私は10年前がんになり、抗がん剤や大きな手術をしたことで、これまで当たり前にできたことの多くができなくなってしまいました。
同じように、がんになった多くの人は、今までできたことで出来なくなってしまうことがたくさん出てきて、もうダメだと思ってしまいます。
しかし、私は出来なくなったことを、出来ないと思うことはせず、今は出来ないが出来るようになるための一歩を踏み出そうと思うようにしました。
今の自分ができないから、未来の自分ができないなんてことはない。
それをイコールにしてしまうことで、できないことになってしまうのだと思うようになりました。
そう思えるようになったのは、手術の後一度どん底に落ちたからだと思います。
人工呼吸器に繋がれたときは何もできませんでしたが、時間がたつにつれて出来なかったことができるようになってくる。
すると絶望感いっぱいだった心に、少しずつ希望が見えてきたのです。
そしてそのほんの少しの小さな希望を未来につなげるために今出来ないことをやってみようとチャレンジして今日出来なければ、明日、明日出来なかったら明後日と続けていきました。
その結果、普通の患者さんよりずいぶん早く、立ち上がることができ、自分でトイレに行くことができ、病院の中を一万歩歩くことができ、走ることができ、筋トレもできるようになったのです。
それからは、今までそんなことは出来ないと思っていたことを、進んでやるようにしました。
みなさん、信じられないと思いますが、以前の私は人前で話すときは嘔吐反射がひどくなり不安で精神安定剤がないとできなかったのですよ。
また患者会会長や全国縦断キャラバンも、まだ自分はそんな器でもなく体もそこまで回復はしていないと思ったけど、未来の自分のためにやってみようと思いやってきたから今があるのだと思います。
どんな人にも今できないことは多々あります。
しかし、未来の自分ができないことなんてないのです。
できないのは、自分で出来ないと決めたからにほかなりません。
それは自分の可能性に自分で蓋をしたことと同じなのです。
たとえ今の自分が信じられなかったとしても、未来の自分を信じてやってみようと思うこと。
その一歩が未来を大きく変えていくのです。
そんな経緯を経て、私は出来ないことが人を成長させる伸びしろだと思うようになりました。
とはいっても、なかなかその一歩が踏み出せないというのが現状ですよね。
めぐみの会でやっている音楽バンド「めぐみ音」は、みんなで誰にでもできる歌や音を鳴らすということで一歩を踏み出してみることができる場を作りたいと思い始めたものです。
赤信号、みんなで渡れば怖くない!って感じです。
でも本当は赤ではなく、青信号なんですけどね。
ガンになったから、赤なんてことは絶対にないのです!