人の健康状態を良好に保つ自然な食事とは、どのようなものでしょうか。現在の日本人は、主食として白米を食べています。
そして肉、魚、野菜を副菜として食べています。
そのため、人間にとっての主食は、大昔から穀物(米やパン、麺類)だったと思っている人が多いようです。
ところが、お米や小麦粉、トウモロコシなどの穀物を主食として食べ始めたのは、人類の長い歴史から見れば、つい最近のことです。
日本でお米の栽培が始まり、日本人が玄米を主食として食べ始めたのおは、今から約6000年前です。
白米が食べられ出したのは、生活が贅沢になった江戸時代前期の元禄期以降ですから、わずか300年の歴史しかありません。
穀物が日常的に食べられるようになる前の人類は、動物の肉や魚、貝や海藻などの海産物、野菜、木の実などを食べてきたと考えられています。
こうした人類の食性の起源から考えて、本来人間にとって主要な栄養素は脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラルの4つで、炭水化物は入っていないという説があるのです。
その証拠に、他の4つの栄養素には全て必須栄養素が存在しますが、炭水化物には必須栄養素というものがありません。
炭水化物は分解されると、糖という形で体の中で使用されます。
そして、糖は脳に必要とされる重要な栄養素と言われてきましたが、糖は必須ではなく、体の中でアミノ酸や脂肪から作られる成分であるケトン体で代用がきくことが分かっています。
というより、農耕時代以前はケトン体のほうがメインで、糖は木の実などを食べたときだけ得られる、飢餓に備えての貯蔵用の栄養素だった可能性が高いのです。
ケトン体と聞くと、特に糖尿病の人は「大丈夫ですか」と心配そうに聞きます。
糖尿病の場合、血中のケトン体濃度が高いと糖尿病悪化のサインと言われてきたからですが、結論を言えば、全く心配はいりません。
ケトン体はブドウ糖と比べて遥かに安全で、しかも赤血球と肝臓以外の全ての細胞で使える自由度の高いエネルギーです。
「糖質ゼロ」の健康法を推奨する釜池豊秋先生の著書に、以下のような記述があります。
「ケトン体は3ヒドロキシ酪酸とアセト酪酸という2つの物質の総称です。
ハーバード大学のジョージ・ケイヒル博士たちの3ヒドロキシ酪酸についての研究では、実は脳はブドウ糖より3ヒドロキシ酪酸を好むという論文を発表しています。
脳だけではありません。
心筋もブドウ糖より3ヒドロキシ酪酸を使った方が、パフォーマンスが高いのです。
そして、3ヒドロキシ酪酸はブドウ糖よりも更に酸素消費が少ないので、心筋梗塞や脳梗塞で貧血状態の組織にとって有効なエネルギーです。
またアルツハイマー病やパーキンソン病など、中枢神経疾患にも3ヒドロキシ酪酸が有効と結論されました。
最も重要なのは3ヒドロキシ酪酸が使われると活性酸素の発生が少ないことです。
すなわち、3ヒドロキシ酪酸はスローエイジングのエネルギー源だと言えるのです。
これまでの医学常識では、血液中のケトン体が増加した状態「ケトーシス」は異常で危険なものとみなされてきました。
つまり、今までの常識は根も葉もないデタラメだったのです」
また、赤血球と肝臓は糖だけを栄養素として使いますが、糖は外から摂らなくても糖新生といって、体内のアミノ酸(タンパク質)や脂肪を分解して得られるグリコーゲンから必要量が合成できます。
生物界において主食がぶつかる生物が、同時期・同地域に2種以上いた場合、どちらかが絶滅します。
脳細胞は、糖以外にケトン体も栄養として使えるため絶滅することはありません。