薬も注射も一切なし。食事と空気を昔に戻せば 子どもはみんな元気になる
医者になって60年、吉祥寺で開業して約40年。
私が患者さんにずっと言い続けていることは、日本古来の衣食住の大切さと、妊娠中の生活環境の重要性、そして、赤ちゃんの自然治癒能力は驚くほど高いという3つの事実です。
本当の育児とは、その子が生まれる20年、30年前から始まります。親自身が、子どもの頃から日本人として正しい暮らしと食事を続け、そのうえで親になれば、お子さんが今のようにアトピーやぜんそく、花粉症などの症状で苦しむことはありません。つまり、祖父母の育て方が孫に影響を与えるということです。
それが難しかった場合は、妊娠中の食生活に気をつけること。なぜなら、子どもがお腹にいる十月十日は、生まれてからの80年よりずっと大事な期間だからです。日本人としての正しい食生活とは、米、味噌、野菜、小魚、海藻などの和食を中心にした昭和20年代までの食事のこと。
妊娠中は、1個の受精卵が30億倍になり、その形も目まぐるしく変化します。その大切な時期に、いかにかつての日本人が行っていた生活をするか。そうでなければ、妊娠中の誤った食習慣のツケはお子さんが払うことになると思ったほうがいいです。もちろん、慣れていない人にとって、昔の暮らし方はかえって大変かもしれません。
しかし、食材はできるだけ住んでいる場所から近いところでとれる、季節のものを選ぶこと。特に、輸入食材、肉類、牛乳などは極力避けることをおすすめします。
また、子どもが発熱したり、せきをしたりすると、すぐに病院に駆け込む親御さんがいますが、ほとんどの子どもは、実は大人以上に自然治癒能力が高いことを知っていますか?気になる症状が出ていたとしても、機嫌がよく、元気があって、よく眠り、よく食べ、便が出ていれば心配することはありません。
反対に、薬の力を借りた対処療法だけでは、同じ病気の再診率がかえって高くなります。「薬(クスリ)」は逆さまに読むとわかるように、患者さんにとって「リスク」になりかねないのです。
小児科とは、そうした病気にならないための「知恵」を身につけるところだと、私は思っています。
うちは、開業して40 年近く経ちますが、薬は一切置いていません。市と契約した予防接種をお母さんが希望する場合以外、注射も1本も打ちません。
生活習慣や生活態度の改善こそ、真の健康への近道だと思っています。まずは来院される方との対話が大事。初診では、問診、望診(顔色・舌の状態を肉眼で観察する診察法)、打診、聴診を30分以上かけて行ったうえで、先ほどの3つをお話します。一人当たり1時間近くは診ているのではないでしょうか。
今は、待ち時間が3時間で診療は3分という病院も少なくありませんが、うちはその対極にあると言っていいかもしれません。
その結果、患者さんが私の言ったことを守ってくれ、再診率がどんどん減っていきました。開院当初は1日50人、多いときには70人も患者さんが詰めかけて、医院のある2階の階段から外の通りまで人が並んだ時期もありましたが、それが今では10分の1以下になりました。患者さんが減れば、当然、収入も減り、中には「先生、大丈夫ですか?」と心配してくださる方もいます。けれど、私に言わせれば、今の医者が儲けすぎなんです。
私は、今も6畳二間の借家暮らしですが、ぜいたくさえしなければ、1日数人の患者さんで十分楽しく暮らしていけます。
そんなことよりも、私がうれしいのは、40年前に診た赤ちゃんが、40歳の親になって、私が日頃言っていることを実践してくれていることです。4代続けてこられている長いお付き合いの方もいます。みなさん正しい食生活、暮らし方をされているので、たまにお子さんやお孫さんを連れてくるぐらいで、ほとんど病気になっていません。医者の使命は、病気を減らし、患者を減らし、医療費を減らすことです。
しかし、患者の健康と自分の病院の経営、どちらを中心に考えるかで診療のしかたは大きく変わります。患者さんの健康を中心に考えれば、当たり前のことですが病気は減り、病院の経営を中心に考えれば、薬が増え続け、患者もあふれるということです。
医者という職業に限らず、これはいつの時代も変わらない事実ではないでしょうか。
冷房や暖房で空気を加工しない
生活指導で重視しているのは、加工されたものを取り入れてはいけないということ。特に、みなさんが普段何気なく吸っている空気の問題は重要です。
何より気をつけないといけないのは、冷暖房で温度調節された空気です。人間は25日間、何も食べなくても水さえあれば生きていけます。その水も5日間程度なら飲まなくても大丈夫。でも、5分間呼吸をしなければあっという間に死んでしまいます。それほど空気は大切なものです。ところが、この空気をおざなりにしている人が非常に多いのです。
町中の空気より、自然な空気のほうが体にいいことは誰でも知っていること。それなのに、冷暖房や加湿器を効かせた室内で、一年中同じ温度、湿度の中にいるのは、あまりにも不自然だとは思いませんか?
