エネルギーの産生工場である「ミトコンドリア」は母親から受け継がれます。
日本人女性の大半は「非筋肉質」であり、もともと少量のインスリンで血糖値をコントロールできる「グルコジェニックモード」を得意としています。
したがって、生まれてくる子供の多くは「グルコジェニックモード」を得意としているはずなのですが、妊娠中にお母さんが「妊娠糖尿病」を発症してしまうと、胎児は「高血糖状態」から逃れるために「インスリン」を過剰に分泌するようになります。
「妊娠糖尿病」という診断基準に当てはまらなくても「間食」によって一時的な「高血糖状態」が繰り返されると同じようなことが起こることもあると考えられます。
また「空腹時血糖値」や「随時血糖値」に異常がなければ「食後高血糖」が見逃されている妊婦の数は結構多いのではないでしょうか。
つまり、母体が「高血糖状態」だと、子供の「ミトコンドリア」は「グルコジェニックモード」が得意なのに「すい臓のβ細胞」の「インスリン分泌能」は高くなってしまいます。また「すい臓のα細胞」の「グルカゴン分泌能」は低下してしまいます。
こうなると、生まれてきた子供は「糖質」に対して「インスリンの過剰分泌」が起こりやすくなり「インスリン感受性が高い体質」とあいまって「血糖値の上下変動が大きくなりやすくなる」ことが予想されます。
「グルカゴン感受性が低い」と「機能性低血糖症」を起こす原因になってしまうかもしれません。
「インスリンレベルが高くなること」「血糖値が急激に下がりやすくなること」は「過食」や「間食」につながり「糖質過多」への悪循環が続いてしまう原因になります。
そういう意味で「太りやすい子供」だけでなく「体調不調の子供」が目につく原因は、母体の妊娠中の不用意な「精製糖質」の摂取過多による「高血糖状態」と言えるのかもしれません。
また、大人の場合にあっては、自分の母親が「中年太りになってきた」だけでなくても「糖尿病になった」「がんになった」など「エネルギー代謝の異常」が関与する「病気」があれば「母親と同じミトコンドリア」を持っているのですから、糖質にまみれた母親を「反面教師」として自らの糖質の摂取を控えることに気づくことが大切です。
【Q】ミトコンドリアが母性遺伝する理由を教えてください
【A】卵が受精する際、精子はその核だけを卵内に手渡します。
よって受精卵のDNA以外の部分(細胞質やミトコンドリアなど)は純粋に母親由来です。
もちろんこれらはDNAによって作られますので細胞が分裂していくうちに両親の遺伝を引き継いだものと取って代わられますが、ミトコンドリア(と、植物なら葉緑体も)だけはミトコンドリア内部に独自のDNAを持っていて、増殖が核に支配されません。
よって初めに受精卵にいた、母親由来のミトコンドリア達が増殖を繰り返し、子のミトコンドリアとなるわけです。
実はこれによって母方の直系がたどれるので、「人類の母」は誰なのかという疑問の解決に役立つのではないかといわれています。
現在有力説の一つである「アフリカのとある女性」も、このような理由から「ミトコンドリア・イヴ」と呼ばれています。