マグネシウムは心臓、筋肉、腎臓をはじめとする身体のあらゆる臓器で必要なミネラルの一種です。
原因不明の疲労感や倦怠感、不整脈、筋肉やまぶたの痙攣に悩まされている人がいたら、それはマグネシウムの欠如が原因かもしれません。
血液検査を受けたばかりの人は、検査結果でマグネシウム不足が発見できると考えるかもしれません。
しかし、体内のマグネシウムのうち、血中に存在するのはわずか1%であるため、血液サンプルからマグネシウム濃度を計測しても、あまり有用ではありません。
マグネシウムは、骨や臓器で蓄えられ、様々な生体機能のために利用されます。
しかし、マグネシウム不足になっていても気がつかないことが多いため、「目に見えない欠如物質」と言われています。
一部の推計によると、80%近くのアメリカ人がマグネシウムを十分に摂取しておらず、不足状態にあるとされています。
また、別の研究では、アメリカの成人のうち、一日に推奨される量のマグネシウム(男性で400-420 mg、女性で310-320 mg)を摂取できている人は、わずか25%という数字が示されています。
さらに、この量は「不足状態から脱するために必要な最低限」の量であると自然療法医であるCarolyn Dean医師は述べています。
マグネシウム不足が22もの疾患の引き金に
マグネシウムというと、まず第一に、心臓や骨にとって必要なミネラルであるかのように思われていますが、これは誤解です。
研究者グループは、これまでの研究で、人間のタンパク質に3,751のマグネシウム結合部位を発見しており、健康や疾患におけるマグネシウムの役割がかなり過小評価されている可能性を示しました。
また、体内に存在する300種類以上の酵素の中にもマグネシウムは見つかっており、環境化学物質や重金属、その他の毒素によるダメージを防ぎ、身体の解毒作用に重要な役割を果たしています。
さらに、マグネシウムは次のような役割を持っています。
・筋肉や神経を活性化させる。
・アデノシン三リン酸(ATP)を活性化することで身体のエネルギーを放出する。
・タンパク質、炭水化物、脂肪の消化を助ける。
・RNAおよびDNA合成の基本構造単位としての働き。
・セロトニンなどの神経伝達物質のための前駆体として作用。
Dean医師は15年以上もの間マグネシウムについて研究し、著書を出しています。
彼女が2014年に出した最新の著書「The Magnesium Miracle(マグネシウムの奇蹟)」では、マグネシウム不足が引き金になって起こりうる22もの疾患(すべて科学的に実証済み)について、書かれています。22の疾患は次のとおりです。
不安障害、パニック発作、喘息、血栓、腸疾患、膀胱炎、うつ、デトックス、糖尿病、疲労感、心臓病、高血圧、低血糖、不眠症、腎臓病、
肝臓病、偏頭痛、筋骨格の疾患(線維筋痛症、痙攣、慢性的な腰痛など)、神経疾患、産婦人科系疾患 (PMS[月経前症候群]、 不妊、子癇前症)、骨粗しょう症、レイノー症候群、虫歯
マグネシウム不足でまず現れる兆候には、食欲不振、頭痛、吐き気、疲労、および倦怠感などがあります。
状態がより進行していくと、次のような深刻な症状に発展することがあります。
・しびれ感 チクチク感 筋肉の収縮と痙攣 発作
・人格変化 不整脈 冠動脈攣縮
糖尿病・癌その他の疾患に対するマグネシウムの役割
慢性疾患を防ぐ方法について考える際、ほとんどの人はマグネシウムを思い浮かべることはないでしょう。
しかし実際マグネシウムは大変重要な役割を果たします。
例えば、新陳代謝を維持するにあたって果たす役割、具体的にはインスリン感受性、血糖値の調節、そして2型糖尿病の予防などに関しては、複数の重要な研究がなされてきました。
マグネシウムを十分に摂取すると、インスリンによる糖の代謝不全のリスクを低減し、中高年者における糖尿病前症 から糖尿病への進行を遅らせる効果があります。
研究者グループは、「糖尿病のリスクが高い人には、マグネシウムを十分に摂取することで進行を遅らせることができる可能性が高い。」と述べています。
さらに複数の研究では、マグネシウムを多く摂取すると、男女共に骨密度が高くなることがわかっており、またノルウェーでの研究では、飲料水中のマグネシウム濃度が、股関節骨折のリスクを低減させることがわかっています。
また、マグネシウムは癌のリスクも低減する可能性があります。
American Journal of Clinical Nutrition(アメリカ臨床栄養学誌)に発表された研究では、マグネシウムを豊富に含む食生活により結腸直腸腫瘍のリスクが低減することがわかっています。
メタアナリシスによると、マグネシウムの摂取量が100 mg上昇する毎に、結腸直腸腫瘍のリスクが13%低減され、さらに結腸直腸ガンのリスクも12%低減されることがわかりました。
