親が倒れて介護の負担が重くのしかかってきたらどうしよう……そんなふうに不安を感じている人は多いと思います。
■タダで親を介護する方法その1
介護保険を利用する場合、施設利用料は、世帯所得で決まる。よって、要介護老人だけを別世帯とすると、介護費用は劇的に安くなる。別世帯だから、当然、介護費用は本人持ちであり、家族は一錢も金を払わなくていい。負担額合計も、世帯分離をすると、ぐっと安くなる。
以下の試算は、太田哲二「世帯分離で家計を守る」からの引用である。
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1)世帯分離前の世帯構成
佐藤幹男(世帯主、63歳、給与収入400万円)
妻佐藤芳子(56歳、給与収入100万円)
実父佐藤玄蔵(88歳、年金収入36万円)
2)世帯分離後の世帯構成
佐藤幹雄(世帯主)
妻佐藤芳子
佐藤玄蔵(世帯主)
3)施設負担金
特別養護老人ホームのユニット型個室を使った場合、
世帯分離前 月額14万3850円
世帯分離後 月額6万2510円
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効果はこれだけではない。介護保険料、健康保険料も安くなるのである。世帯分離をしたら扶養控除から外れて税金が高くなるのでは?と考える方がいるが、1年以上施設入居した場合は、世帯分離していなくても、扶養控除はなくなる。
■タダで親を介護する方法 その2
世帯を分離するのであれば、当然、家計が分離されている必要がある。ところが、自分で自分の介護費用を捻出できない老人世帯がある。その場合は、家族が仕送りする必要があるのではないか?と考えるのが一般的である。違うのである。
年金収入以外にも、何らかの資産(金融資産や家や土地)は持っているはずであり、それらを売却すれば、金は作れるはずである。老人の場合、認知症になっていて、自分で財産の管理ができない場合がある。その時は、家庭裁判所に成年後見人を選定してもらって、財産の処分をしてもらうことができる。それでも金が足らなくなったらどうするか?生活保護申請である。
直系血族と兄弟姉妹における相互扶助義務が民法で規定されているが、これは努力義務である。強制力はないから、扶養照会に対しては、「扶養できない」と回答しておけば、問題がない。
「親を生活保護にして普通の生活をしていいのか?」
いいのである。個人の倫理とか世間体が邪魔するかもしれないが、お金には替えられない。堂々と生活保護申請をすべきである。
■タダで親を介護する方法 その3
世帯分離の前提は家計の分離である。家計とは毎月のキャッシュフローのことである。同居していても、所有者に対して、家賃を支払い、光熱費を割り勘にしておけば、家計は分離されているということができ、家族の一部だけが、同居しながら生活保護を受けることができる。しかし、これが著しく困難なことがある。
1)低所得独身の子が高齢の親の家に寄宿している
居住用不動産で価値が低ければ、持ち家でも生活保護は受けられる。しかし、施設介護を利用した場合は、その家は資産として認定され、売却しなければ、生活保護は申請できない。
子にとっては、親の家が最後の生活インフラなので、売却されると、借家を借りねばならなくなり、困窮してしまう。このため、外部介護サービスを使わず、自宅で家族介護を始めることがある。いわゆる、「介護離職である」。この結果は、ろくなものにならない。所得が減る結果、家計は窮迫するし、自宅で24時間の介護労働をやらされるので、精神的体力的に疲弊する。介護殺人が発生するのは、こういう場合である。
この場合は、生活水準が低下することを覚悟した上で、家を売却し、親を生活保護世帯として、老人介護施設へ入れた方がいいと思う。介護負担がなくなるから、仕事は続けられ、低所得でも生活を続けることができる。どうしても家計が成り立たないなら、子も生活保護申請してもよい。健常者の生活保護が快適であるはずがないが、低所得者による家族介護よりはずっとましである。
2)親に資産があっても、自分の介護費用を子供に払わせる
意外と多いのである。老人は、金が命綱だと思っているから、極力、自分の金は使いたくない。年金以外にも賃貸不動産や金融資産を持っていて、定期収入があったりする。家族には資産のありかすらわからない。
こういうケチな親でも、世話をせずに放置すると、保護責任者遺棄罪になる可能性があるから、放置をしてはいけない。しかし、費用を回収する方法はある。介護費用の支払い証明書(領収書、レシート)を保存しておいて、相続時に、家裁に提出すればいい。その費用は、本来の相続分に上乗せされる。しかし、蓋を開けてみたら、相続資産が少なくて、介護費用にすら満たないことがある。この場合は、あてが外れたということで、諦めるしかない。