に対処することはできません。
炎症を悪化させる他に、砂糖は、インスリン/レプチン抵抗性や、信号伝達の不具合など、精神面の健康に関連する機能に影響します。
また、砂糖により、重要な成長ホルモンであり、新しい神経単位が作られるのを促進する BDNF(脳から分泌される神経栄養因子)の分泌が抑制されます。
鬱状態や精神分裂病の状態では、このBDNFの量が非常に少ないことが動物実験でわかっており、うつの症状の原因と考えられています。
2004年にはイギリスの精神症の研究者であるMalcolm Peetは、食事と精神症の関係に関する多国籍の分析結果を発表しました。
砂糖の消費量が多いと、うつ、精神分裂病のリスクが増加することわかっています。
2007年に発表された別の研究では、炎症が、うつの原因の一つであるだけではないことが示されました。
うつは、その他の全ての問題のリスク要因なのです。
うつの治療にはリアルフードが良い
食事が精神面の健康に良くも悪くも影響することは明らかです。
うつの症状、気分の浮き沈み、急に気分が塞いでしまう、などの症状に悩んでいるなら、食事を見直してみることをお勧めします。
リアルフードが鍵になります。
理想的にはオーガニックで(化学物質への暴露を防ぐため)、地元で生産されたもの(なるべく新鮮なもの)が良いでしょう。
伝統的な発酵食品も食べましょう。
腸内に善玉菌が増えます。
ザワークラウトやキムチ、昆布茶(発酵ドリンク)など様々な野菜を使った発酵野菜のほか、繊維が豊富で、食物繊維が豊富なプロバイオティクス食品であるメキシコ産のヤムいもなどもお勧めです。
腸内フローラを整えることは精神面の健康にとって欠かせない要素です。
腸内菌は、ドーパミン、セロトニンなどの神経化学物質やビタミンを合成しているのですから不思議ではありありません。
事実、セロトニンは脳よりも腸内に多く存在しています。
どのようなものであれ加工食品は控えましょう。
オーガニック認定を受けていても加工食品は「生きた」食品ではありません。
食べても良いのは、完全で、手を加えられていない食品で、一から調理する(または生食する)ものです。
加工食品には、腸内フローラに影響を与え、炎症を起こす原料がたくさん含まれています。
これがうつにもつながりかねません。次の原料が該当します。
砂糖、 高フルクトースのコーンシロップ
遺伝子組み換え作物(GE)(主に、コーン、大豆、テンサイなど)。
健康への影響が計り知れないばかりでなく、 発がん性リスク一覧のグループ2A に分類される グリフォセートを含みます。
腸内のマイクロバイオームにダメージを与え、耐性菌の発生とも関連づけられています。
最も一般的な(遺伝子組み換えではない)麦 でさえ、収穫前にグリフォセートで処理されています。
人工甘味料や、数々の食品添加物。その多くが安全性の確認がなされていない。
食品の包装に使われる化学物質。
ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸など食品に溶け込む場合もある。
トランス脂肪酸
適度な運動がうつを改善し、海馬の再生を促す
最新の研究で、身体活動の少なさとうつの関連性が指摘されています。
一日に7時間以上座っている女性は、4時間以下しか座っていない女性と比べて、うつのリスクが47%高いことがわかっています。
運動を全くしない女性では、運動をする女性に比べて、うつを発症するリスクが 99 %高いとされています。
事実、運動は、最も効果的であるのに、あまり利用されていないうつの治療法のようです。
研究によると、運動の効果は、 抗鬱剤より優れていることが示されました。
運動によって精神的な健康が促される理由は、インスリン抵抗性を正常化し、感情を制御する幸福ホルモンや神経伝達物質の分泌(エンドルフィン、セロトニン、ドーパミン、グルタミン酸、GABA)が活発になるためです。
また、運動は、ストレス物質を体外に排出するのを助ける働きがあります。
また、うつは海馬を縮小させますが、運動により、海馬周辺の灰白質を増加させる働きもあります。
神経単位が作られ、新しい脳細胞の成長と適合を促します。
