現在、日本では毎年約3万8千人の女性が新たに乳がんに罹患しており、毎年1万人の女性が乳がんで命を奪われています。
9年後には乳がん罹患は、5万人を超えると予測されています。
そうなると日本女性20人に1人が乳がんになる計算になります。
乳がん急増の原因は、結婚しない女性、高齢初産、および出産しても十分に母乳を与えない女性の増加などにあります。
肺がんの最も有効な予防法が禁煙であることは有名ですが、乳がんの最も有効な予防法は、「18歳までに出産し、1年以上母乳のみで育てること」です。
現在日本でこの予防法を実行している女性はほとんどいません。
とくに働く女性は、乳がんにかかりやすいハイリスクグループであるといわざるをえません。
また、中年以降の肥満も乳がんの原因になると考えられています。
日本女性の乳がん罹患の特徴は、40歳代~50歳代に罹患率のピークがあることです。
死亡率についても30歳代から50歳代の女性のがん死亡の第1位は乳がんとなっています。
以上のように乳がんは働き盛りの日本女性が一番罹りやすいがんであり、働く女性の敵と言わざるを得ません。
しかも乳がんにならないように予防することは不可能ですから、日本女性を乳がん死亡から救うためには、早期発見、早期治療を行う以外に良い方法はありません。
がんは出来る場所によって治りやすいがんと治りにくいがんがあります。
最も治りにくいのは、すい臓がんです。
最も治りやすいのは、甲状腺がん、乳がんであり、胃がんや大腸がんはそれらの中間です。
乳がんの自覚症状にはどんなものがあるでしょう。
一番多いのは、自分で乳房をさわってシコリが見つかる場合です。
あお向けに寝て左手は万歳のように高く挙げ、右手の指を揃えて左の乳房全体を力強く押しながらさすってみてください。
反対の乳房も同じようにさすってください。
もし、自分の乳房にシコリが見つかったら乳腺専門医の診察を受けましょう。
つぎに大きな鏡の前で両方の乳房を見比べてください。
乳首の形や向きが微妙に変わっていませんか。
また、乳房の垂れ具合や、皮膚の色が左右を見比べて違いがあったり、少し皮膚が凹んで見えるところがありませんか。
乳頭・乳輪部が湿疹のようになる乳がんもあります。
ただし左右とも同じようになっている場合は、ほとんど心配はありません。
他には、乳首の形や向き、高さなどが変化する乳がんもあります。
乳首の先から分泌液が出る乳がんもあります。
乳首をつまんでみて、乳首から分泌液が出ませんか。
出る液に血が混じっている場合は要注意です。
ハッキリ血と分かる場合と、ブラックコーヒーのような色やピンク色の場合も血が混じっていることがあります。
乳がんには、パジェット病、非浸潤がん、および浸潤がんの3種類があります。
パジェット病は、乳頭乳輪部の皮膚が湿疹の様に変化やびらんを呈するもので見ただけで分かります。
非浸潤乳がんと浸潤がんは、いずれも最初乳管の中に出来ます。
乳頭のところには乳管が12~18本ほど開いています。
そのうちの1本だけを奥の方まで見ていくと、枝分かれしながら乳管のある範囲は広がっていきます。
この奥の方の乳管の中に乳がんができます。
最初は小さなポリープのようなものですが、次第に乳管の中で広がります。
枝別れに沿って乳がんが広がると、狭い扇型のような形になります。
このようながんが非浸潤がんといわれます。非浸潤がんは局所のみのがんであり、転移を起こすことはありません。
ただし、治療をしないで放置しておくと乳がんが乳管の外まで広がります。
乳管の外まで広がると浸潤がんと呼ばれるようになります。
管の外には、リンパ管や血管があります。
そしてリンパ管の中までがん細胞が入って行くと、リンパ節転移を起こすことがあります。
血管の中に入っていくと肺・肝臓・骨などに転移する可能性が出てきます。
実際に一番多いのは、乳管外に広がっている部分と乳管の中を広がっている部分の両方がある乳がんです。
この場合、全体的には浸潤がんの仲間に入れます。そして乳管の中で広がっている部分を乳管内進展といいます。