器の大きさ                           田坂広志


「権力」というものの持つ「危うさ」を教えてくれる小話がある。

 

ある国で、軍事クーデターが起こった。クーデターの首謀者である将軍は、民政を倒して独裁体制を敷いたのだが、そのクーデターを国民が支持しているかが気になった。

 

そこで、その将軍は、年寄りの労働者に変装し、多くの人々の集まる映画館に行ってみた。映画の前のニュース放映のとき、最近のクーデターが報道され、画面には、戦車に乗った将軍が登場した。すると、映画館にいた観客は、全員総立ちになり、将軍を誉め讃える拍手を送った。

 

満場の観客が拍手する姿を見て、「このクーデターは、国民から支持されている」と感激して椅子に座り込んでいた将軍に、隣で立って拍手をしていた若い労働者が、囁いた。

 

おい、じいさん、拍手しな。拍手しないと、殺されるぜ。

 

思わず笑いを誘うこの小話。しかし、一人の経営者としてこの話を読むとき、それが、政治についての風刺であることを超え、経営についての警句であることに気がつく。

 

なぜなら、経営というものの本質は、究極、人事権を含めた「権力の行使」であり、経営者が、その権力の危うさに気がつかず、無意識にその力を振り回すと、それは、必ずと言って良いほど、部下や社員から「社長の好む意見」を引き出してしまうからである。

 

もとより、賢明な経営者は、そうした「自分の持つ権力の危うさ」を知っており、それゆえにこそ、自身の傍に、「耳の痛い意見」「不愉快な意見」「自分の意に沿わない意見」を述べる部下を、意識的に置いておく。

 

 

かつて仕事において深い縁を得た、ある商社の経営トップは、「私は、いつも、可愛げの無い部下を、傍に置いておく。耳の痛いことを言う部下を、傍に置いておく」「経営会議で、全員が賛成ならば、私は、決めない。そんな意思決定は、危ない」と語っていたが、この日本では、昔から、こうした経営者を、「器の大きな経営者」と評していた。

 

では、経営者の「器の大きさ」とは何か。

 

それは、決して、「耳の痛い意見でも、不愉快な意見でも、我慢して聴く力」のことではない。

 

それは、我々経営者の心の中にある「エゴ」の大きさのことであろう。

 

誰といえども、部下から「耳の痛い意見」「不愉快な意見」を言われて、心に波風の立たない人間はいない。誰といえども、心の中には、自分の正しさを認められたい、自分の立場を守りたい、といった「小さなエゴ」があるからだ。そして、その「小さなエゴ」が心を占めてしまうと、その部下の意見を、一度、深く受け止めてみるということができず、その意見に耳を閉ざしてしまう。

 

しかし、我々経営者の中には、もう一つの「エゴ」がある。それは、自分の至らぬところを認め、自身のさらなる人間成長を求める「大きなエゴ」であり、「部下や社員の気持ちや立場を理解し、周りの人々を心で包み込める人間へと成長していきたい」という願いを持ったエゴである。

 

経営者の「器の大きさ」とは、畢竟、その心の中にある、この「大きなエゴ」のことであろう。

 

先ほど述べた商社の経営トップに、ある案件で、迷惑をかけたことがあった。そのことを詫びに伺ったとき、開口一番、その経営トップが口にした言葉が、いまも心に残っている。

 

「いや、あなたこそ、大変なご苦労をされたのではないですか」

 

まず、相手の立場を思いやる。まさに、経営者の「器の大きさ」を見せて頂いた瞬間であった。

 








          たきがみ博士の想い

 

誰でも、自分の中に伝統がある。自分が経験したすべての過去の累積、それが”いま”のわたし。

過去とは思いだすこと、現在(いま)は過去の必然、そして、未来は想い、選択すること。

いまは、変えられない。

しかし、人には明日があり、未来がある。明日は、こうありたいと想いを持つことができる。

 

すてきな明日に向かって、”これからへの想い”を具体化するJourney、しっかり楽しみたいと思います。

そして、”いま、ここ”を丁寧に活きる。

みずからの人生の軌跡を、すてきな笑顔でみつめるために。

 

旬(ときめき)亭 亭主 たきがみ博士
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☆他人に期待すれば不満になり、

  自分を信頼すれば自信になる 

☆人間関係とは、他人を通して自分自身

  との付き合い方を学ぶ機会なり 

☆自分の短所を受け入れるとき、

  自分らしさという魅力が生まれる 

☆最も空しい人生とは、

  すべてが思い通りになる人生である 

☆幸せは得るものではなく、気付くもの


☆樹木は、上に伸びる前に下に伸びる 

☆他人との対立は、

  自分の心の中の対立に過ぎない 

☆幸せだから感謝するのではなく、

  感謝するから幸せを感じる 

☆孤独を知らなければ、

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