研究者グループは、マグネシウムによる抗癌作用は、インスリン抵抗性を抑制する能力と密接に関連性があり、腫瘍の増殖に影響しているのではないかと指摘しました。
血中マグネシウム濃度を左右する驚くべき要因
海藻類や、ホウレンソウ、フダンソウなどの緑葉野菜はマグネシウムを豊富に含んでいます。
また、豆類、ナッツ類、カボチャ、ひまわり、ゴマなどの種子類にもマグネシウムが豊富です。
アボカドもマグネシウムを含んでいます。食事からマグネシウムをしっかり摂るためには、野菜ジュースがお勧めです。
しかし、現代の食物はマグネシウムやミネラルが少ない傾向にあり、マグネシウムをしっかり摂るためには、マグネシウムを多く含むとされる食品を食べるだけでは十分とは言えません(重要なことではあります)。
Dean博士は次のように述べています。
「マグネシウムはカルシウムよりも多く土壌より吸収されます。
100年前には、通常の食生活で500 mgのマグネシウムを摂取することが可能でした。
現代では、せいぜい200 mgと考えられています。」
グリフォセートなどの除草剤は、キレート作用があり、食物に含まれるミネラルが体内に吸収されにくくなります。
そのため、必要な量のマグネシウムを得られる食物を見つけることは非常に困難です。
また、調理や加工によりマグネシウムはさらに減少します。
一方、体内に吸収されるマグネシウムの量に影響をおよぼす食品もあります。
たとえば、アルコールを過剰摂取すると、マグネシウムを吸収するために必要なビタミンDの吸収を妨げてしまいます。
糖分を摂り過ぎると、マグネシウムは腎臓をとおして体外に放出され、「純損失」となってしまう、とフロリダ州Pritikin Longevity Centerの副院長Danine Fruge医師は述べています。
次の様な要因も、体内のマグネシウムの濃度を低下させる原因となります。
・炭酸飲料やカフェインの摂り過ぎ
・更年期
・老化(年齢層が高くなるとマグネシウムが不足することが多い。
これは年齢と共に体内への吸収率が減少することと、吸収を妨げる作用のある薬の使用が増えるためである。)
・利尿剤、抗生物質(ゲンタマイシン、トブラマイシン)、副腎皮質ホルモン(プレドニゾン、デルタソン)、制酸剤、
インスリンなどの薬の服用。
・消化器系の不調によるマグネシウム吸収の低下(クローン病、腸管壁浸漏症候群など)。
カルシウム、ビタミンK2およびビタミンDは、マグネシウムとのバランスが必要
マグネシウムが不足しても、サプリメントを飲めば大丈夫だと思うかもしれませんが、話はそんなに簡単ではありません。
マグネシウムを摂る場合は、カルシウム、ビタミンD3、ビタミンK2も摂れているか考慮に入れる必要があります。
これらの成分は相互作用しているのです。
カルシウムを過剰に摂取し、マグネシウムとのバランスが取れていない場合、心臓発作や突然死を招くこともあります。
カルシウムが過剰で、マグネシウムが不足すると、筋肉が痙攣するため、心臓には特に影響が出てしまうのです。
「これは、マグネシウムが関係する筋肉や神経の機能が抑制されて起こる現象です。
マグネシウムが不足すると筋肉が痙攣します。一方カルシウムは、筋肉の収縮を促します。
バランスが取れていれば筋肉は正常に機能することができます。緊張を緩め、動くことができるのです。」とDean医師は説明しています。
カルシウムとマグネシウムのバランスを取るには、ビタミンK2やビタミンDも考慮に入れて下さい。
これらの4種の栄養素が、まるで複雑なステップのダンスを踊るように、相互に作用しながら機能しているのです。
これらの栄養素のバランスが崩れることが、カルシウムサプリの摂り過ぎによる心臓発作リスクの増加やビタミンD中毒が発声する原因の一つとなっています。
このような危険な副作用の発生を説明づける栄養素としてカルシウムを適切な部位に保持する作用のあるビタミンK2が挙げられます。
ビタミンK2が不足すると、カルシウムは健康増進効果より、軟部組織に蓄積されてしまうといった問題を引き起こす原因となります。
同様に、ビタミンDのサプリメントを摂る場合は、食事にも気を配り、ビタミンK2やマグネシウムのサプリメントを忘れずに摂って下さい。
ビタミンDをたくさん摂ってビタミンK2やマグネシウムが不足していると、ビタミンD中毒やマグネシウム欠乏症が起こり、石灰化により心臓を傷めてしまいます。
体内のマグネシウム濃度を高めるコツ
体内のマグネシウムや植物由来の様々な栄養素の量を増加させるには、野菜ジュースがお勧めです。
私の場合、毎日500-1000 mlの野菜ジュースを飲むようにしており、これが主なマグネシウムの吸収源となっています。
肥えた土壌で栽培されたオーガニックの食品は、より多くのマグネシウムを含みますが、これは測定が難しいですね。
サプリメントを飲む場合は、気をつけて選んで下さい。