体には、もともと温度調整機能が備わっています。気温が高ければ自動的に毛穴を開いて汗を出し、逆に気温が低ければ毛穴を閉じて体を震わせ、熱を生み出す。
そうやって体温を一定に保っているにもかかわらず、機械によって体の状態を保とうとすれば、体本来の機能が失われていくのは当たり前です。
中でも怖いのは、冷暖房が完備された産婦人科です。赤ちゃんがこの世に生まれてきて、最初に触れる空気がすでに加工されているんです。生まれて1週間近く、エアコンの効いた病室で過ごすため、汗の出る毛穴の機能が8割も停止してしまうのです。その機能は一生元に戻りません。残り2割の汗腺で体温を調節しなければならないのです。今の人たちはあまり汗をかきませんが、その結果、外の気温が高くなると熱中症になる人が急増しています。場合によっては、命が危険にさらされてしまうこともあります。
本来、外気と室内の温度差は、5℃以上あってはいけません。できるだけ外と近い空気を吸う。冬でも薄着の習慣をつける。
それが子どもの健康を守る大事な秘訣です。
部屋の中の空気を自然な空気に比べて加工すればするほど、子どもたちの健康が失われると考えれば、気密性が高く、通気性の悪い住宅や、ホルムアルデヒドなど有害化学物質を含む新建材などを多く使った住宅は、もはや健康被害を大きくする重大な社会問題と言っても過言ではないでしょう。それらに含まれる毒物質が皮膚から侵入し、体内に蓄積されて、アレルギー性鼻炎、アトピー、ぜんそくなどを引き起こすこともあります。
さらに怖いのは電磁波の影響です。最近、キレたり異常行動をする子どもが増えているのも、そのような室内で吸った空気が全身にいきわたり、脳へ送られているからだと考えられます。
もっとも大事なのは、毒が入るような住宅にしないことです。それは、生き方の問題でもあるのです。無垢の木を使った風通しのいい家に住んでいる子どもと、鉄筋コンクリートの密閉性の高い家に住んでいる子どもとでは、IQにも差が出ています。逆に言うと、木造で通気性のいい家に住めば、子どもたちの集中力や学習能力も上がるのです。
通気性のいい家とは、家の中の風が縦に吹く家のこと。昔はどの家にも必ず縁の下がありましたが、床下の空気が畳を通して1階に上がり、格子状の天井を通して2階へ行き、その空気が瓦屋根を通って外へ行く。昔ながらの木造旅館などがそのいいお手本です。
すぐに新しい家を建てることができないという方は、窓を開ける習慣をつけましょう。外の空気となじませるだけでも違います。建物の空気を大事にすれば、健康面だけでなく、心ものびのび育つはずですよ。
電磁波(磁場)を出す主な製品・設備
電磁波を出す主な製品・設備/電磁波の強さ[無印:ミリガウス(低周波)、★:高周波・マイクロ波]
携帯電話/100以上(通話開始前後)・・・・★0.23~1.62W/kg
テレビ&テレビゲーム/100以上・・・・50㎝離れれば25/1m離れれば2/2m離れれば0.4
ビデオデッキ/7~20 ・・・・50㎝離れれば0
パソコン/50以上 ・・・・30㎝離れれば3~4/50㎝離れれば1~2
CDラジカセ/100以上 ・・・・1m離れれば0
蛍光灯/100以上 ・・・・25㎝離れれば2/40㎝離れれば0
冷蔵庫/50以上 ・・・・50㎝離れれば7/1m離れれば0
電子レンジ/120以上 ・・・・1m離れれば15/2m離れれば2/★50~100(前面から30㎝)
オーブントースター/50以上 ・・・・30㎝離れれば3/60㎝離れれば0
電磁調理器/100以上 ・・・・30㎝離れれば29.3/1m離れれば2.
