香水、洗剤などに使われる人工香料をちょっと嗅いだだけで、吐き気をもよおしたり、体調が悪くなったりするという化学物質過敏症の人が増えています。
自然界にない香りを察知して体が敏感に察知するのは、ある意味優秀な感覚を持っているのかもしれません。
しかし、極度に反応してしまうような過敏症の人は、もしかするとビタミン欠乏や腸内環境の悪化が推測されるかもしれません。
海外では、香料に過敏に反応することをPerfume Sensitivity(※1)と言ったり、香料をはじめ極度な化学物質過敏症をMCS(※2)と称しています。
MCSの人で多く見られるのが、ビタミンB6欠乏とマグネシウム欠乏です(※3)。
特にビタミンB6は、有害な化学物質を肝臓の解毒経路を通して体内から取り除く働きをするタウリンや、解毒酵素そのものであるグルタチオンを合成するのに必要なビタミンです。
MCSの症状は、グルタチオンが枯渇すると引き起こされることも示されています(※4,5)。
また、香水に敏感な人はビタミンB6やタウリンのレベルが低い傾向にあります。
※MCSの人は血清ALT値が低いことがあります。ALTはその補酵素にビタミンB6をもつため、ビタミンB6の量と相関しています。
さて、腸内フローラのバランスが健全である限り、ヒトの腸内細菌群はビオチン、コバラミン(VB12)、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン(B6)、リボフラビン(B2)、チアミン(B1)の8種のビタミンB群を生合成します。
特に、細菌の外に出して、私たち宿主へ渡されやすい栄養素はB6とB12です。
一般にB6の推奨摂取量(RDI)は1.3mg/日ですが、実は最近の新しい研究では腸内細菌群によるB6合成量はこの86%にも寄与することがわかっています(※6)。
これは驚くべき産生量です。
ただし、あくまで健全な腸内フローラを維持している人に限った話です。
つまり、腸内環境が悪い人はこのB6の産生量が低下し、グルタチオンやタウリンの合成が上手くいかず、結果、香料などに敏感になってしまう過敏症となる可能性があるのです。
もちろん、食事由来のB6も大切です。
アレルギーにしても、過敏症にしても、単なる体の防御反応や察知反応だけでなく、極度な場合、もしかすると、こうしたビタミンの欠乏によるものかもしれません。
始めから対象ばかりのせいにするのではなく、もしかすると自分の身体の代謝に異常があるのかもしれないと考えることは、自分の健康の維持をはかるうえで、実は大切なことなのです。
※1 香水過敏。Odor Sensitivityとも言う。
※2 multiple chemical sensivitiy
※3 Occup Med. 1987 Oct-Dec;2(4):713-20
※4 Biochemical pharmacology 2008, 75(2), 552-561
※5 Environmental toxicology 2009, 24(4), 404-414
※6 Front Genet. 2015; 6: 148