マグネシウムは他の栄養素と一緒に摂る必要があるので、市場に出回っている商品も様々な種類のものが存在します100%マグネシウムのサプリは存在しないのです。
サプリメントに含まれるその他の成分によってマグネシウムの人体可用性が異なり、得られる効果にも違いがあります。
下の表に、様々な型のマグネシウムの特徴をまとめています。
トレオン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムは、ミトコンドリアなどの細胞膜を透過するため効果が高いとされています。
さらに、血液脳関門を透過し、認知症や記憶力に素晴らしい予防、治療効果をもたらします。
サプリメントを飲む場合は、マグネシウムの摂り過ぎが心配ですが、これには便の状態を確認することが有効であることをDean医師は説明しています。
「マグネシウムが不足していないかを確認するためには、便の様子を確認して下さい。
マグネシウムが多過ぎると便が緩くなります。
便秘がちな方には嬉しいことですね。
便秘は、マグネシウム不足による症状の一つでもあります。」
サプリメントを摂る他にも、定期的にエプソム塩を入浴剤として使う、エプソム塩を足湯に使うなども、体内のマグネシウムを維持する良い方法です。
エプソム塩とは、硫酸マグネシウムの一般名で、皮膚から体内に吸収されます。
マグネシウムオイルも、局所的な塗布で吸収効果があります。
どのようなタイプのサプリメントであっても、ステアリン酸マグネシウムを含むものは避けましょう。
良く使われていますが、危険性の高い添加物です。
グリシン酸マグネシウム。
キレートマグネシウムであり、吸収率、生体可用性が高い。
マグネシウム不足の解消に適している。
酸化マグネシウム。
非キレート型のマグネシウムで、有機酸や脂肪酸と結合する。
マグネシウム含有率は60%で、便を軟化させる作用がある。
塩化マグネシウム/乳酸マグネシウム。
マグネシウム含有率は12%のみ。
酸化マグネシウム(5倍以上のマグネシウム含有率)などの他の型のマグネシウムより吸収率が高い。
硫酸マグネシウム/水酸化マグネシウム。
緩下剤として使用される(マグネシア乳)。
使い過ぎに注意が必要。
用法、用量を守ること。
炭酸マグネシウム。
制酸作用があり、マグネシウム含有率は45%。
タウリン酸マグネシウム。
マグネシウムとアミノ酸の一種であるタウリンの混合物。
心身の鎮静作用がある。
クエン酸マグネシウム。
クエン酸キレート。
他のマグネシウムと同様、緩下作用がある。吸収率が高く、安価である。
トレオン酸マグネシウム。
その効果が期待される新しい型のマグネシウムサプリメント。
ミトコンドリアなど、細胞膜の透過率が高く、もっとも吸収率が高いとされるサプリメント。
すべてのアメリカ人の3分の2以上がマグネシウムの推奨1日摂取量(RDA)を摂取していません。
もっと驚くべきことに、アメリカ人の19%が政府のマグネシウムの推奨1日摂取量の半分をも摂取していないことを示す調査のデータもあります。
(1)したがって、心臓発作や脳卒中による障害や死が、国内の主要殺人者であることは驚くべきことではありません。
国立衛生研究所(NIH)は、「マグネシウムは体内の300以上の生化学反応に必要であり、正常な筋肉と神経の機能を維持し、心臓のリズムを安定させ、健康な免疫システムをサポートし、骨を強く保つために必要。高血圧、心血管疾患、糖尿病などの障害の予防と管理にマグネシウムが果たす役割に関心が高まっている」と語った。
(2)マグネシウム摂取量が不十分であると、がん、喘息、アレルギー、関節炎、骨粗鬆症、腎臓結石、片頭痛、月経中毒、PMS、テタニーおよびけいれんなどの状態にも関連する。
(3)このリストは、多くの人々のマグネシウム欠乏症に対する懸念が高まっていることを完全に正当化するものである。
マグネシウムが多い食品には、ナッツ、シード、ホウレンソウ、ヨーグルト、小麦胚芽、全粒粉などがあります。
400mg /日の適切なマグネシウム摂取量を確保するために、アメリカ人は十分量を食べていません。
マグネシウムサプリメントは、一般に、安価な酸化マグネシウムとして、100または250mgの錠剤で入手可能である。
より良い吸収のために、医師はしばしばアミノ酸キレート化マグネシウム錠剤またはクエン酸マグネシウムを好む。
マグネシウムは処方せずにどこでもディスカウントストアや健康食品店で入手可能です。
人々は通常、1日当たり200mgの補充を開始し、1日に600mgに徐々に増加し、分割した用量で摂取し、いくつかは各食事と共に摂取する。
(4,5)腎不全の人は、医師の指示がない限り補充的なマグネシウムを摂取すべきではありません。
さもなければ、マグネシウムの毒性は非常にまれです。
マグネシウムの食事摂取による死亡はありませんでした。