エアコン/40~100 ・・・・2m離れれば0
電気こたつ/3~120以上
電気毛布&ホットカーペット/100以上
ヘアドライヤー/100以上 ・・・・50㎝離れれば0.1/1m離れれば0
電気かみそり/100以上 ・・・・10㎝離れれば10/50㎝離れれば0
MRI/2万以上(直流の固定磁場)
盗難防止装置/700以上 ・・・・1m離れれば210/2m離れれば21/3m離れれば4
電車/座席は25~50、運転席近くは100以上
リニアモーターカー/20万
高圧送電線/29.6(15万4000V 地上高28m)・・・・70m離れれば2/120m離れれば1
配電線/配電線の真下は3~4
電波塔/★塔の真下は0.05、塔から200mは0.16、塔から500mは0.002
変電所/7~30
健康の神様は内にいる”和合医療”
和合医療をひと言であらわすと、「東西医療のいいとこどり」。一人の患者さんに対し、適材適所で現代医療(西洋医療)、東洋医療、ときには伝承療法も取り入れて、より質の高い医療システムを構築するという意味では、世間一般で言われる「統合医療=西洋医学と東洋医学の融合」と同じです。
違いがあるとすれば、「和を持って貴しとなす」という日本古来の考え方にのっとっていることでしょうか。
つまり、「お互いの違いを認識しながら無条件に助け合う精神」。
最終的には自分自身で健康管理できる人を増やし、病院に頼る人を減らすことです。みなさんの中には、熱が出たとき、お医者さんに行く人が多いと思いますが、それは自分の内側に健康の神様(自然治癒力)が宿っていないと考える人が多いからでしょう。
「健康の神様は外にいる」。だから他力本願になるのです。
多少具合が悪いだけで病院へ行き、薬を飲む。
しかし、薬は病気を治すものではなく、症状を抑えるために出すものです。
不必要なときに飲まれているケースも圧倒的に多いのです。そこを見直すためにも、ものの考え方を江戸時代の日本人まで戻すことが大切だと思っています。全国民が健康観を変えれば、医療費による日本経済の危機も回避できるのではないでしょうか。
和合医療の原点は、平成3年から5年までの2年間、島根県の知夫里島という人口800人(当時)の離島での僻地医療に携わった経験にあります。その中で、それまでの医療人生での常識を完全に覆される体験をしました。
とにかくその島の老人たちはみんな元気なのです。酒を浴びるほど飲み、タバコを吸っている人も、たまに検診をしても何の異常も出ません。その理由は、まず食事と水です。毎日とれたての魚を食べ、完全無農薬の野菜を食べ、しかも名水100選に選ばれるほど上質な水を飲んでいます。
さらに、この島は漁師の方が多いのですが、海が荒れていれば漁に出ないなど、自然に逆らうことをしません。
また、島には電気がなく、夜は真っ暗で静か。いわゆる東洋思想でいう陰と陽で、昼は陽、夜は陰という2極がしっかりあり、本当に大自然と一体化しているのです。
そこに感動し、あらためて、「人は自然に生かされる存在なんだ」ということを体感し、医療に対する考え方がナチュラルな方向にどんどん移行していきました。
私の医療人としてのスタートは歯科医でしたが、体を丸ごと診る医療を本気で極めたいと思い、その後、医学部に入学し、医科と歯科のダブルライセンスをとるに至ったのです。
「ちょっと食べ過ぎると、すぐ胃にきちゃうんです」 外来の診察室では、患者さんのこんな言葉をよく聞きます。
胃にくるのは、食べ過ぎのせい。
医者が言うまでもなく、すでにご自分で答えを出しているわけですが、患者さんはそのことに気がつきません。
おかしな話だと思いませんか。
だったら食べ過ぎなければいいだけのことなのに、患者さんが期待しているのは、「食べ過ぎても、胃にこない薬」なのです。
医者も医者です。
こんなとき、最近ではPPI(プロトコンプ阻害薬)など、胃酸の分泌を抑制する薬をどんどん出してしまいます。
胃酸は、消化の殺菌に欠かせないものです。
それをストップさせてしまえば、胃はスッキリしても、今度は消化不良で腸がやられたり、雑菌に感染してしまうこともあります。
あきらかな急性胃粘膜の病気なら処方するのは妥当ですが、なんでもかんでも「お薬、出しておきましょうね」は、無責任です。
食べ過ぎが続けば、今度はメタボの恐怖が待っています。
2008年からは「メタボ健診」が行われています。1センチでもお腹をへこまそうと、努力されている方もいらっしゃるでしょう。
そもそも「メタボ健診」は、自分の体の状況を知ってもらうことで、生活習慣の見直しと、その先にあるがんや心臓疾患、脳卒中の予防に
つなげることを目的にはじめられました。
背景には、増大する医療費の削減という大きなねらいがあります。
けれど、「メタボ健診」がはじまっても、医療費は削減されるどころか上昇する一方です。
数値がちょっとひっかかった程度の人まで “ 要治療 ” とし、「早期発見、早期治療」を名目に、薬を大量に出しているからです。
これでは、検査は、ただの病人の掘り起こしです。
掘り起こされたほうも、「らくしてメタボが解消できるなら」と安易に薬に頼ってしまいますから、いつまでたっても根本的な解決になりません。
そのうえ医療費の増大は、やがて国民負担となって、結局、自分にツケが回ってくるのです。
これでは医者が儲かるだけで、誰も幸せになれません。
大切なのは、検査や薬を飲むことではなく、自分で生活習慣を改善することです。
なかでも毎日の食生活を見直すことは、これからの時代、自分自身のためにも社会全体のためにも必要とされることなのです。