マサイ族の食の秘密                       池澤 孝夫


牛乳とヨーグルトを主食とするマサイ族

 

東アフリカ、ケニアからタンザニアにかけて住むマサイ族は、主たる食事として牛乳、ヨーグルト、牛の生き血を取る伝統的食生活を送ってきたことが知られています。

これらの食事では、ビタミンC摂取が非常に少なくなりますが、彼らの健康度は高かったとされています。

 

北極圏で暮らすイヌイットの食生活から糖質制限食の機能を考えましたが、今回はサバンナの民、マサイ族の独特な食生活から「ヒトにとって必要な栄養素」について考えてみます。

 

マサイ族の主食は現在でも牛乳とヨーグルトです。

牛乳、ヨーグルト合わせて1日に2?3Lも摂取します。

毎日、牛の放牧をしながら何kmも歩き、その間、牛乳を入れた「キブユ」というひょうたんを腰にぶら下げ続けているので、数日間で牛乳は自然発酵し、ヨーグルトになります。

長時間歩いていますから、主に摂取するのは新鮮な牛乳より、搾乳してから2?3日が経過したものや、さらに時間がたってヨーグルトになったものの方が主となります。

この主食だけで不足する鉄分は、牛の生き血を週に数回、牛乳に混ぜて飲むことで補います。

 

野菜や果物を食べないマサイ族のビタミンC摂取量は

彼らの伝統的食生活では、野菜や果物は一切食べないそうです。

となるとビタミンCをいかに摂取しているのかが不思議です。

ヒトはビタミンCを体内で合成できず、必ず食物から摂取せねばなりません。

マサイ族にとって牛は財産であり、殺して牛肉を食べることはありません。

ヤギやヒツジも飼っていて、こちらはお祝いごとや家族に病人が出て栄養をつけたい時には食べるといいます。

この時、ヤギやヒツジの生レバーや生の小腸も食用になります。

 

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」で、野菜や果物に含まれるビタミンCを調べてみると、100gあたり赤ピーマン170mg、パセリ120mg、甘ガキ70mg、イチゴ62mg、ゆでブロッコリー54mgなどとなります。

牛の生レバーのビタミンC含有量は100g中30mg、生の小腸は同じく15mgです。

ヤギやヒツジの生レバー、生小腸のデータは載っていないのですが、牛に準ずる程度でしょう。

しかしマサイ族は日常的に生レバーや生小腸を食べているわけではありません。

一方、牛の血漿(けっしょう)に含まれるビタミンCは1.4?3.6mg/dLで、人の血漿(0.6?1.4mg/dL)より高いそうです。

しかしそれでも、牛の血を1L飲んだところで摂取できるビタミンCはせいぜい30mgです。やはり十分な量とは言えません。

 

彼らの主食である牛乳はどうでしょうか。

彼らが飲む新鮮な牛乳の中には、ビタミンCが2.2mg/dL含まれています。

ひょうたんに入れて、数日間発酵させてから飲む場合、この量は減少します。

例えばひょうたんの中で4日間経過すると、0.4mg/dLにまで減ってしまいます。

つまり牛乳、ヨーグルト、牛の生き血から得られる日々のビタミンC摂取量は、せいぜい1日30mg程度。厚生労働省の推奨量である1日100mgに到底足りません。

 

極端に低い血中ビタミンC濃度

マサイ族と居住エリアが重なり、主に農耕生活を行うバンツー族という人々がいます。

バンツー族は穀物、野菜など何でも食べます。ケニアの研究者が、この二つの種族の食生活と血液検査データを比較検討した論文があります

前述のマサイ族が飲む牛乳のビタミンC含有量を調べたのもこの論文です。

 

マサイ族21人、バンツー族24人を対象に調べた論文のデータによると、伝統的な食事をしているマサイ族の血清ビタミンC濃度(化学物質としてのビタミンCは「アスコルビン酸」と言い、血清ビタミンC濃度も論文では「血清アスコルビン酸濃度」と記されています)は、0.16mg/dLです。

バンツー族は0.56mg/dL。

厚労省の「日本人の食事摂取基準2015年」は、日本人に1日100mgのビタミンC摂取を推奨し、日本の大手検査会社エスアールエルは日本人の血清ビタミンC濃度の基準値を0.55?1.68mg/dL としています。

つまりバンツー族では日本人の基準値の正常下限であり、マサイ族に至っては極端に低値ということです。

白血球の中に含まれるビタミンCの濃度でも、マサイ族はバンツー族の半分以下だと言います。

 

一方、ビタミンCと同様の水溶性ビタミンであるビタミンB12の血清中濃度は、マサイ族は1188pg/mL、バンツー族は404pg/mLで、マサイ族の方が高値でした。

赤血球の中の葉酸の値はマサイ族が低値、血清総たんぱくはマサイ族がバンツー族よりやや高値でした。

他に、赤血球数、ヘモグロビン、白血球数、血小板数、血清鉄も検査されています。

 

なぜマサイ族やイヌイットに壊血病が起きないのか

マサイ族、バンツー族ともに総じて身体に異常はないそうです。

論文では結論として、マサイ族の血清ビタミンC濃度が低いのは、単純に食物から摂取するビタミンCが少ないからと考えられるとし、これほど低いのに(ビタミンC不足で起きる)壊血病や貧血などは見られない理由については、さらなる研究が必要と締めくくっています。