砂糖は、脳由来神経栄養因子(BDNF)を抑制し、うつのリスクを増加させますが、運動によって、BDNFは活性化されます。
運動は、FNDC5タンパク質の合成を刺激し、BDNFの合成を促します。
BDNFは様々な点で若返り効果が期待できます。
脳内では、既存の細胞を維持するだけでなく、脳幹細胞を活性化させて、新しいニューロンに変換して脳を成長させています。
このことを確証づける研究は、Kirk Erickson医学博士によって行われています。
60-80歳の人で、週に3回くらい30-45分ウォーキングすると海馬の大きさが2%増加することがわかっている。
瞑想が与える脳への刺激
瞑想は、精神面の健康を高める効果がありますがあまり使われていない方法の一つです。
ストレスの軽減だけでなく、自己認識(人生の起伏に対するよりスピリチュアルな捉え方)を高める作用があります。
また脳の構造を良い方に変化させることも知られています。
Forbes誌は、次の様に発表しています。
「瞑想は神経にとって様々な利益をもたらします。
灰白質の量を増やし、自己中枢の活性を抑え、脳の部位同士の連携を促します。
心理的な効果が同時に現れていないのに、脳内のわずかな変化に何の意味があるのか疑わしく感じる方も多いでしょう。
幸い、良い証拠があります。
瞑想によって、不安やうつの主観的レベルを軽くし、注意力、集中力、総体的な心理面の幸福をもたらすことがわかっています。」
扁桃体も萎縮することがわかっています。
この場合、脳細胞の数が少ない方が助かります。
扁桃体が恐れ、不安、ストレスの認識を制御している空です。
不安障害を抱える人では扁桃体にセロトニンが多く分泌されています。
ですので、セロトニンを分泌させるSSRIの様な薬剤では、うつや不安を悪化させてしまいます。
過去の研究において、扁桃体で神経が活性化すると不安を発症する根本であると言うこともわかっています。
基本的に、不安障害のある人は、恐怖の中枢が過剰に活性化しているため、瞑想が効果があります。
うつを克服するための対策
うつを克服するための2つの要素についてすでにご紹介しました。
食事(加工食品を控え、腸内フローラを改善する発酵食品やリアルフードを摂る)、そして運動することです。
太陽の光を浴びて、ビタミンDの体内濃度を適切に保つことも有効です(ビタミンD3と ビタミンK2のサプリメントを摂る)ことも忘れてはなりません。
過去の研究に、体内ビタミンD濃度が低い人では、普通の人に比べて、うつの症状が出るリスクが11倍以上高いことがわかっています。
ビタミンDの不足は、しっかり対処しなければなりません。
精神疾患や神経障害では、ビタミンDの体内濃度を検査し、不足していれば補うことが重要な治療です。
うつの根本的な原因が無くならなければ、効果がない、さらには有毒な薬品を長期間とり続けることになってしまいます。
精神の健康にとって、食事が 大きな部分を占めています。
加工食品の影響を減らしてください。
脳の機能のためには必須脂肪酸も重要です。
健康的に良い飽和脂肪酸は、アボカド、牧草を食べて育った牛のミルクから作ったバター、生の乳製品、オーガニックの卵の黄身、ココナッツの実、ココナッツオイル、加熱していないオーガニックのナッツオイル、生のナッツ類、牧草を食べて育った家畜の肉などから摂りましょう。
良質な動物性のオメガ-3脂肪酸を摂るには、クリルオイルがお勧めです。
うつを克服するには重要な栄養素です。
もう一つ、うつ対策として知っておいていただきたいことがあります。
うつは、身体と生活のバランスが崩れてしまったというサインです。
ストレスに対処するとバランスを取り戻すことができるかもしれません。
すでにご紹介したとおり、瞑想も効果があります。
天気が良いときは、外に散歩に行きましょう。
また、自分で気がついていない感情の問題に対処できるシステムを使ってみるのも良いでしょう。
私がお勧めするのは、感情解放テクニック(EFT)です。
最新の研究で、EFTは、希望や喜びといったポジティブな感情をもたらし、不安のようなネガティブな感情を少なくすることがわかっています。物事が脅威であるかどうかを決定づける脳の部位である扁桃体や海馬に働きかけるため、ストレスや不安を解消する効果が高いとされています。