 

以前取り上げたイヌイットが生肉、生魚を主食とする伝統的食生活を送っていた頃は、野菜と果物の摂取が極めて少なかったため、ビタミンC摂取不足による壊血病のリスクが指摘されていました。

ケベック遺伝子医学ネットワークの調査などに基づいた論文によれば、イヌイットのビタミンC摂取量は、カナダの白人と比較してかなり少量でした。

イヌイットの妊娠中の女性の平均ビタミンC摂取量は28mg/日で、血清ビタミンC濃度は0.25mg/dL。同年齢の非妊娠女性ではそれぞれ26mg/日、0.17mg/dLです。

一方、カナダ全国の白人の妊婦になるとそれぞれ平均133mg/日、1.01mg/dL、全カナダの白人非妊娠女性だと平均70mg/日、0.78mg/dLと跳ね上がります。

イヌイットの血清ビタミンC濃度は、壊血病になる危険ラインの0.2mg/dL未満の場合も多いのです。

しかし、そういうイヌイットには歯肉出血が高率に見られたそうですが、死に至るような重症の壊血病が多発しているというデータはありません。

 

壊血病は、15世紀から17世紀の大航海時代、船員の間に死者が続出して、非常に恐れられた病気でした。

ビタミンCと壊血病の関係が明らかになったのは、1932年のことです。

 

血清ビタミンC濃度が同レベルに低いイヌイットとマサイ族ですが、イヌイットは歯肉出血のリスクが生じていた程度、マサイ族にいたってはビタミンC不足の影響が感じられない健康な状態でした。

イヌイットにおいても壊血病のリスクはあるものの、死者が出るような事態はありませんでした。

 

糖質制限食の徹底でビタミンCは少量で済む

大航海時代の船員にビタミンC不足による壊血病の死者が続出したのに対して、イヌイットやマサイ族にはそれが無かった理由について、私は「糖質制限食を実践している者は、ビタミンCの必要量が少なくて済むのではないか」という仮説を持っています。

 

糖質制限食実践中の人は、高血糖や高インスリン血症という酸化ストレスリスクが極めて少なくなります。

ビタミンCの主要な作用の一つは抗酸化作用で、体内の活性酸素を消去してくれます。

伝統的食生活を送っていた頃のイヌイットやマサイ族は、「スーパー糖質制限食」を実践している状態なので、酸化ストレスが極めて少なくなります。

結果としてビタミンCの必要量も、糖質を食べている人(大航海時代の白人の船員たちのような)に比べるとかなり少量で済んだ可能性があります。

 

全く健康なマサイ族と、多少のリスクがあるイヌイットの差は、生活している環境からくる酸化ストレスの差が多少あったためかもしれません。

例えばイヌイットの暮らす北極圏は、太陽からの強力な紫外線にさらされており、紫外線は酸化ストレスリスクです。

 

ビタミンCの必須量を探ると人類の食生活史が見えるかも…

あくまでも仮説ですが、このように考察すると、人類の本当の血清ビタミンC基準値はどの程度に設定すべきなのかという疑問が浮かびます。

本当のビタミンC摂取必要量はどのくらいなのでしょう? 

人類が700万年の進化の過程でいったい何を食べてきたのかを考察するのに、人体で合成できないビタミンCの必須量を考えることは非常に重要だと思われます。

 

ヒトはアスコルビン酸合成能、つまり体内でビタミンCを合成する機能を進化の過程で失いました。

アスコルビン酸を作り出すプロセスの中で、重要な役割を果たす酵素、L-グロノラクトンオキシダーゼが霊長類と一部の哺乳類では突然変異により失われているのです。

その時期は3500万?5500万年前と推定されています。

 

「人類」と一口にいっても、人類史の中では多くの「種」の人類が生まれては消え、現在残っているのは現生人類(ホモ・サピエンス)だけです。

他の種も含めて人類はすべてビタミンCを合成できなかったと考えられています。

そのため、すべての人類は野草や果実からビタミンCを摂取していたはずです。

現生人類においても、伝統的食生活を営んでいたマサイ族やイヌイット以外は、野草や果実からビタミンCを摂取していたと考えられます。

 

マサイ族やイヌイットの研究から、糖質制限食実践者においてはビタミンC必要量がかなり少なくて済む可能性が見えてきた、と私は考えています。

しかしながら、我々はマサイ族ではありませんので、現時点では糖質制限食を実践しつつ、葉野菜、ブロッコリー、ゴーヤーなどからしっかりビタミンCを摂取することを推奨します。 

 

 








          たきがみ博士の想い

 

誰でも、自分の中に伝統がある。自分が経験したすべての過去の累積、それが”いま”のわたし。

過去とは思いだすこと、現在(いま)は過去の必然、そして、未来は想い、選択すること。

いまは、変えられない。

しかし、人には明日があり、未来がある。明日は、こうありたいと想いを持つことができる。

 

すてきな明日に向かって、”これからへの想い”を具体化するJourney、しっかり楽しみたいと思います。

そして、”いま、ここ”を丁寧に活きる。

みずからの人生の軌跡を、すてきな笑顔でみつめるために。

 

旬(ときめき)亭 亭主 たきがみ博士
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